'''エルミート作用素'''(エルミートさようそ、''Hermitian operator'', ''Hermitian'')または'''自己共役作用素'''(じこきょうやくさようそ、''self adjoint operator'')は、複素[[ヒルベルト空間]] ''H'' 上の線形[[作用素]] <math>A</math> で次、その条件を満足共役作用素が自分自身に一致するようなもののことである。[[物理学]]では'''エルミート演算子'''とも呼ばれる。エルミートという名称は、フランス人数学者[[シャルル・エルミート]]に因む。
== 定義 ==
::『''H'' の元 <math>\phi,\psi</math> に対して内積<math>\langle \phi, \psi\rangle</math>が定義されているとき、すべての <math>\Psi, \Phi\in D(A)</math> に対して、
::::::<math>\langle \Psi ,A \Phi \rangle = \langle A\Psi, \Phi\rangle</math>
::を満たす。ただし、<math>D(A)</math> は、作用素 ''A'' の'''定義域'''(''Domain'')である。』
ここで、作用素 ''A'' が有界か非有界かは無関係に定義される。エルミート作用素とは、粗っぽく言えば、「エルミート行列のヒルベルト空間版」である<ref name="ezawa_arai">江沢洋・新井朝雄共著「量子力学の数学的構造I」朝倉書店</ref>。[[物理学]]では'''エルミート演算子'''とも呼ばれる。エルミートという名称は、フランス人数学者[[シャルル・エルミート]]に因む。書物によっては、エルミート作用素と'''対称作用素'''(たいしょうさようそ、''Symmetric operator'')を区別しないこともある<ref name="ezawa_arai"/>が、この項では区別をして説明する。しばしば、エルミート作用素を'''自己共役作用素'''(じこきょうやくさようそ、''self adjoint operator'')と同一のものと考えている人や研究者がいるが、<span style="color:red"><big>これは誤り</big></span>であることは強調されておくべきである。
== エルミート作用素 vs 対称作用素 vs 自己共役作用素 ==
{{正確性}}
[[内積|エルミート内積]] <, > を備えた複素ヒルベルト空間 ''H'' 上の有界線型作用素 ''h'' が
:<math>\langle h\xi, \eta \rangle = \langle \xi, h\eta \rangle</math>
{{Main|量子力学の数学的基礎}}
[[量子力学]]における系の変化は[[演算子]]で表現され、観測可能な[[物理量]](オブザーバブル)に関する観測はすべて実数を固有値とするエルミート演算子で表現される。物理量の観測値を求めるためにはエルミート演算子に対する[[固有値問題]]を扱うことになる。
==参考文献==
<references/>
関数解析の専門書には必ず「エルミート作用素」や「自己共役作用素」に関する記述が載っている。
== 関連項目 ==
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