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==定義==
===ISO 9241-11===
[[1998年]]の[[ISO]] 9241-11での定義。
 
* '''ユーザビリティ''' (Usability): 特定の利用状況において、特定のユーザによって、ある製品が、指定された目標を達成するために用いられる際の、有効さ、効率、ユーザの満足度の度合い。
** '''有効さ''' (Effectiveness): ユーザが指定された目標を達成する上での正確さ、完全性。
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===ニールセン===
一方で、ウェブ・ユーザビリティの権威である[[ヤコブ・ニールセン]]が自身の著書『ユーザビリティエンジニアリング原論』(1994年)は、インタフェース中で定義するユーザビリティは、ISO 9241-115つ定義よりも意味が若干限定ユーザビリティ特性からなる多角構成要素を持つとしている。
 
ニールセンの定義では、ユーザが望む機能を[[システム]]が十分満たしているかどうか、といった事柄はユーティリティ(実用性)に含まれる内容である。そしてユーザビリティは、その機能をユーザがどれくらい便利に使えるかという意味であり、ユーティリティとは区別してとらえている。これに対してISO 13407では、ニールセンがユーティリティと定義した内容も、ユーザビリティに含んでいる。つまりニールセンが定義するユーザビリティとは、ISO 13407が定義するユーザビリティに内包される形となる。
 
ニールセンは、そのようにISO 13407よりも限定的な意味で定義した上で、インタフェースのユーザビリティとは、5つのユーザビリティ特性からなる多角的な構成要素を持つとしている。
 
# '''学習しやすさ''': システムは、ユーザがそれを使ってすぐ作業を始められるよう、簡単に学習できるようにしなければならない。
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# '''主観的満足度''': システムは、ユーザが個人的に満足できるよう、また好きになるよう楽しく利用できるようにしなければならない。
 
===違い===
==ニールセンのユーザビリティ==
ニールセンの定義するユーザビリティは、ISO 9241-11の定義よりも意味が若干限定的になっている。
ニールセンは、ユーザビリティに関して最初に出版された概論書『ユーザビリティエンジニアリング原論』 (1994) において、ユーザビリティの概念を、彼の考えた階層的概念構造の中に位置づけて示した。
 
ニールセンの定義では、ユーザが望む機能を[[システム]]が十分満たしているかどうか、といった事柄はユーティリティ(実用性)に含まれる内容である。そしてユーザビリティは、その機能をユーザがどれくらい便利に使えるかという意味であり、ユーティリティとは区別してとらえている。これに対してISO 13407では、ニールセンがユーティリティと定義した内容も、ユーザビリティに含んでいる。つまりニールセンが定義するユーザビリティとは、ISO 13407が定義するユーザビリティに内包される形となる。
 
==背景==
===ニールセンのユーザビリティ===
ウェブ・ユーザビリティの権威であるニールセンは、ユーザビリティに関して最初に出版された概論書『ユーザビリティエンジニアリング原論』 (1994) において、ユーザビリティの概念を、彼の考えた階層的概念構造の中に位置づけて示した。
 
それによると、ユーザビリティは学習しやすさ (Learnability)、効率 (Efficiency)、記憶しやすさ (Memorability)、エラー (Errors)、満足 (Satisfaction) といった品質要素から構成される概念として示されている。この定義はいちおう人間工学、認知工学、感性工学的な側面を考慮したものになっているが、かならずしも網羅的、かつ相互排他的になっておらず、概念定義としては十分なものではない。また、それぞれの品質要素は、学習のしやすさや効率などの諸側面において問題がないようにと考えられており、いわばnon-negativeな特性の集合となっている。
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ユーザビリティという概念をこうした概念体系の中に位置づけ、それを信頼性などの関連概念と関係づけた点はNielsenの一つの功績といえる。ただし、彼の定義したユーザビリティは前述のような時代状況を背景にしたものであり、当時としては実情を反映したものといえるが、今日ではいささか狭すぎるといえる。
 
===ISOのユーザビリティ===
こうした状況の中、ユーザビリティという概念にきちんとした定義を与えたのがISO規格であり、現在はこの定義が一般的に用いられている。ISOの規格におけるユーザビリティの定義にはISO 9126系のものとISO 9241-11系のものがある。
 
====ISO 9126====
ISO 9126は、ソフトウェアの品質に関する規格であり、品質特性を機能性 (functionality)、信頼性 (reliability)、使用性 (usability)、効率性 (efficiency)、保守性 (maintenability)、移植性 (portability) に分けている。その中でユーザビリティは使用性として、理解性 (understandability)、習得性 (learnability)、操作性 (operability) から構成される概念となっている。品質特性は定量的に把握できることを重視されるため、ここでのユーザビリティは概念定義として十分なものにはなっていない。つまり、ISO 9126は[[ソフトウェア品質]]について、その多様な側面を網羅したものになっているが、ユーザビリティの定義は必ずしも厳密ではなく、現在は次に述べるISO 9241-11の定義の方が一般的に利用されている。
 
====ISO 9241-11====
1998年に成立したISO 9241-11は、JIS Z8521として1999年にJIS化されているが、ここではユーザビリティに関するかなり厳密な定義が行われている。すなわち、ユーザビリティとは「ある製品が、指定された利用者によって、指定された利用の状況下で、指定された目標を達成するために用いられる際の有効さ、効率及び満足度の度合い」として定義されている。さらに有効さ (effectiveness) については「ユーザが、指定された目標を達成する上での正確さと完全さ」、効率 (efficiency) については「ユーザが、目標を達成する際に正確さと完全さに費やした資源」、満足度 (satisfaction) については「不快さのないこと、及び製品使用に対しての肯定的な態度」という定義が与えられている。有効さと効率という二つの概念は、相互排他性が明確であり、またこの規格以前にも、品質を表現する際にしばしば用いられているため了解性が高いといえる。なお、満足度については、部分的に有効さと効率に従属する側面を持っている。つまり、有効であり効率的であれば、それによって満足感がもたらされるからである。ただし、より感性的な、たとえば審美的な側面などは満足度固有の側面であり、その点では他の二つの概念から独立したものといえる。