「フォトマスク」の版間の差分
削除された内容 追加された内容
m ロボットによる 追加: simple:Photomask |
2008年の現状追加など。全体に編集。 |
||
1行目:
'''フォトマスク'''とは、
[[半導体素子]]、[[フラットパネルディスプレイ]]、[[プリント基板]]といった電子部品の製造工程で数枚から数十枚のフォトマスクが使用され、露光工程で1枚ごとに[[フォトレジスト]]と呼ばれる感光性材料の光を当てられた箇所だけが固着することで保護され、その後の[[エッチング]]工程と呼ばれる溶解処理で除去される部分と残される部分が作り分けられる。
== 概要 ==▼
フォトマスクは製造しようとする素子の各層毎に作られる。そのため、素子の構造が複雑になればそれだけフォトマスクの枚数は増加する。▼
製造には[[レーザー]]描画装置、[[電子ビーム露光装置]]等が用いられる。一般に前者はスループットに優れ、後者は解像度で勝る。▼
== 製造工程での使用法 ==
半導体製造工程では[[ステッパー]]によりウェハー上を移動しながら露光され複数個の素子のパターンが転写される。ダイの大きさに応じて、2x2や3x3個分のパターンをマスク上に描画しておき、1ショットで転写できる素子数を増やすことで生産性を向上させている。▼
フォトマスクに使う基板には、[[石英ガラス]]上に[[クロム]]で描画図形が描かれるものが多いが、用途によってはエマルジョンマスクと呼ばれる柔軟性のある透明な高分子フィルム上に図形が描かれるものもある。
露光は1:1サイズであったが集積度の向上により、4~5倍のサイズで作られたマスクを縮小露光することが多くなった。▼
半導体とフラットパネルディスプレイ、プリント基板ではフォトマスクを使った製造工程が多少異なる。
=== 半導体 ===
▲半導体製造工程では[[ステッパー]]によりウェハ
半導体製造工程で一般的に用いられる、ステッパー、スキャナーと呼ばれる縮小露光装置では、フォトマスクをレチクルと称することが多く、半導体系技術者の間では「レチクル」が正式名称であるかのように用いられるが、液晶ディスプレイなどの製造工程で用いられるものはフォトマスク、ないし単にマスクと呼ばれることが多い。
単に[[露光]]光が透過「する
また、特に液晶ディスプレイの製造において、フォトリソグラフィ工程の削減のため、露光量の部分的な制御のために半透過部を持たせたマスクも存在する。半導体製造と比較して低い解像度を逆に生かして、微細パターンをぼかして半透過部を作るものや、任意の透過率を持った膜をさらに積層、パターニングすることにより半透過部を形成するものが用いられる。前者をグレートーンマスク、スリットマスクといった名称で呼び、後者をスタックドレイヤーマスク、ハーフトーンマスクといった名称で呼ぶ。また、特許明細などでは、両者を包含してグレートーンマスクと称する例も見られる。▼
フラットパネルディスプレイ用でもフォトマスクは、製造しようとする素子の各積層ごとや加工処理ごとに1枚ずつ必要となる。そのため、ディスプレイ素子の構造が複雑になればそれだけフォトマスクの枚数は増加する。
▲
== 半導体の微細化とマスク価格の高騰 ==▼
近年の半導体の微細化に伴い、マスク作成の技術も高い精度が求められ、同時にマスク作成のコストも増大している。▼
一般に一種類のチップを作るのに必要なレチクルの枚数は数十枚で、2004年の情報によれば、0.18umプロセスのマスクセットを製造するのに約3200万円、0.13umで約8000万円、90nmで1億8000万円にもなるといわれている[1]。1990年代の0.5umのマスクセットで数百万円オーダーだったのに比べ、指数関数的に増大している。今後の65nmやそれ以降のプロセスではさらに増大することが予想される。▼
=== プリント基板 ===
また、コストの増大を避ける1つの方法として、1セットのマスクセットに、複数のチップを同時に載せ、コストを分担する方法もある。1ショットに複数の異なるチップが転写されるため、周期的な模様からピザマスクと呼ばれる。▼
プリント基板では高度に微細な加工は求められず、また、各層では銅層を除去、又は積層するだけの単純なプロセスであるため、フォトマスクは他のものと比べれば簡単であり枚数も少ない。
ビアやスルーホールはドリルで空けることが多いが、導通加工処理はフォトマスクを使ったプロセスが使われる。
== 問題点 ==
=== 半導体 ===
▲
▲
▲== フラットパネルディスプレイの大型化とマスク価格の高騰 ==
半導体に次ぐ市場規模を持つフラットパネルディスプレイ用マスクでは、半導体とは状況が異なり微細化についての進歩は殆ど見られず、基板サイズでラインの世代を分類するGx(Generation-x)で表現すると、携帯電話用などの中小型パネルを生産するG3~G4あたりの古い(基板の小さい)世代でも、マザーガラスの一辺が2mを超える最新のG8ラインでも、露光機の解像度の指標の一つである[[開口数]](NA)は殆ど変わらない。代わりに、極端なパネルの大型化とそれによる各種装置、部材の大型化が進んでおり、パネルメーカーや装置、部材メーカーの技術開発のエネルギーの大半は大型化に注がれている。▼
フォトマスクも当然大型化が進んでおり、半導体で使用する5インチ、6インチの正方形とは比較にならないほどの大きさとなっている。G5で520mm×800mm、G6では800mmx920mm、最新のG8では1220mm×1400mmと各辺共に1mを超えるサイズとなってきている。また、液晶を形成するガラスと異なり露光機内で基板周辺のみで保持されるフォトマスクでは、たわみを低減させるために板厚が非常に厚くなっており、G8世代では13mmに達する。結果マスク重量は50kg程度の重さとなり、装置内保持機構のほかマスクの搬送等にも専用の設備が必要な状況となっている。また、G10世代ではさらに大型化し、短辺が1600~1800mm、長辺では2000mmに達しようかという状況である。板厚は20mmを超え、G8世代の3~4倍の重量が予想される。▼
現在G8世代のマスクフォトマスクの価格は1枚あたり数千万円する。一般にTFTアレイ側の加工で4~6枚、カラーフィルター側の加工で5~6枚程度のマスクが必要であり、半導体用フォトマスク同様ここでもセットレベルでのマスクコストの高騰がいわれている。ただし、フォトマスクは加工原版であり、そのマスクにより生産されるパネル数が増えれば、長期的に見ればコストインパクトは低下していく。マザーガラスのように一貫で大量生産せず、そのパネルの回路設計によってデザインされる一点物であり、スケールメリットが出しにくい商材であること、パネルメーカーと比較してマスクメーカーの規模がやや小さく大規模投資が望みにくいことを考慮すると、コストダウンのしにくい部材であるといえるかもしれない。▼
1990年代後半から一般化した、干渉を利用したフォトマスク上の工夫によって露光波長より微細な回路配線を作り込む技術では、フォトマスクの検査に今では1台35-40億円もの検査装置が必要となり、この検査だけでフォトマスクのコストの40%近くも占めるようになっている。
== 主なメーカー ==▼
今後の22nm世代では、波長を12.5nmの極端紫外線(extreme UV, EUV)で露光する技術や、フォトマスクを使用せず、1万本以上の多数の電子ビームを並列的にウエハ上に照射して回路パターンを描画する技術などの使用が研究されている<ref name = "フォトマスク">木村雅秀著 『フォトマスク』 日経エレクトロニクス 日経BP社 2008年11月17日号 37頁 </ref>。
=== フラットパネルディスプレイ ===
==== 大型化と価格の高騰 ====
▲半導体に次ぐ市場規模を持つフラットパネルディスプレイ(FPD)用のフォトマスクでは、半導体とは状況が異なり微細化
▲フォトマスクも
▲現在、G8世代のマスクフォトマスクの価格は1枚あたり数千万円する。一般にTFTアレイ側の加工で
▲== 主なメーカー ==
* [[大日本印刷]]
* [[凸版印刷]]
40 ⟶ 56行目:
* [[SKエレクトロニクス]]
* [[ミタニマイクロニクス]]
<references />
== 関連項目 ==
46 ⟶ 65行目:
== 外部リンク ==
# http://www.cqpub.co.jp/interface/column/tony/2004/200405.htm
{{tech-stub}}
|