「公立学校選択制」の版間の差分

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'''公立学校選択制'''(こうりつがっこうせんたくせい)とは、[[日本]]においては一般的に[[進学]]予定の[[公立学校|公立]]の[[小学校]]・[[中学校]]を複数校の中から選ぶことができるという制度である。
 
== 制度の概要 ==
以前は公立小中学校は厳密な[[学区制]]が取られており、[[特殊学級]]への通学や[[いじめ]]による[[転学|転校]]などの例外を除けば[[入学]]先の学校は固定していた。だが東京都[[品川区]]での大々的な導入を皮切りとして現在では東京の[[特別区|区部]]を中心に年々この制度を採用する地域は拡大しており、内閣府が2006年に行った調査では小学校の14.9%、中学校の15.6%が導入しているとされる。ちなみに品川区では、小学校は17%、中学校は23%の児童生徒が従来の学校以外を選択していて、選択率は年々増加している(数字は2003年度)
 
ちなみに品川区では小学校は17%、中学校は23%の児童生徒が従来の学校以外を選択していて選択率は年々増加している(数字は2003年度)。
一度入学時に学校を選択すれば、卒業まで学校を変更できないという規定が多い。また、希望者多数の場合は抽選となる。
 
一度入学時に学校を選択すれば卒業まで学校を変更できないという規定が多い。また、希望者多数の場合は抽選となる。
 
== 議論 ==
2005年の内閣府の調査によると、保護者の64.2%が学校選択制の導入に賛成している一方、反対している保護者は10.1%であった。学校選択制の導入に賛成する理由として最も多く挙げられるのは学校間の競争によって教育内容が向上するのではないかとの期待である。一方、反対する理由としては学校間格差の拡大が主に挙げられる<ref>[http://www.toonippo.co.jp/news_hyakka/hyakka2007/0526_11.html 東奥日報記事]</ref>。
 
== 問題点と反論 ==
;曖昧な根拠による学校選択
:元来、公立学校は全国どこの学校でも同様の教育を提供するというナショナル・ミニマムの考え方のもとに整備されてきており、また人事異動によって教職員を常に入れ替えている為、特定の宗派宗教や教育思想をもとに開設され教職員の異動も無い私立学校に較べると教育内容への特色を出しにくい。
:その結果、保護者による学校選択は進学実績以外には立地や噂など確たる根拠の無いものに左右されやすくなる(深谷:前掲論文)。
;学校間格差の固定化
:進学実績が良い学校や施設が豪華な学校には希望が集中するが特に目立つ特色が無い学校への入学者は減る傾向にある。例えば品川区のある小学校は区内で歴史が古く[[私立学校|私立中学校]]への進学者も多いこともあいまって毎年40~70人程度の児童が旧他学区より流入している。また同区のある小学校は大企業の[[社宅]]が近くにあるため教育熱心な家庭が多いこともあいまって、毎年差し引き16人程度流入している。一方、毎年差し引き20人程度旧他学区へ流出している小学校もある。中学校では[[冷暖房]]完備で[[温水プール]]がある中学校に毎年50~80人程度旧他学区から流入している。
:1学年1学級のような小規模校も敬遠されることが多く、小規模校はますます小規模になっていって統廃合の対象となることもある。品川区のある小規模中学校では学校選択制導入以後、入学者が減っており、2006年度には入学者がついに0人になった。
:日本に先行して学校選択制を取り入れたイギリスにおいては、人気校の周辺の地価が高騰して低所得者が転出し、低所得者の子弟が人気校に通うことが難しくなっているとされる(高所得者は子弟が人気校に通学する為の交通費を捻出出来るが、低所得者にはこれが不可能な為)。
 :しかし、この点については従来から学校間格差があり、人気校のある地区には比較的豊かな層しか住めない状況にある、学校選択を私立も含めて認めていない韓国ではいい学校がある地区の地価が高騰し格差が拡大したという批判もある。むしろ、学校選択制を認めたほうが地価、家賃の安い地区に住んで鉄道やバスで通えるため低所得者にもチャンスが出てくると反論されている。
;教職員へのストレスの増大
:品川区では学校選択制を導入した結果、教職員が感じるストレスが目に見えて増大しているとされ、品川区の小中学校への異動は「'''しな流し'''」と呼ばれて敬遠されている<ref>[[山本紀子]] 「[http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/edu/news/20070827ddm004070015000c.html 記者ノート:学校選択制の弊害]」 [[毎日新聞]]、2007年8月27日。</ref>。
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:学校選択制を導入した結果、地域社会と学校との繋がりが希薄化したことを問題視する意見もある。
;個性的な教育実践を可能とする制度設計の不備
:アメリカやニュージーランド、オーストラリアなどの公立学校では校長は人事権と予算権を与えられており、それらの職権を用いて学校の特色を伸ばすことが可能となっている。
:一方、日本の公立学校においては校長は人事権も予算権も持っていない(ごく僅かな例外を除く)。また校長も3年程度で次々に異動していくことが多くじっくり腰を据えた取り組みがしづらいとの指摘がある(深谷:前掲論文)。
 
== 脚注 ==
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==関連項目==
*[[中高一貫校#公立中高一貫校への批判]]
*[[公立学校#公立小学校・中学校の問題点]]
 
==参考文献==