「自衛官護国神社合祀事件」の版間の差分

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'''自衛官護国神社合祀事件'''(じえいたいかんごこくじんじゃごうしじけん)とは、[[殉職]]した[[自衛官]]を[[山口県護国神社]]に[[合祀]]した行為が、[[信教の自由]]を侵害され、[[精神的自由]]を害されたとして遺族の女性が、合祀の取消し請求を求めた訴訟である。最終的に[[最高裁判所]]は訴えを認めなかったが、最高裁判事の意見が分かれる、いわゆる合議割れになったことや、下級審が行った事実認定を最高裁が覆すなど一部に異議がある。
 
== 訴訟の背景 ==
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== 最高裁の判決 ==
最高裁判所([[1988年]][[6月1日]]判決 、民集42巻5号277頁、判例時報1277号34頁、判例タイムズ669号66頁も参照のこと)は、下級審の判決を破棄し原告敗訴の判決を下した。
 
多数意見によれば合祀のための申請行為の共同性に対しては、地連職員の行為は事務的な協力であり、直接合祀を働きかけた事実はないとして、合祀申請は県隊友会による単独行為であるとした。そのため地連職員の行為は宗教的活動には当たらないとした。よって合祀申請しても公務員である自衛隊職員(国家)は関係ないから政教分離の問題にはならない。また精神的苦痛に対しては、自己の信仰生活が害されたことによる不快感に対して損害賠償などを認めることは、かえって相手方の信教の自由を害することになるとして、強制的に信教の自由が妨害されないかぎり、(訴外の山口県護国神社に対して)寛容であるべきである。以上のことから原告の信仰生活を送る利益を法的利益として直ちには認められないとして敗訴判決を出した。
 
なお、最高裁裁判官15名のうち[[伊藤正己]]裁判官が「司法が精神的自由を考える場合は少数者保護の視点が必要であり、宗教上の心の静穏を要求することも法的保護に値する。自衛隊の行為は違憲」とする反対意見を表明したほか、裁判官63が、結論としては法廷意見に賛成するが、地連職員の行為は行き過ぎないし憲法違反であるとする補足意見を付ける合議割れとなった。
 
== 判決への批判 ==
判決では法律審を原則とする最高裁が、下級審の行った事実認定を覆し、事件の本質は[[権利能力なき社団]]である県隊友会と原告との私人間の争いとされ、自衛隊地連職員(国家)は関係ないと認定している。このように最高裁が事実認定を覆すほどの証拠が新たに法廷に提示されたわけでもないのに事実関係を変更するのは異例である。また訴訟に参加していない山口県護国神社の宗教活動に理解を求めるが、訴外の第三者に対して何らかの対応を求めるのも異例である。そのため判決に対し批判的な意見も少なくない。
 
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* 憲法教育研究会編『それぞれの人権』[[法律文化社]] [[1996年]]
* [[赤坂正浩]]「信教の自由・政教分離の原則と自衛官の合祀」高橋和之・長谷部恭男・石川健治編『憲法判例百選I 第5版[[有斐閣]] 100頁~101、2007年)98
* [[高森明勅]]編『日本人なら知っておきたい靖國問題』[[青林堂]]
== 外部リンク ==
*[http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=01&hanreiNo=25944&hanreiKbn=01 最高裁判所HPの当該判決文]