「シュワルツシルト半径」の版間の差分

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[[1916年]]、ドイツの[[天文学者]]・[[カール・シュヴァルツシルト|シュヴァルツシルト]]は[[アルベルト・アインシュタイン|アインシュタイン]]の[[アインシュタイン方程式|重力場方程式]]の解を求め、非常に小さく重い星があったとすると、その星の中心からのある半径の球面内では[[曲率]]が[[無限大]]になり(以下に述べるように、現在はこの考えは誤りとされている)、[[光]]も脱出できなくなるほど曲がった[[時空]]領域が出現することに気いた。その半径をシュヴァルツシルト半径(Schwarzschild radius)または'''重力半径'''と呼ぶ。
 
シュヴァルツシルト半径よりも小さいサイズに収縮した天体を[[ブラックホール]]と呼ぶ。ブラックホールの質量を<i> ''M</i>, ''、[[光速度]]を<i> ''c</i>, ''、[[万有引力定数]]を<i> ''G</i>'' とすると、そのシュヴァルツシルト半径<i> ''r</i>''<sub>g</sub>は、<math>r_{\rm g} = {2GM \over c^2}</math> と表される。
 
この表式と同じ結果は以下のようにして[[ニュートン力学]]からも導き出すことができる。
 
質量<i> ''M</i>''、半径<i> ''r</i>'' の天体表面からの[[脱出速度]]<i> ''v</i>''<sub>esc</sub>を考えると、[[運動エネルギー]]と[[位置エネルギー]]のつりあい:
:<math>\frac{1}{2} mv_{\rm esc}^2 = G \frac{mM}{r}</math>
より、
:<math>v_{\rm esc} = \sqrt{\frac{2GM}{r}}</math>
となる。ここで<i> ''v</i>''<sub>esc</sub> =<i> ''c</i>'' と置いて、脱出速度が光速<i> ''c</i>'' に等しくなる時の天体の半径<i> ''r</i>'' を求めれば、上記と同じ重力半径の式が得られる。実際、18 世紀末にイギリスの[[ジョン・ミッチェル (天文学者)|ミッチェル]]やフランスの[[ピエール=シモン・ラプラス|ラプラス]]がこのような考察から、ある程度以上質量が大きく半径が小さい星から放たれた光は星の外に出ることができないと考えた。
 
ただしこのニュートン力学的考察での脱出速度は物体が無限遠まで到達するのに要する初速度なので、最終的に戻ってくるならば一時的に有限の距離まで飛び出すことは可能である。これに対し、一般相対性理論の解としてのシュヴァルツシルト半径は、重力による曲率の歪みが大きくなることによって起こり、この半径から外には一瞬たりとも出ることができない、という違いがある。なお、シュヴァルツシルトは、シュヴァルツシルト半径を曲率が無限大になる半径として求めたが、実際にはこれは座標の取り方による一種のメトリックであり、曲率が無限大になるのは ''r'' = 0 の[[特異点]]である。
 
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仮に質量が[[太陽]]と同じ星がブラックホールになったとすると、そのシュヴァルツシルト半径は約3km 3 km となる(ただし[[恒星進化論|恒星進化の理論]]から、[[太陽質量]]程度の星はブラックホールにはならないことが分かっている)。同様に、[[地球]]質量のシュヴァルツシルト半径は約 0.9cm9 cm、[[銀河]]中心にあると考えられている10<sup>8</sup> 太陽質量程度の大質量ブラックホールのシュヴァルツシルト半径は[[天文単位]]のスケールとなる。
 
==関連項目==