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'''補体系'''は、生体が病原体を排除する際それを補助する生化学的カスケードである。それは適応免疫系ではないが、免疫のより大きな系の一部であり、生体の生涯にわたって変化することなく機能する。別の言い方では、自然免疫系に属している。
 
補体系は血液中の多数の小タンパク質からなり、それらは通常不活性な酵素前駆体の形で循環している。いくつかのトリガーの1つによって刺激を受けると系のタンパク質分解酵素が特定のタンパク質の分反応を行い、サイトカインの放出を誘導し、さらに分反応が進むようにカスケードの増幅を始める。この活性カスケードの最終結果は反応の大規模な増幅であり、細胞殺傷性の[[膜侵襲複合体]](細胞膜障害性複合体、MAC, membrane attack complex)の活性化である。補体系は20以上のタンパク質とタンパク質断片からなる。その中には、血清タンパク質、漿膜タンパク質、細胞膜レセプターを含む。これらのタンパク質は主に肝臓で合成され、血清のグロブリン分画の約5%を占める。
 
補体系の活性化には3つの生化学的プロセスがある:古典経路、副経路、マンノース結合レクチン経路である。<ref name=Janeway_2001>{{cite book | author = Janeway CA Jr., Travers P, Walport M, Shlomchik MJ | title = Immunobiology. | edition = 5th ed. | publisher = Garland Publishing | year = 2001 | id = [http://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/bv.fcgi?rid=imm.section.161 (via NCBI Bookshelf)] ISBN 0-8153-3642-X }}</ref>
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補体の成分はC1~C9で表され、C1にはさらにC1q、C1r、C1sの3つの、その他はC5a、C5bといったように2つのそれぞれ[[サブタイプ]]を持つ。これらのタンパク質群が連鎖的に活性化して[[免疫反応]]の一翼を担う。
 
さらに、C1~C9の補体タンパク質以外にB因子、D因子などを含めた16種類のタンパク質、液性(血液中にある)の5つの調節因子(I因子、H因子、C4Bp、C1抑制因子、properdin)、細胞膜上の4種類の調節因子 (CR1、CR2、membrane cofactor protein、decay accelerating foctorfactor) などのタンパク質も補体の機能の発現・調節に関与しており、これらを総称して[[補体系]]と呼ぶ。
 
=== 古典的経路 ===
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[[Image:c1protein.png|thumb|200px|left|C1タンパク質のサブユニットC1r、C1s、C1q尾部を示す。]]
3つの経路は全て互いに異なるC3転換酵素を生ずるが、それらは相同なものである。補体の古典経路は、活性化されるのに、多くは抗体を必要とする(特異的免疫応答)が、副経路およびマンノース結合レクチン経路では抗体は必要ではなくC3加水分解あるいは抗原によって活性化される(非特異的免疫応答)。3経路ともC3転換酵素がC3成分を分解して活性化し、C3aとC3bを生じ、カスケードにさらに分解および活性化の反応が起こるようにする。C3bは病原体表面に結合してオプソニン化を行い、貪食細胞による取り込みを促進する。C5aは重要な走化性タンパク質で炎症性細胞の動員を補助する。C3aもC5aもアナフィラトキシンの作用をもち、マスト細胞の脱顆粒や血管透過性の講師、平滑筋収縮などの直接的なトリガーとなる。C5bは膜侵襲経路を開始して、C5b、C6、C7、C8および多量体のC9からなる膜侵襲複合体(MAC)を形成する。<ref name=Baron>{{cite book | author = Goldman AS, Prabhakar BS | title = The Complement System. ''in:'' Baron's Medical Microbiology ''(Baron S ''et al'', eds.)| edition = 4th ed. | publisher = Univ of Texas Medical Branch | year = 1996 | id = [http://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/bv.fcgi?rid=mmed.section.238 (via NCBI Bookshelf)] ISBN 0-9631172-1-1 }}</ref>MACは補体カスケードにおける最終産物で細胞溶解性がある。標的細胞に膜貫通性チャンネルを形成し、浸透圧を利用した溶解作用を起こす。クッパー(Kupffer)細胞や他のマクロファージタイプの細胞は、表面が補体まみれになった病原体を排除する手助けをする。自然免疫を構成する一部として、補体カスケードの要素は脊椎動物より古い種に見出すことができる。最近の知見では補体系の起源は以前考えられていたよりもずっと古い時代に遡り、前口動物のカブトガニに見出されることがわかった。
 
=== 古典経路 ===
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=== 副経路 ===
 
副経路は病原体表面で直接C3の加水分解が行われることで開始する。他の経路のように病原体に結合したタンパク質は必要ではない。<ref name=Janeway_2001 />C3は肝臓で作られ血液中の酵素でC3aとC3bに分解される。もし病原体が血液中にいないならC3aもC3bいずれのタンパク質断片も不活性化される。しかし、近くに病原体がいたらC3bの中には病原体の細胞膜に結合するものある。そうすると次にB因子に結合する。この複合体は次にD因子によって分解されてBaおよび副経路でのC3転換酵素Bbとなる(副経路のC3転換酵素はC3bBbであるとする考えもある)。
 
C3bBb複合体は病原体の表面にしがみついており、血液中で、加水分解によってC3をのこぎりのように切断してC3aとC3bに分ける。その結果病原体にしがみつくC3bBbの数は増えて行く。
 
C3の加水分解が終わるとC3b複合体はC3bBbC3bとなり、これはC5を分解してC5aとC5bに分ける。C5aとC3aはマスト細胞の脱顆粒を開始させる。C5b、C6、C7、C8、C9からなる複合体(C5b6789)はMACといわれる膜侵襲複合体を作る。これは細胞膜の中に埋め込まれ、パンチのように穴を開け、細胞溶解を始める。
 
=== レクチン経路(マンノース結合レクチン経路、MBL経路、MBL-MASP) ===
レクチン経路は古典経路に相同であって、オプソニンの代わりにマンノース結合レクチン、C1qの代わりにフィコリンを使う。この経路はマンノース結合レクチンが病原体表面のマンノース残基に結合することによって活性化される。これはMBL関連セリンタンパク質分解酵素であるMASP-1とMASP-2(それぞれC1rとC1sに似ている)を活性化しC1を分解してC4aとC4bに分け、C2を分解してC2aとC2bに分ける。C4bとC2aは古典経路と同じく、結合してC3転換酵素を形成する。フィコリンはMBLに相同でMASPを介して同様な機能を果たす。無脊椎動物では適応免疫系はないのでフィコリンが幅を利かせており、病原体識別分子がないということを埋め合わせするように広範囲の結合特性をもっている。
 
== 補体系の制御 ==
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== 病気での役割 ==
 
補体系は他の免疫性要素とともに多くの病気の原因となっていると考えられている。例を挙げるとBarraquer-Simons症候群、喘息、紅斑性狼瘡、糸球体腎炎、様々な関節炎、自己免疫性心臓病、多発性硬化症、炎症性大腸炎、虚血再灌流障害等である。アルツハイマー病やその他の神経変性病態のようなを示す中枢神経系の病気にも、補体系が関与しているのではないかという疑いは次第に高まっている。
 
経路の最終段階のところの欠損によって自己免疫病と感染症の両方に罹りやすくなる場合もある(特にナイセリア髄膜炎ではC56789複合体がグラム陰性菌を攻撃する際の役割に原因があって)。
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== 引用文献 ==