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修正依頼を受け、項目分類を改めた。気象庁の言う「一般向け」速報以外に“一般”という語を使うことを避けた。「ノート」参照。なお「世界初」は脚注リンク切れによる書き直し。
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{{現在進行}}
'''緊急地震速報'''(きんきゅうじしんそくほう、英語名称:Earthquake Early Warning、略称:EEW)とは[[日本]]の[[気象庁]]が中心となって提供している地震情報である。[[地震警報システム]]の一つで主要動の到達前に速報を行うことを企図した早期地震警戒システムに分類されるものである。[[2007年]][[10月1日]]から早期地震警戒同種システムとしては世界めて一般向け供用が行と言われてい<ref>2007年9月20日気象庁開催の「[http://www.dai2ntvseisvol.kishou.go.jp/commoneq/miscEEW/kochi2/j-yosokukentokai8/index.html リアルタイム特報「世界初!画期的システム“緊急地震速報の本運用開動へ」] に係る検討会[[第8回)]」において、日本テレビ放送網|が同月4に「世界初!画期的シスレビム」とする特番を放送した旨、報告されている。([http://www.seisvol.kishou.go.jp/eq/EEW/kentokai8/20070920_shiryo_1_1.pdf 資料ファイル]])p. 3)</ref>
 
[[2006年]][[8月1日]]から対象を一部利用者に限って速報が正式に発表されることとなり、[[2007年]][[10月1日]]、「一般向け」速報(強い揺れが想定される場合に発表)が導入されるにいたって本格的な運用が始まった。<ref name="気象庁-基準"/>前者は「高度利用者向け」速報として存続している。<ref name="気象庁-基準"/>
現在、緊急地震速報には大きく分けて'''高度利用者向け'''と'''一般向け'''の2種類がある。両者は対象者や速報の発表基準などが異なる。一般向け緊急地震速報は、2008年4月28日に沖縄県宮古島近海で発生した地震で初めて発表された。
 
この「一般向け」と「高度利用者向け」は、発表基準や受信・入手できる端末などが異なる。
2008年6月15日現在、一般向け緊急地震速報が発表されたのは5回である。
 
「一般向け」緊急地震速報は、2008年6月15日までに計5回発表されている。
 
[[Image:Earthquake Early Warning (Japan).jpg|thumb|400px|緊急地震速報システム]]
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:[http://www.real-time.jp/jisinjirei.htm 実際の地震時におけるPC端末での受信画面(「高度利用者向け」の事例)]。
 
緊急地震速報主要動到達前のわずかな時間を適切に活用することきれば地震災害の軽減に役立つものと期待されている。しかし、速報が主要動の到達に間に合わない場合がある<ref>[http://hs.a-2.co.jp/eqUser/view/open/eqSimulation.html ためしてみよう!! 緊急地震速報]</ref>ほか、誤報のリスクや伝達速度などの技術的な問題もある。
 
[[2006年]][[8月1日]]より試験的・限定的な発表が行われてきたが、2007年10月1日の「一般向け」速報の提供開始が決定されたことを受け、提供開始直前まで広報手段について調整が行われた。2008年現在、速報に関する諸問題([[#問題点|問題点]]参照)を考慮しながら、テレビを皮切りに、「一般向け」速報が順次拡大しつつある。また、個人においても法人などにおいても、導入の可否はそれぞれの判断に任せられており、義務化の予定はない。
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* 2005年[[6月8日]] 試験運用のデータ提供元に防災科学技術研究所の地震計が加わり、対象地域は日本のほぼ全域に拡大。
* [[2006年]][[8月1日]] 希望する企業などに対して、先行的な提供を開始。
* 2007年10月1日 この日の9:00([[日本標準時|JST]]) から一般向けの広範囲な提供」速報開始導入。テレビ放送や一部の公共施設などでも速報を開始しが導入された。
* 2007年[[12月1日]] この日施行の[[気象業務法]]改正で、緊急地震速報が予報および[[気象警報|警報]]として位置づけられた。下記「法的な位置付け」を参照。
 
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地震動(初期微動や主要動など)の情報は、気象庁の約200と防災科学技術研究所の約800の合わせて全国約1,000箇所に設置されている地震計を利用している。それぞれの地震計から、地震波形データをリアルタイムで気象庁に集計し、これを解析・処理して同庁から発表される緊急地震速報は、[[気象業務支援センター]]を経由して利用者へ配信される。また、これら直接の利用者から末端のユーザーへの二次配信が行われることもある。
 
配信された情報は専用の端末機器を通して処理を行い分かりやすい情報となって[[映像]]や[[音声]]として表示されるが、様々な形態がある。専用の端末機器では、あらかじめ設置する場所の位置情報や地盤の状態などを設定するなどし、速報時には警報音を鳴らしたり、音声により地震の発生や震度などを伝え、[[文字]]や[[画像]]、[[ランプ (光源)|ランプ]]等により地震の発生や震度、揺れるまでの時間などを伝える。大型の[[施設]]などでは、警報音と音声により施設内に一斉に放送などを行うことがある。
 
== 速報時の対応 ==
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[[列車]]の運転制御、[[高度道路交通システム]]への速報の組み入れ、運転中の車両への通知や誘導、[[信号機]]制御や[[交通規制]]、[[空港]]での離発着規制、[[津波]]に備えた[[船舶]]への通知、津波に備えた[[水門]]の閉鎖の迅速化、施設内や人が多い場所での[[避難]]誘導・指示、家庭や職場などでの安全確保、[[電話]]などの[[通信回線]]の制御、[[エレベータ]]や[[遊具]]などの制御、[[工場]]での稼働中システムの制御、[[医療]]や[[工事]]現場など危険性の高い場所での安全確保、[[電力系統]]・上下[[水道]]・[[都市ガス]]などの制御など、多岐にわたる。
 
== 運用状況速報の種類 ==
提供される情報の内容として、利用者側で各種設定が可能な情報として伝送される「高度利用者向け」と、限定されたシンプルな情報として伝達される「一般向け」の2つに区別されている。
利活用システムの内容、利用方法、注意点等については、上記の「リーディングプロジェクト」や各業界団体などにおいて検討が行なわれてきた。
 
=== 高度利用者向け」緊急地震速報 ===
[[2004年]][[2月25日]]から気象庁の試験運用が開始された。2004年10月の[[新潟県中越地震]]の際には[[茨城県]][[守谷市]]で地震波の到達より早く緊急地震速報が発表される様子がビデオ映像で記録されている<ref>[http://www.meisei.co.jp/products/nc_earthquake.html QCASTシリーズ受信装置デモ画面] 明星電気</ref>。また2007年7月の[[新潟県中越沖地震]]では[[東京都]]一般家庭において緊急地震速報の様子がビデオ映像に収められた<ref>{{YouTube|LXuoMwesmfo|新潟県中越沖地震で緊急地震速報受信}}, yas55, 2007年07月16日</ref>。
 
緊急地震速報の特性をよく理解し情報を混乱なく利用しうるとされた特定の分野に対しては、2006年8月1日から先行的に緊急地震速報の配信が始められた。[[都市ガス|ガス]]・[[電力]]・[[鉄道]]といった[[ライフライン]](例えば、ガスなら主要動が来る前にガス供給をストップし[[火災]]を防ぐ。また鉄道では、[[防護無線]]を通じて緊急停止させる)や病院(手術中に地震に見舞われる際に患者を守る)などでの活用が想定されている。
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また、[[市町村防災行政無線]]を使った広域への情報提供やそれを利用した訓練が一部の自治体で行われており、2007年10月からは他の自治体にも拡大する予定となっている。
 
以上のように、随意、速報の提供に応じ、システムへの理解が得られていると考えられる「高度利用者」に対しては、一般向けとは多少異なる内容の速報を行っている。現在のところ高度利用者向け運用では、気象庁の多機能型地震計の1つ以上の観測点においてP波またはS波の振幅が'''100[[ガル]]以上'''となるか、もしくは解析により'''[[マグニチュード]]3.5以上または最大[[震度]]3以上'''と推定される場合に、地震の発生時刻、震源の推定値の速報を行っている。この時点で、推定される最大震度が震度4以下のときは最大震度のみを、推定される最大震度が震度5弱以上のときは地域名、震度5弱以上と推定される地域の推定震度、各地域への主要動到達時刻の推定値を、それぞれ加えて発表する。ただし、マグニチュード6.0未満かつ最大震度5弱未満が予想される場合には、参考情報として発表する。
 
高度利用者向け運用では、まず地震が発生したことをいち早く知らせるための第1報を優先的に発表する。その後2つ以上の観測点で地震波が観測されれば、さらに解析を行い第2報・第3報…と情報を更新していく。更新を重ね、予測の制度が安定したと判断されれば、最終報を発表し、これ以降はその地震の速報の発表を終了する。あらかじめ規定されている時間内に2つ以上の観測点で地震波が観測されなかった場合は、[[ノイズ]](故障や誤報)と判断してキャンセル報を発表する。第1報では非常に大きな誤差が含まれ、[[雷]]などによる誤報の可能性も高い。第2報・第3報…が発表され、時間が経過するに従い、精度が上がっていく。
 
「高度利用者向け」と「一般向け」の大きな違いは、次の2点が指摘できる。「同名異物の緊急地震速報の並存」、または「似て非なる緊急地震速報の並存」を正確かつ十分に理解して利活用し、期待されている減災効果が十全に発揮されることが望まれる。
1. 「高度利用者向け」は、実際に発生した地震を利用して、ユーザーの希望に応じて、例えば予測震度3以上(震度2では、地震の揺れを感知できない場合がある)で発報させることによって、実戦的な地震防災のリハーサルまたは訓練の機会を提供することが可能である。
此れに対して、「一般向け」は、地震被害が予想される場合のみに発報されるため、速報に接する機会は極めて稀であり、また常に実際的であるため、上記「高度利用者向け」では可能なリハーサルまたは訓練の機会は得られない。
特に、緊急地震速報が世界初の画期的なサービスであり、過去何人(なんびと)も緊急地震速報の利活用を経験をしたことがないものであるが故に、尚更に、高度利用者向け緊急地震速報によって、大地震が来る遥か以前から、繰り返し事前リハーサルまたは訓練の機会が与えられ、それらを実践してゆくことが肝要である。
2. 緊急地震速報の技術的限界から誤差は避けられないとは言いながらも、「予測震度3」と教えてくれた場合には、「(1)実際の震度は決して震度7ではない、(2)大きな揺れも来ない、(3)大きな被害にはならない」ことを確実に教えてくれる。此れこそが、高度利用者向け緊急地震速報の「安心」効果の一つであり、一般向け緊急地震速報にはない効果である。
 
=== 一般向け運用」緊急地震速報 ===
テレビ、ラジオ、集客施設での館内放送などによる一般公衆への提供は安易に実施すると混乱を招く恐れがあるため、情報利活用のあり方、情報の特性の周知などが十分に重ねられた。
 
周知のために作成された一部のポスターには「[[ウルトラシリーズ|ウルトラ兄弟]](ウルトラマン・ウルトラセブン・ウルトラマンジャック・ウルトラマンA・ウルトラマンタロウ)」、子供向けリーフレットには「[[クレヨンしんちゃん (アニメ)|クレヨンしんちゃん]](野原一家・かすかべ防衛隊)」が起用されるなど、認知度が高い[[キャラクター]]を利用した広報活動もあった。
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こうした広報活動が行われたうえで、2007年10月1日9時から本格的に運用が始められた。
 
現在のところ一般向け運用」速報では、地震波が2つ以上の地震観測点で観測され、'''最大震度5弱以上'''と推定された場合に、地震の発生時刻、震源の推定値、震央の地名、震度4以上と推定される地域名を速報を行っている。
 
== 利用形態 ==
=== テレビ・ラジオ ====
===== NHK =====
[[日本放送協会|NHK]]では2007年10月1日からテレビ・ラジオのすべてのチャンネルで緊急地震速報を伝えることになっている。ただし、'''国内向け放送のみ'''であり、海外向け国際放送の[[NHKワールド]]ではテレビ放送においての緊急地震速報はテロップ表示を含め、一切放送されない。ただし国際放送でも、日本国内向けニュース番組の同時放送時に緊急地震速報が発生した場合はそのまま内容を伝える場合がある(ニュース番組以外でもスポーツ中継放送時に実況担当のアナウンサーからそのまま緊急地震速報の内容を伝える場合もある)。[[NHKワールド・ラジオ日本]]では、国際放送独自放送時間帯では放送されないが、ラジオ第1放送、FM放送、総合テレビ(「[[NHKのど自慢]]」放送時のみ)との国内同時放送の場合はネット送出回線を直受けしている関係上、そのまま放送される。
 
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NHKではテレビ・ラジオの放送のほかにも、[[NHKホール]]、スタジオパーク、みんなの広場ふれあいホールといったNHK放送センターの施設内にも館内放送で緊急地震速報が流れる。現在は前述の3箇所のみだが、今後、他のNHK放送局の施設(全国の放送局・関連施設)にも順次整備される予定である。
 
===== 民間放送 =====
[[民間放送|民放]]は緊急地震速報の放送に慎重であったが、テレビでは2007年10月以降、ラジオでは[[静岡放送]](SBSラジオ)2007年11月、[[エフエムもりぐち]](FM HANAKO)、2008年2月から、在京の民放ラジオ局は[[2008年]]4月、その他のラジオ局も2008年4月以降順次、速報を放送する予定である<ref>
[http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20070829i212.html 民放も緊急地震速報、全国のTV・ラジオで順次放送へ]([[読売新聞]] 2007年[[8月29日]])</ref><ref>
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また、関西の民放各社は2008年7月1日を皮切り<ref>[[朝日放送|ABC]][[ABCラジオ|ラジオ]]、[[毎日放送|MBS]][[MBSラジオ|ラジオ]]、[[エフエム大阪|FM大阪]]、[[FM802]]、[[エフエム京都|α-station]]、[[和歌山放送]]が2008年7月1日開始予定。</ref><ref>[http://www.j-cast.com/tv/2008/03/04017407.html 関西ラジオ6社、今夏から緊急地震速報](TVトピックス:[[J-CAST]] TVウオッチ)</ref>に全12社が2008年度内の導入を予定している<ref>[http://wbs-info.sblo.jp/article/14100465.html 和歌山放送からのお知らせ:緊急地震速報 7月スタート]</ref>他、東海3県の民放7社も同年9月1日に導入を予定<ref>7社とは[[中部日本放送|CBC]][[CBCラジオ|ラジオ]]、[[東海ラジオ放送|東海ラジオ]]、[[ZIP-FM]]、[[エフエム愛知|FM AICHI]]、[[愛知国際放送|RADIO-i]]、[[三重エフエム放送|radio CUBE FM三重]]と、[[ぎふチャン (ラジオ局)|ぎふチャン]])。</ref><ref>[http://hicbc.com/bousai/earthquake/r_sokuho/index.htm CBCラジオ 緊急地震速報 2008年9月1日スタート]</ref>している。
 
[[日テレNEWS24]]では「全国どこでも強い揺れ」が予測された場合に通常番組を強制中断し速報画面に切り替え、発生時刻・予測最大震度・地震波の広がり・強い揺れの予測される地域が表示される。これは現時点で民放テレビ(CSチャンネルを含めても)では唯一であり、高度利用者向けの情報を使用しているものと思われる([[BS日テレ]]でサイマル放送を行っている際に発生した場合でも同様の対応が取られる)。
 
[[WOWOW]]では、若干基準が異なり、震度6弱以上の揺れが予想される地域が出た場合に速報を発表する。なお今後、利用者の反応を見て基準を変更する方針である。
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また、[[地上デジタルテレビジョン放送]]、[[ワンセグ]]および[[BSデジタル放送]]では[[Gガイド]]を利用した配信が検討されている。
 
===== CATV =====
[[ケーブルテレビ|CATV]]分野においては、セットトップボックス(STB)のオプションとして緊急地震速報システム(親機・子機)が比較的安価に提供されている。
 
===== 運用開始後 =====
運用開始当日の2007年10月1日02:21頃、神奈川県西部を震源とするM4.9で最大震度5強の地震が発生した。この時点では、まだ緊急地震速報のNHKでの運用がされていなかった(同日午前9時から運営する予定だった)ため、字幕スーパーのみを予定していた局と地図表示を予定していた局のいずれも字幕スーパーのみで従来通りの地震速報を行った。
 
なおNHK、在京キー局([[日本テレビ放送網|日本テレビ]]、[[フジテレビジョン|フジテレビ]]、[[東京放送|TBS]]、[[テレビ朝日]])の4局とUHF局では地図と字幕スーパーを表示しているが、在京キー局の[[テレビ東京]]では字幕スーパーのみ表示、地方局でも字幕スーパーのみ表示する場合もある。テレビで地図表示を行った場合、番組の内容として重要な部分が地図表示によって隠れてしまう事態が予想されている。「表示字幕スーパーだけは許せるが、地図表示されると困る」といった意見も考えられ、特にシリーズ物のドラマ番組・バラエティ番組・アニメ番組では苦情が殺到する可能性もある。そのため、折衷案として従来の字幕スーパー方式を使う局が増える可能性がある。
 
一般向けに本格運用開始して以来」速報が初めて適用(実際に速報が流発表さた)となったのは2008年4月28日午前2時32分の[[沖縄県]][[宮古島]]近海を震源とする地震だった。NHKでは[[NHKラジオ第2放送|ラジオ第2放送]](この時間は放送休止中で停波していた)および国際放送NHKワールド(テレビ・ラジオ)を除く全メディアで緊急地震速報が流れた。だがこの地震速報では、震源地が海上であったため、海上に震度計がなく、実際に揺れが計測されたのは陸地に到達してからであった。そのため計算が間に合わず、発表されたのは島が揺れだしてから5秒後だった。地震発生時、深夜だったために多くの人が緊急地震速報を目にしていなかった。今回の地震速報でも、多くの弱点を突くものだった。
 
また、2008年5月8日午前1時45分の[[茨城県]]沖を震源とする地震の緊急地震速報は、揺れが始まってから数秒後に発表されたものだった。総合テレビでは、ニュース放送中に緊急地震速報が発表されたため、アナウンサーが緊急地震速報発令に関して報道中に、突然画面が切り替わり、同時に緊急地震速報のテロップも消え、『[[JAPANナビゲーション]]』の放送を開始するなどの手違いも発生している。
 
==== 施設・広域放送等 ====
文科省リーディングプロジェクトの「災害医療」の分野として、東京都立川市の(独)国立病院機構 災害医療センターにて平成15年から利活用の実験・検証が行なわれてきた。平成20年4月現在は、病院内の全館放送、エレベーター最寄り階停止、自動扉開放、放射線装置停止、情報表示機、現地地震計との連携(近い震源の地震に対応)を実施している。
また、「集客施設」の分野では、伊勢丹百貨店が全国10店舗で館内放送との連動を実施している。特に百貨店は不特定多数者が多い施設であるため、地震時の混乱を最小限にするためにも職員のみならず来客者自身も冷静な行動を心がける必要性がある。
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消防庁の[[全国瞬時警報システム]](J-ALERT)を利用した自治体の防災行政無線による緊急地震速報も、2007年10月1日から開始した。システムの整備が完了した一部の市町村から提供が始められている。
 
==== 携帯電話 ====
携帯電話では[[NTTドコモ]]・[[au (携帯電話)|au]]および[[ソフトバンクモバイル|ソフトバンク]]の端末で緊急地震速報を受信できるようにするため、配信システム・基盤をそれぞれ開発し、2008年発売の新機種からの受信機能搭載をめざしている
<ref>[http://www.nttdocomo.co.jp/info/news_release/page/070530_02.html 緊急地震速報に対応した一斉同報配信基盤を開発](NTTドコモ報道発表 2007年[[5月30日]])</ref>
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<ref>[http://www.nttdocomo.co.jp/service/anshin/areamail/ 緊急速報「エリアメール」]</ref>。auに関しては2008年1月9日から順次発売の2008年春モデルの大半の機種<ref>[[W61CA]]、[[W61H]]、[[W61K]]、[[W61SA]]、[[W61SH]]、[[W62SA]]の6機種</ref>から搭載し、2008年3月25日から無償で提供する緊急地震速報サービス([[Cメール]]を使用)をスタートした<ref>[http://www.kddi.com/corporate/news_release/2008/0324/index.html 緊急地震速報の提供開始について]</ref>。
 
==== パソコン ====
既存のインターネット回線とパソコン端末を用いた有償サービス「[[ウェザーニューズ#The Last 10-Second|The Last 10-Second]]」の提供を[[ウェザーニューズ]]が10月15日より開始した<ref>[http://weathernews.com/jp/c/press/2007/070927.html 個人向け緊急地震速報サービス『The Last 10-Second』10月15日から開始](プレスリリース 2007年9月27日)</ref><ref>[http://weathernews.jp/quake/html/urgentquake.html 個人向け緊急地震速報サービス『The Last 10-Second』]</ref><ref>[http://weathernews.co.jp/jp/c/lst10s/ 事業者向け緊急地震速報サービス『The Last 10-Second』]</ref>。[[Microsoft Windows 2000|Windows 2000]]以降を搭載したPC及び[[常時接続]]可能なインターネット回線が必要である。2008年4月現在、個人が緊急地震速報に対応した専用端末を導入するためには多額の導入コストが必要であるが、既存の設備を活用することで安価にサービス提供できる点を特徴として挙げている。また、The Last 10-Secondは高度利用者向けの情報を使用している{{要出典}}ので、設定によってはすべての地震速報を表示することも可能である(一般向け緊急地震速報としては唯一)
 
==== マンション用インターホン ====
マンションの共用部にインターネット回線と緊急地震速報の受信設備を設置し、[[インターホン]]設備に接続することにより、[[インターホン]]の機器・配線を活用して棟内に一斉配信するシステムが既に発売されている。
受信した緊急地震速報は各住戸に設置されているインターホン親機からカラーモニターでの表示や警報音声で居住者に通知される。[[インターホン]]設備は緊急地震速報に対応した専用の機種が必要となるが、来客対応用に常に待機状態を維持している[[インターホン]]親機から警報できることがメリットであり、新築マンションを中心に採用が急増している。
 
==== 過去に発令された「一般向け」速報発表事例 ====
 
一般向け緊急地震速報の発令状況を記す。
* 注:2007年10月1日 02:21、[[神奈川県]][[箱根町]]でM4.9、震度5強の地震があった。奇しくも一般向け緊急地震速報提供開始の6時間半ほど前に発生したため、速報は流れなかった。また、先行利用者に対しては速報(予測震度4)が流れたが、地震波の到達から数十秒が経過した後だった。
{| class="wikitable"
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!width="70%"|備考
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||2008年4月28日 02:32||沖縄県宮古島近海||5.2||震度4(震度5弱)||TV・ラジオをはじめとして、初めて速報を発表<ref>[http://www.jma.go.jp/jma/press/0804/28a/200804280500.html 本日、緊急地震速報(警報)を初めて発表しました](気象庁 2008年4月28日)</ref>。厳密には[[震度#計測震度、加速度|計測震度]]は4.4で、予測されていた震度5弱に近いものだった。海底が震源だったため、震度計のない海底では地震を感知できず、速報発表は地震波を検知してから約10秒後、[[宮古島市]]が揺れだしてから5秒後だった。気象庁はこの遅れを「誤差の範囲内」としている。ただし「高度利用者向け緊急地震速報では、例えば宮古島市役所において大きな揺れの約2~3秒前に報知する事が可能であった。
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||2008年5月8日 01:45||茨城県沖||6.7||震度5弱(震度5弱)||地震波を感知した9.3秒後に、推定最大震度3<!--ウェザーニューズ社「The Last 10-Second」にて確認-->とする高度利用者向け緊急地震速報の第1報が発出されたが<ref>[http://www.seisvol.kishou.go.jp/eq/EEW/kaisetsu/joho/20080508014533/content/content_out.html 緊急地震速報の内容](気象庁 2008年5月8日)</ref>、その後の解析で地震の規模が上方修正され、地震波の感知から58.3秒後の第9報で震度5弱以上に修正され、一般向け緊急地震速報に切り替えられた。切り替えの時点で地震の主要動は首都圏から東北までの広い範囲に到達しており、一般向け緊急地震速報については大きな揺れに間に合わない結果となった。
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||2008年6月14日 08:43||岩手県内陸南部||7.2||震度6強(震度6強)||[[岩手・宮城内陸地震]]の本震。[[日本放送協会|NHK]]は[[NHK週刊ニュース]]放送中。地震波を検知した約4秒後に緊急地震速報を発表<ref>[http://www.jma.go.jp/jma/press/0806/14a/200806141030.html 2008年6月14日08時43分ころの岩手県内陸南部の地震について](気象庁 2008年6月14日)</ref>。当初は宮城・岩手・秋田・山形が警戒域であったが、直後に青森・福島・新潟も加えられた。直下型地震であるため震源付近は間に合わなかったが、震源から半径約30キロ以上の地域では揺れが到達する前に速報が出された<ref>[http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080614-00000062-mai-soci &lt;岩手・宮城内陸地震&gt;緊急速報、震源地付近は間に合わず](毎日新聞 2008年6月14日)</ref>。仙台市では本震到達の約10秒前に緊急地震速報が出された<ref>[http://www.asahi.com/national/update/0614/TKY200806140136.html &lt;10秒前に緊急地震速報](朝日新聞 2008年6月14日)</ref>。
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緊急地震速報の情報源となる、地震計の密度が低い地域が日本には存在する。本土から離れた離島である伊豆諸島、小笠原諸島、南西諸島などがそうである。また、これ以外の地域でも、離れた海域で地震が発生した場合は同じような状況下におかれることもある。こういった地域では、地震計の密度が低いことが原因となってさまざまな問題が起きる。地震計の近くで地震が発生することが(地震計の密度が高い地域に比べて)相対的に少なくなるため、初めのS波を検知するまでに時間がかかることが多く、速報発表から揺れ始めるまでの時間も短くなる。また、得られる地震のデータも少ないため、震源・地震の規模・震度などの誤差が拡大しやすくなる。こういった問題は、2008年4月28日未明に起きた沖縄県宮古島近海を震源とする地震を契機に、問題視されることとなった。
 
海底には、地震計がほとんど設置されておらず(東海地域や伊豆諸島近海に集中しており、全く無い海底もある)、海域で地震波を捕らえることが難しい。そのため、海域が震源となる地震の場合、海底で地震波が観測できず、陸地に到達して初めて観測される。そのため、速報発表が遅れてしまうことがある。また、一般向け緊急地震速報は、最低でも2箇所以上の地震計が揺れを観測してから速報を発表しているため、震源地に最も近い1箇所目の地震計が揺れを観測しただけでは速報が発表されない(高度利用者向け緊急地震速報の場合は、速報が発表される)。2箇所目の地震計が、さらに離れている場合、その間にある建造物では速報発表よりも前に揺れが来てしまう。これが大規模な地震であった場合、大災害は避けられない。また当然、2箇所目の地震計が揺れを観測しても、今度は時間計算をするため、さらに時間を要してしまう。
 
初回速報発表の沖縄県宮古島近海を震源とする地震では、震源が海底だった。そしてその間に地震計が一切無く、地震発生が当初わからなかった。宮古島に地震波が到達して、初めて地震計が観測し、速報が発表されたのは午前2時32分25秒だった。しかし、宮古島市で揺れが来たのは午前2時32分20秒と、およそ5秒の差が起きた。これが海底に地震計が設置されていた場合、地震波が宮古島市に到達するまでに速報が発表された可能性もある(だが、この地震は深夜に発生していたため、速報が発表されていても目撃した人が少ないという問題もある)。
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=== 速報に伴う混乱 ===
また速報がS波到達以前に発表されても、主要動までの時間は数秒〜数十秒しかない。このため、発表時の対応が周知徹底されていないと、群衆が[[非常口]]に殺到する、速報を受けた自動車が急ブレーキをかけて玉突き衝突を誘発するといった[[パニック]]を引き起こし[[二次災害]]が発生する可能性があるとして、公衆への速報の早期の一般向け提供開始に対する慎重論もあった。これにより2007年春に予定されていた本運用開始は延期され、改めて10月からの運用が決まった。
 
=== 予想の誤差 ===