「アジア通貨単位」の版間の差分

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[[Image:ASEAN Plus Three members.png|thumb|300px|ACUの設定された[[ASEAN+3]]の範囲]]
'''アジア通貨単位'''(あじあつうかたんい)とは、[[アジア]]通貨([[ASEAN]]10国+[[日本]]、[[中華人民共和国|中国]]、[[大韓民国|韓国]])の加重平均値を示す尺度。英語で「Asian Currency Unit」と書くことから、略して'''ACU'''(アキュ)とも呼ばれる。
 
== 概要 ==
各国の経済([[国内総生産|GDP]]、貿易量など)の比重に基づき各々の通貨が一定の比率で合成された、計算上の共通通貨。[[1997年]]の[[アジア通貨危機]]が発端で、[[2002年]]の[[アジア欧州会合]]において日本の[[国際通貨研究所]]により提唱された。2006年5月のASEAN+3財相会議でACUの研究が決定され、[[2007年]]3月から[[アジア開発銀行]](ADB) (ADB) より公表が行われている。
 
現在アジアでは、ドル安に従い通貨価値の上昇する[[円 (通貨)|円]]、[[バーツ]]と、ドルペッグのため価値の下落する[[人民元]]などが並存しており、これにより域内での通貨摩擦が生じている。各国通貨と、バスケット方式により算出されたACUとの乖離状況を指標として示すことにより利上げ・利下げを行い、通貨の均衡を維持するというものである。参加国が相互に監視をする事で、特定国の通貨切下げ競争を防ぐ事ができ、域内貿易の為替リスクを軽減させ、レートを安定させられる。また、[[米ドル]]や[[ユーロ]]とアジア通貨との変動要因・変動幅の研究にも役立つ。
 
将来的に[[香港]]、[[台湾]]の加入も検討されており、将来的には、[[欧州連合]]の[[ユーロ]]のように[[東アジア共同体]]で使う[[共通通貨]]の基礎としても期待されてい(渡辺他 2006)
 
== ECUとの比較 ==
<table{| borderclass="1wikitable" cellpaddingborder="21" alignstyle="{{align-style|right}}">
<caption>|+ '''アジアと欧州の共通通貨導入までの比較'''</caption>
|-
<tr bgcolor="lightgreen"><th></th><th>アジア</th><th>欧州</th></tr>
! 出来事
<tr><td align="center">共同体の発足</td><td align="center">-</td><td>[[欧州経済共同体|EEC]]:1957年3月<br/>[[欧州共同体|EC]]1967年7月</td></tr>
! アジア
<tr><td align="center">計算単位の公表</td><td align="center">-</td><td>[[欧州計算単位|EUA]]:1975年4月</td></tr>
! 欧州
<tr><td align="center">通貨制度の発足</td><td align="center">-</td><td>[[欧州通貨制度|EMS]]:1979年3月</td></tr>
|-
<tr><td align="center">通貨単位の公表</td><td>'''ACU''':2007年3月</td><td>[[欧州通貨単位|ECU]]:1979年3月</td></tr>
| 共同体の発足
<tr><td align="center">中央銀行の発足</td><td align="center">-</td><td>[[欧州中央銀行|ECB]]:1998年6月</td></tr>
| style="text-align:center" | -
<tr><td align="center">[[経済通貨統合]]の完成</td><td align="center">-</td><td>[[ユーロ]]:1999年1月</td></tr>
<tr><td| align="center">共同体の発足</td><td align="center">-</td><td>[[欧州経済共同体|EEC]]: 1957年3月<br/>[[欧州共同体|EC]]: 1967年7月</td></tr>
<tr><td align="center">共通通貨の流通</td><td align="center">-</td><td>ユーロ:2002年1月</td></tr>
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</table>
| 計算単位の公表
ACUはしばしば、[[ユーロ]]の基礎となった[[欧州通貨単位]](ECU)と比較される。ACUが設定されれば、通貨建てアジア通貨建て債券の発行につながり、[[アジア債券市場]]とも相俟って域内の金融協力が加速し、アジアにおいても共通通貨導入の議論が加速しそうだ。既に中国は[[中国人民銀行|人民銀行]]や[[中国世界経済研究所]]など各方面の幹部が共通通貨の検討を持ちかけるなど、積極的な姿勢を見せている。
| style="text-align:center" | -
| [[欧州計算単位|EUA]]: 1975年4月
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| 通貨制度の発足
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| [[欧州通貨制度|EMS]]: 1979年3月
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| 通貨単位の公表
| '''ACU''': 2007年3月
| [[欧州通貨単位|ECU]]: 1979年3月
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| 中央銀行の発足
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| [[欧州中央銀行|ECB]]: 1998年6月
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| [[経済通貨統合]]の完成
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| [[ユーロ]]: 1999年1月
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| 共通通貨の流通
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| ユーロ: 2002年1月
|}
 
ACUはしばしば、[[ユーロ]]の基礎となった[[欧州通貨単位]](ECU) (ECU) と比較される。ACUが設定されれば、通貨建てアジア通貨建て債券の発行につながり、[[アジア債券市場]]とも相って域内の金融協力が加速し、アジアにおいても共通通貨導入の議論が加速しそうだ{{疑問点}}<!--個人的な意見-->。既に中国は[[中国人民銀行|人民銀行]]や[[中国世界経済研究所]]など各方面の幹部が共通通貨の検討を持ちかけるなど、積極的な姿勢を見せている。
しかし欧州の場合、1957年の[[欧州経済共同体]](EEC)発足以来、2002年の[[ユーロ]]導入に向けては45年もの長きに渡る準備・交渉期間を要した。欧州ではインフレ率など各種の厳しい条件を課したが、日本も含め、現在のアジアでこのような収束基準を満たす国は存在しない。また欧州に比べ域内各国の経済格差が大きく、当時のECUのように、自国通貨と通貨単位との連動幅を義務付ける事はかなりの困難を伴う。
 
しかし欧州の場合、1957年の[[欧州経済共同体]](EEC) (EEC) 発足以来、2002年の[[ユーロ]]導入に向けては45年もの長きに渡る準備・交渉期間を要した。欧州ではインフレ率など各種の厳しい条件を課したが、日本も含め、現在のアジアでこのような収束基準を満たす国は存在しない。また欧州に比べ域内各国の経済格差が大きく、当時のECUのように、自国通貨と通貨単位との連動幅を義務付ける事はかなりの困難を伴う。
 
通貨単位公表の準備に大きな役割を果たした[[河合正弘]]([[東京大学]]社会科学研究所教授、[[アジア開発銀行]]総裁特別顧問・地域経済統合室長、元[[財務省 (日本)|財務省]]副財務官)も「アジア通貨の旗を掲げる事によって、アジアの地域統合の終着点が明確になる」としている通り今後アジアの共通通貨論議が一層深まるのは間違いない情勢であるが、その方向性・実現性は未知数と言うのが現実である。
 
== 参考文献 ==
*[[日本銀行]] 渡辺真吾、小倉將信[http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/wps/wp06j21.htm アジア通貨単位から通貨同盟までは遠い道か](2006) [[日本銀行]]、2006年11月
* [[吉冨勝]]『共通通貨創設の鍵となる「為替レート安定化」3つの条件』(2005) 2005年
*[[外務省]] 『[http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/eu/euro_gaiyou.html 外務省 -EUにおける通貨統合-]』 [[外務省]]
 
{{DEFAULTSORT:あしあつうかたんい}}
[[Category:通貨]]
[[Category:東アジア]]
 
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