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[[証券取引所]]において株式が取引される、即ち[[上場]]の条件として、偽造変造防止の観点から、発行される株券(但し、証券取引所における流通単位である1株券または1[[単元株]]券のみ)が、各証券取引所において十分な管理組織を有していると確認された印刷会社において印刷され、かつ各取引所において定める様式に適合する株券(適合株券)であることを要する。そのため、例えば[[東京証券取引所]]においては、[[大日本印刷]](株)、[[凸版印刷]](株)、[[共同印刷]](株)、[[プロネクサス]](株)、[[瀬味証券印刷]](株)、[[昌栄印刷]](株)、[[図書印刷]](株)、[[サンメッセ]](株)及び[[国立印刷局]]とされるように、高度な印刷技術と厳しい管理体制を有する一部の印刷会社においてのみ、上場株券の印刷が可能となっている。
 
==会社法で有価証券としての株券==
株券を証券という観点から見た場合、「物的証券」・「利潤証券」・「支配証券」という三つの異なる側面を持つと言える。
===株券の発行===
;物的証券 :株主の持つ[[残余財産分配請求権]]に着目した場合、株式は会社の[[資産]]を分割したものであるから物的証券であると考えられる。
株券発行会社は、株式を発行した日以後遅滞なく、当該株式に係る株券を発行しなければならない([[b:会社法第215条|215条]]1項)、また、株式の併合、分割をしたときは、その効力を生ずる日以後遅滞なく、併合、分割した株式に係る株券を発行しなければならない(215条2項3項)。<br>
;利潤証券 :株主の持つ[[利益配当請求権]]に着目した場合、株式は配当という利潤を生む証券であるから利潤証券であると考えられる。このため[[理論株価]]には、将来にわたって期待できる(利率を考慮した)配当の総額が含まれる。
[[公開会社でない会社|公開会社でない]]株券発行会社は、株主から請求がある時までは、これらの規定の株券を発行しないことができる(215条4項)。
;支配証券 :株主の持つ[[経営参加権]]に着目した場合、株式は[[株主の議決権|議決権]]を行使して会社を支配するものであるから支配証券であると考えられる。
 
===株式の譲渡===
株主権の移転(株式の譲渡)は株券の交付のみにより、株券の[[占有]]者は適法の所持人と[[推定]]される([[b:会社法第131条|131条]]第2項)。会社は、株券を提示され名義書き換えを求められた場合、正当な理由のない限り、これを拒否することはできない。また、株券を紛失または盗取され、それが第三者に[[善意取得]]される可能性があり(旧商法229条)、善意取得されると、株主名簿の記載有無にかかわらず当該株券記載の権利を失うこととなる。即ち、株券は、有価証券法理の支配する証券流通の領域では完全な[[無記名証券]]である([[竹内昭夫]]「会社法講義」参照)。
 
===株主名簿と保管振替制度===
株券を購入したり譲り受けたりしただけでは、株主権を行使するにおいて発行会社に対抗することはできない。名義書換の手続きを行い、発行会社の[[株主名簿]]に氏名、住所、持ち株数を記載する必要がある。この手続きを忘れていた株式は[[失念株]]と呼ばれ、旧株主と新株主の間で、新たに割り当てわれた新株の所有権等をめぐってトラブルになることがある。ただし[[証券会社]]を通じて購入した場合には、通常、[[証券保管振替制度|保護預かり制度]]および[[証券保管振替制度|株券保管振替制度]]を利用することになり、株式を購入した段階で自動的に[[株主名簿]]に購入者の氏名等が記載される。株券保管振替制度のために作られた[[株式会社]][[証券保管振替制度|証券保管振替機構]](通称:ほふり)は、この制度に沿って株券を一括して管理する機構である。
 
==会社法での株券==
===株券不発行制度と株券不発行の原則化===
[[2003年]][[9月]]、法制審議会で全面的な「株券不発行制度」を導入するための商法等の改正案の要綱がまとめられた。[[2004年]][[6月]]には、「株式等の取引に係る決済の合理化を図るための社債等の振替に関する法律等の一部を改正する法律」(この改正法の中において「商法」「社債等の振替に関する法律」(改正後の名称は「社債、株式等の振替に関する法律」)などの法律が改正された)の改正が成立し、[[証券取引所]]に[[上場]]している株式会社については、2009年6月までに一斉に「'''株券不発行制度'''」に移行することとなった([[株券の電子化]]と呼ばれる。現時点において、2009年1月を予定)。
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2005年に成立した会社法においては、すべての株式会社につき、定款で株券を発行する旨の記載がない限り、株券を発行しなくてもよいこととされた([[b:会社法第214条|214条]])。株券を発行すると定款で定めている株式会社のことを特に'''[[株券発行会社]]'''とよぶ。ただし、経過措置として、会社法施行時(2006年5月1日)に株券不発行の定めをしていない会社については、その会社の定款において株券を発行する旨の定めがあるものとみなされた(会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律76条4項)。
 
===株券発行会社===
株券発行会社は、株式を発行した日以後遅滞なく、当該株式に係る株券を発行しなければならない([[b:会社法第215条|215条]]1項)、また、株式の併合、分割をしたときは、その効力を生ずる日以後遅滞なく、併合、分割した株式に係る株券を発行しなければならない(215条2項3項)。<br>
====有価証券としての株券====
[[公開会社でない会社|公開会社でない]]株券発行会社は、株主から請求がある時までは、これらの規定の株券を発行しないことができる(215条4項)。
株券を証券という観点から見た場合、「物的証券」・「利潤証券」・「支配証券」という三つの異なる側面を持つと言える。
;物的証券 :株主の持つ[[残余財産分配請求権]]に着目した場合、株式は会社の[[資産]]を分割したものであるから物的証券であると考えられる。
;利潤証券 :株主の持つ[[利益配当請求権]]に着目した場合、株式は配当という利潤を生む証券であるから利潤証券であると考えられる。このため[[理論株価]]には、将来にわたって期待できる(利率を考慮した)配当の総額が含まれる。
;支配証券 :株主の持つ[[経営参加権]]に着目した場合、株式は[[株主の議決権|議決権]]を行使して会社を支配するものであるから支配証券であると考えられる。
 
====株券の記載事項====
会社の[[商号]]、株数、株券の番号、株式の内容(普通株式か、種類株式であるか)、[[代表取締役]]の[[署名]]、などを記載することが要求される([[b:会社法第216条|216条]])。
 
====株券喪失登録制度=式の譲渡===
株主権の移転(株式の譲渡)は株券の交付のみにより、株券の[[占有]]者は適法の所持人と[[推定]]される([[b:会社法第131条|131条]]第2項)。会社は、株券を提示され名義書き換えを求められた場合、正当な理由のない限り、これを拒否することはできない。また、株券を紛失または盗取され、それが第三者に[[善意取得]]される可能性があり(旧商法229条)、善意取得されると、株主名簿の記載有無にかかわらず当該株券記載の権利を失うこととなる。即ち、株券は、有価証券法理の支配する証券流通の領域では完全な[[無記名証券]]である([[竹内昭夫]]「会社法講義」参照)。
 
===株主名簿と保管振替制度===
株券を購入したり譲り受けたりしただけでは、株主権を行使するにおいて発行会社に対抗することはできない。名義書換の手続きを行い、発行会社の[[株主名簿]]に氏名、住所、持ち株数を記載する必要がある。この手続きを忘れていた株式は[[失念株]]と呼ばれ、旧株主と新株主の間で、新たに割り当てわれた新株の所有権等をめぐってトラブルになることがある。ただし[[証券会社]]を通じて購入した場合には、通常、[[証券保管振替制度|保護預かり制度]]および[[証券保管振替制度|株券保管振替制度]]を利用することになり、株式を購入した段階で自動的に[[株主名簿]]に購入者の氏名等が記載される。株券保管振替制度のために作られた[[株式会社]][[証券保管振替制度|証券保管振替機構]](通称:ほふり)は、この制度に沿って株券を一括して管理する機構である。
 
===株券喪失登録制度===
商法施行来、株券を紛失または盗取された株主は他の有価証券の権利者と同様、[[非訟事件手続法]]に定められた公示催告手続の下、[[除権決定|除権判決]]により権利の回復を図らざるをえなかったが、[[善意取得]]を阻止できないなどその実効性が薄かったため、[[2002年]](平成14年)改正商法において、[[株券失効制度]]が導入された。しかしながら、株券失効制度によっても、(1)株主が確定的に権利を回復するまで1年を要する (2)株券の移転による善意取得を阻止することが困難である、等の不備は、株式の譲渡を株券による限り回避しえず、抜本的な解決策が求められた。[[2005年]]に成立した[[会社法]]においては'''株券喪失登録簿制度'''が新たに導入されている([[b:会社法第221条|221条]]~[[b:会社法第232条|232条]])。