「西フラマン語」の版間の差分

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== 歴史 ==
[[画像:Nederlands-westvlaams.png|thumb|200pix|西フラマン語の使用地域]]
中世にはアルトワとの交易が盛んだったため、西フラマン語はフランス語ピカール方言の影響を強く受けている。[[アラス]]は中世初期にフランドルの一部になり、中世末期にはオランダに加えられた。西フラマン方言、特に重要な商業都市である[[ブルッヘ]]の方言は、初期中世オランダ語の標準化に寄与している。西フラマン語の weggevaagd と waagschaal という語形から weggeveegd と weegschaal という形が現れ、これらは現在標準[[オランダ語]]に採り入れられている。西フラマン語は、中世オランダ語の特徴を最もよく残しているオランダ語の方言である。
 
西フラマン語は概ね低フランコニア語的だが、北海ゲルマン語的な特徴も多分に持つ。このことにより、以前は[[フリジア語]]か[[低ザクセン語]]の[[基層言語]]があったのではないかという推測がなされた。そうするとなぜ西フラマン語と東フラマン語の対立があるのかという疑問に答えるのは容易ではなく、その地理的・政治的な理由は見当たらない。西フラマン語が低フランコニア語と別言語であると見なす十分な理由があるとして、その可能性を指摘する者もいる。しかしこれは東フラマン語との間に[[方言連続体]]があるために否定される。さらに、ブラバント方言とともに標準語の基礎になっているホラント方言は低フランコニア語ではない。西フラマン語が中世末期以降ホラント方言やブラバント方言とは異なる展開を遂げたため、音が一致していない点から別な言語だと見なす者もいる。
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== 北海ゲルマン語的特徴 ==
4世紀と5世紀と考えられるゲルマン人の民族移動の結果フランドルデレンにたどり着いたサクソン(ザクセン)人の方言の痕跡が今も西フラマン語には多くある。この沿海ゲルマン的、北海ゲルマン的な特徴は、ゼーラント語やホラント語など他のオランダ語方言だけでなく、低ザクセン語、フリジア語、[[英語]]にも反映されている。西フランドルの西部に行くほどその特徴がよく見られる。
 
西フラマン語が受けた北海ゲルマン語的影響は、例えば pit「穴」、rik 「後ろ」、dinne「薄い」、より古い brigge「橋」などの語で現れている。(オランダ語ではそれぞれ put, rug, dun, brug)。短い u は i になっており、<!-- ontrond? -->これは英語にも当てはまる(pit, ridge, thin, bridge)。bek, in, tusschen(オランダ語の tussen「〜の間に」)にあるような短い開いた e, i, u という音はホラント語など沿岸部の他の古い方言に見られる。これは近隣のブラバント方言とは対照的である(bik, ien, tuusse)。標準オランダ語は両者の中間を行っており、現代ホラント語もこれに加わる。
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北海沿岸地域の多くの方言が共通して持つもう一つの音的特徴は、a を o に変化させた語があることである。zochte「柔かい」(蘭 zacht)、of「終わっている」(蘭 af)、brocht「持って来た」(蘭 bracht)など。英語の soft, off, brought を参照。
 
もう一つ沿岸部ゲルマン語に特徴的なのは、古西ゲルマン語の二重母音 iu が ie に変化したことである。同じものが陸の諸方言では uu となっており、のちに再び二重母音化し ui となった。よって、英語の chicken, fire, stear のように西フラマン語では kieken, vier, stieren という形があり、それに対しブラバント方言では kuiken, vuur, stuur となっている(つまり、r の前では語中の uu が ui には変化せずに保たれている)。
 
複数形の作り方に関しては、西フラマン語では(そしてフランス・フラマン語の古風な言い回しでは)、たいていの場合に -en で複数形を表す他の方言や標準オランダ語よりも、-s を使うことがはるかに一般的である。英語ではこの方法がずっと広く用いられるようになっており、そのため -en による複数形は非常に珍しくなっている(数少ない例として oxen がある)。西フラマン語では今も英語と違って多くの複数形は -en で終わる。-s の複数形は標準オランダ語や tussentaal でも勢力を獲得しているが、特に西フラマン語ではよく見られるものになっている。trings「列車」(複数形、以下同様)、keuns「うさぎ」、brils「眼鏡」、kleers「服」、kinders「子供」などが例。
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西フラマン語は東フラマン語と違いかなり均質的な方言だが、それでも4つの大きな変種を認めることができる。北部と西部、そして南東部の間で大きな違いを見出せる。
 
'''沿岸部西フラマン語'''は、沿岸地方とフランス国境付近のウェストフークで話される(ヴルネ、[[イーペル]]、ポペリンゲ一帯)。西フラマン語はオランダ語と同様に低フランコニア語に起源を持つが、この地域では多分にサクソン語的な特徴を含んでいる。沿岸部西フラマン語の他に'''陸西フラマン語'''が区別され、こちらはサクソン的要素がより少なく東フラマン語的な特徴がより多い。
 
例えば沿岸部西フラマン語では、オランダ語ならば r + t, d, s の前にある短い e が短い a になることがあり、南東部では gès「草」(蘭 gras)、vès「新鮮な」(蘭 vers)、desschen「脱穀」(蘭 dorsen)と言うのに対し、西部と沿岸部では gas, vas, dasschen と言う。[[ダンケルク]]の市場では vaske vis「新鮮な魚」(蘭 verse vis)という声が聞かれるが、これは沿岸部西フラマン語なら vassche vis, 陸西フラマン語なら vessche vis となるであろう。
 
沿岸部西フラマン語でもう一つ特徴的なのは、動詞の活用で複数形を1人称単数に使うことである。Ik zin, ik werken, ik peizen(いずれも動詞が複数の形)は、南東部では ik ben, ik werke, ik peize と単数形になる。東フラマン語との類似が認められる。
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moede や roede のような中世オランダ語の2音節語の -de が完全になくなっているのも大陸西フラマン語の特徴であり、標準オランダ語でも同じことが起きた。沿岸部西フラマン語では常に moeë, roeë と言い、koeë や schoeë のように末尾に -de がなかった語でさえもこの傾向に従っている。
 
同時に西フラマン語で特筆すべきは指小形の多様さである。陸西フラマン語では -ke を付加するが、沿岸部西フラマン語では -tje が用いられる。よって glazeke という形は北部や西部で聞かれず、沿岸部東部では古くは glazetje と言い、この形はブルッヘでもなくなっておらず glazetjie と言う。沿岸部西フラマン語でもトアハウト付近のハウトラントでは glazeje, ウェストフークでは glazege である。中西部フランドル、特にルーセラーセでは、gloazegie, huzegie のように指小辞 gie が使われる。しかし、これらのうち –eje や –ege の形は、ブラバント方言影響下の東部・南部から来る -ke や、標準語に影響された北部や西部の –tje(同化して –sje や –je になることも)の拡大によりかなり後退している。
 
さらに沿岸部西フラマン語には、南東部の西フラマン語とは違って、沿岸西ゲルマン語的な特徴が多くある。
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== その他の特徴 ==
 
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