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{{Otheruses|立松和平の小説|映画化作品|光の雨 (映画)|}}
『'''光の雨'''』(ひかりのあめ)は[[立松和平]]の小説。[[1998年]]に[[新潮社]]から刊行された。[[連合赤軍事件]]を題材に、その当事者をモデルとする人物が、当時を回想する形で書かれている。
 
 
==「盗作」騒動から全面改稿まで==
本作は当初、文芸誌[[すばる (雑誌)|すばる]]([[集英社]])の1993年8月号から連載が開始された。しかし、連載3回目の内容に、実際の連合赤軍事件の当事者である[[坂口弘]]の著書に酷似した部分が含まれていることが、坂口の支援者からの指摘で明るみに出る。立松はこれに対して指摘を全面的に認め、すばるでの連載を打ち切るとともに関係者に陳謝した(のみならず、テレビ・ラジオといったメディアへの出演も取りやめた)。
 
その後、立松は坂口や[[永田洋子]]ら事件の関係者に謝罪の手紙を送り(坂口への手紙はすばる誌上に発表している)、それぞれ返事を受取った。いずれも作品の執筆を求める内容であったという。
 
中断から5年後の1998年に、全面的に構想を改めた形で雑誌[[新潮]]の3月号から5月号まで掲載された後、単行本として刊行された。
 
{{ネタバレ}}
==ストーリー==
死刑制度が廃止された2026年の日本。予備校生の阿南満也は、アパートの隣室の老人が毎夜奇声を発することに抗議したことがきっかけで、逆にその玉井と名乗る老人と知り合う。玉井は元死刑囚で、死刑制度の廃止によって釈放されたのだった。玉井はみずからが死刑囚となった理由であり、また毎夜の奇声の原因でもある過去の事件について、阿南に語り始めた。
 
玉井が約60年前、新左翼組織「革命共闘」の幹部だったこと。「革命共闘」は反政府運動の武装闘争をおこなうために銃砲店を襲撃して銃を手に入れたこと。組織からの離反者を殺害したこと。やがて別の新左翼組織「赤色パルチザン」と連合して新組織「連合パルチザン」を結成し、山中のベースキャンプで軍事訓練に励んだこと……
 
阿南は何度も玉井の部屋に通い、途中からは恋人の高取美奈も誘って玉井の話を聞く。話はやがて、「赤色パルチザン」出身の倉重という男の主導でおこなわれた「総括」と称する同志へのリンチへと進んでいった。
 
==登場人物==
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;倉重鉄太郎
:「赤色パルチザン」のリーダーを経て「連合パルチザン」の幹部になる。「革命戦士になるためには批判と自己批判の相互作用によって今までの自分を「総括」することが必要」と主張する。弁舌が巧みで、組織のメンバーは徐々にかれの意向に逆らえなくなり、やがてはかれの恣意で「総括」という名目のリンチが実行された。モデルは[[森恒夫]]。
 
;上杉和枝
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;北川準
:「革命共闘」のメンバー。山岳ベースで、他のメンバーへの「総括」で殴打した際に発した言葉が倉重に咎められ、みずからが「総括」の対象とされる。殴打を受けた末、山岳ベースで最初に死亡する。
 
;戸張真
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;戸張善二
:「革命共闘」のメンバーで、戸張真の弟。倉重からは兄に対して「総括」をおこなうことを強要される。
 
;高田ゆみ
:「赤色パルチザン」のメンバー。上杉から態度がブルジョア的だと非難され、「総括」の対象にされる。先に死亡したメンバーの埋葬を命じられるが、そのときの態度をさらに問題にされ、みずから「総括」すると言って自分の顔を殴打した。しかし、それでも「総括」できていないとしてロープで縛られたり殴打された末に死亡。
 
;大沢守男
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==特徴など==
*回想の部分は基本的には玉井の言葉で書かれているが、部分的にはそれとは異なる「語り手」の視線が用いられている。上杉和枝の視点、殺された「同志」の視点、襲撃を受けた銃砲店主の供述、さらには奪われた銃そのものが「語る」場面もある。
*すばる連載版では「回想」という設定は導入されていなかった。また現行版で玉井に相当する人物は「星利一」という名前になっていた。