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{{legend|lightgrey|冠詞なし}}
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'''冠詞'''(かんし)とは、主に[[インド・ヨーロッパ語族]]や[[セム語派]]において、[[名詞]]の前または後に置かれ、[[定性|定不定]]を示す[[限定詞]]である。
 
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一部の言語では、[[前置詞]]と隣接するとき、前置詞と結合して[[前置詞と冠詞の縮約|縮約形]]となることがある。フランス語では縮約形を持つ組み合わせの時には、必ず縮約形を使わなければならない(例: de + le → du)が、[[ドイツ語]]では意味の違いで使い分ける(例: von + dem → vom だが定性を強調したい場合は von dem のままとする)など、言語によって様々である。
 
なお、[[ロシア語]]や[[ペルシア語]]のように、インド・ヨーロッパ語族でも冠詞がない言語もある。
 
==冠詞の種類==
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定(文脈上、同定できるもの)を表す名詞の前に置く。
*既出のもの。それ。
*一つしかないと一般に認知されているもの。太陽([[英語]] '''the''' sun、[[ドイツ語]] '''die''' Sonne、[[フランス語]] '''le''' soleil)など。
*その名詞が表すもの総体。~というもの。
*固有名詞の前で使われることがある。英語では普通名詞を固有名詞として用いる場合(例:合衆国 '''the''' United States)、複数形の固有名詞の前(例:[[バハマ]] '''The''' Bahamas)。フランス語では国や川の名前の前、また特定の人名、都市名(例:[[ル・コルビュジエ]] '''Le''' Corbusier)。
*形容詞を名詞化する。例えば、英語で '''the''' rich は「金持ち」を表す。
 
冠詞は単語の前に独立して付けられる言語が多いが、言語によっては、定冠詞は名詞の後ろに付いて、活用語尾のように見える。このような定冠詞を'''後置定冠詞'''と呼ぶ。[[北ゲルマン語群]]の他、[[バルカン言語連合]]の[[ルーマニア語]]、[[ブルガリア語]]、[[マケドニア語]]、[[アルバニア語]]に見られる。
 
===不定冠詞、部分冠詞===
'''不定冠詞'''は、不定(文脈上、導入されたもの)を表す名詞の前に置く。単数形しかない言語と、単複両形がある言語があり、単数形には一般に、数の [[1]] を表す単語が用いられる(英語は例外)。単数形しかない言語と、単複両形がある言語がある。前者の場合(英語の a/an、ドイツ語の ein とその変化形、[[オランダ語]]の een 等)は、不定の単数の[[可算名詞]]の前にのみ置かれて、名詞が複数の場合や不可算名詞の場合には、未知不定のものを表す名詞の前でも置かれない。後者の場合、例えばフランス語では、単数の可算名詞には単数形 un/une、複数の可算名詞には複数形 des が置かれる。
 
'''部分冠詞'''は、フランス語、[[イタリア語]]などに独特の冠詞で、不可算名詞のための不定冠詞と考えられる。起源的には、[[属格|部分の属格]]から発生したもので、そのため属格の[[前置詞]]と定冠詞が合わさった形をしている。これは不定冠詞の複数形でも同様である。フランス語の場合は、属格の前置詞 de を用いて、不定冠詞の複数形(男女同形)は de +les→des les → des、部分冠詞は男性形de+le→dude + le → du、女性形 de la となる。イタリア語の場合は、属格の前置詞 di を用い、不定冠詞の複数形は部分冠詞として扱われる。
 
これに対して、[[スペイン語]]、[[ポルトガル語]]には、不定冠詞の単数形から[[アナロジー]]により派生した不定冠詞の複数形が存在する。
 
===冠詞の役割===
冠詞の役割は、名詞の定不定を規定することである。文中で定性のものを取り上げるときは、まず定冠詞を持ち出して定性を規定してから、定性を規定されたもの(名詞)を持ち出す。文中で不定のものを取り上げるときは、まず不定冠詞(または無冠詞)を持ち出してから名詞を持ち出す。従って、「冠詞に名詞が付く」のであって、名詞に冠詞を付けるのではない<ref>{{Citation
| last=マーク・ピーターセン
| title=日本人の英語
| publisher=岩波新書
| isbn=4-00-430018-5
}}</ref>。
 
==各言語の冠詞==
===英語===
不定冠詞は不定の単数の可算名詞に付く。不定の複数の可算名詞や不可算名詞には冠詞が付かない。定冠詞は数や可算性とは無関係に付く。
 
;定冠詞
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;不定冠詞
*a (子音の前)、an (母音の前)
 
===ドイツ語===
{{main|ドイツ語の文法#冠詞}}
不定冠詞は不定の単数の可算名詞に付く。不定の複数の可算名詞や不可算名詞には冠詞が付かない
 
;定冠詞
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===オランダ語===
不定冠詞は不定の単数の可算名詞に付く。不定の複数の可算名詞や不可算名詞には冠詞が付かない
 
;定冠詞
*het (中性単数)
*de (通性単数・複数、中性複数)
*het (中性単数)
 
;不定冠詞
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===スペイン語===
英語と異なり、[[スペイン語]]では主語となる名詞には原則的に定冠詞がつく。不定冠詞はその意味を強調するときにのみ使われ、無冠詞は主語では許されない。また、不定冠詞の複数形は「いくつかの」(英語の some)と同じように使われることが多い。
 
;定冠詞
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なお、女性名詞でも、a あるいは ha で始まる単語で、その音節にアクセントが来る場合には、el や un が使われる。
 
例: '''el''' agua(水)、'''un''' hada(妖精) cf. '''La''' Habana([[ハバナ: ]]:[[キューバ]]の首都)、'''la''' ansiedad(不安)
 
また、中性形は形容詞を名詞化する際に使われる。
 
例: '''Lo''' maravilloso de esta ciudad es la gastronomía.(この街のすばらしい点は美食です
 
===ポルトガル語===
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===イタリア語===
{{main|イタリア語の文法#冠詞}}
[[イタリア語]]は定冠詞を多用する。たとえば my car は '''il''' mio automobile ('''the''' my car) という。これは、英語では my のような代名詞の所有格と car のような単数の可算名詞を用いて my car と言った場合は、「私の特定の車」という意味になるのに対して、イタリア語の mio のような所有形容詞がそのような強い限定作用を持たないためである、と考えることができる
 
不定冠詞は不定の単数の可算名詞に付く。部分冠詞は不定の不可算名詞または複数の可算名詞に付く。
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*例
*:كتاب (kitābun) ある本
*:الكتاب (al-kitābu) その本
*:الكتاب الجميل (al-kitābu l-jamīlu) その美しい本
*:السفير (as-safīru)その大使(س(s)は太陽文字>
*:كتاب السفير (kitābu s-safīri)その大使の本 <イダーファ構文>
 
 
==参考文献==
<references/>
 
[[Category:品詞|かんし]]