「接ベクトル空間」の版間の差分

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== 概要 ==
接ベクトル空間は、多様体上の点ごとに定義されるベクトル空間である。接ベクトル空間の元を接ベクトルという。全ての点で接ベクトルが定まっていると[[ベクトル場]]というものが定義できる。ベクトル場は多様体の形を調べたり、多様体上の粒子の運動を調べたりするのに非常に役立つ概念である。[[物理学]]でいえば[[電磁場]]であったり[[重力場]]などを記述でき、そのベクトル場の中に置かれた粒子はその点での接ベクトルの向いている方向に沿って移動していく。本項目で扱うのは、そのベクトル場の基礎となるある 1 点の上の接ベクトル空間である。
 
1 &le; ''r'' &ltle; &infin; とする。 ''m'' 次元 ''C''<sup>''r''</sup> 級多様体 ''M'' と、その中の ''C''<sup>''r''</sup> 級曲線
: &phi; :(&minus; &epsilon;, &epsilon;) &rarr; ''M''
を考え &phi;(0) = ''p'' &isin; ''M'' とする。
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ところで ''f''(''x''<sub>1</sub>(''t''),&hellip;,''x''<sub>''m''</sub>(''t'')) という表示にして ''t'' で微分してみれば、多変数関数の合成関数の微分 として[[偏微分|連鎖律の公式]]から
:<math>\frac{d}{dt} f \circ \phi(0) = \frac{\partial f}{\partial x_1} \frac{dx_1}{dt}(0) + \frac{\partial f}{\partial x_2} \frac{dx_2}{dt}(0) + \cdots + \frac{\partial f}{\partial x_n} \frac{dx_n}{dt}(0) </math>
となる。
 
先程の速度ベクトルの式と比べてみるとこれは、速度ベクトルと ''f'' の[[勾配]]
:<math>\frac{df}{dx} = \left( \frac{\partial f}{\partial x_1}(p), \frac{\partial f}{\partial x_2}(p), \cdots , \frac{\partial f}{\partial x_m}(p) \right)</math>
の[[内積]]と見ることができる。
 
つまり、速度ベクトルと ''f'' の勾配を組み合わせることによって、局所座標系に依存しないものが得られることになる。ここで、 ''f'' は ''M'' 上の ''C''<sup>''r''</sup> 級関数であり、定数関数かもしれないし、 ''x''<sub>1</sub> だけを変数にとるといったような必ずしも多様体 ''M'' の性質を反映しない関数かもしれないということを考えると先程の式は
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:<math>\left( \frac{\partial }{\partial x_i }\right)_p = \sum_{j=1}^m \frac{\partial y_j}{\partial x_i }(p) \left( \frac{\partial }{\partial y_j }\right)_p </math>
を用いれば、接ベクトルは
:<math>\sum_{i=1}^m a_i \left(\frac{\partial }{\partial x_i}\right)_p
= \sum_{i=1}^m a_i \left\{
\sum_{j=1}^m \frac{\partial y_j}{\partial x_i }(p) \left( \frac{\partial }{\partial y_j }\right)_p \right\}
= \sum_{j=1}^m \left\{ \sum_{i=1}^m a_i \frac{\partial y_j}{\partial x_i }(p) \right\} \left( \frac{\partial }{\partial y_j }\right)_p
</math>
という計算によって
:<math>\sum_{i=1}^m b_i \left( \frac{\partial }{\partial y_i }\right)_p </math>
:(ただし ''b''<sub>''i''</sub> &isin; '''R''' (1 &le; ''i'' &le; ''m'') )
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</math>
 
は[[関数行列]](ヤコビ行列)である。それぞれの接ベクトルは ''p'' や ''q'' の周辺の様子を表しているが、 ''p'' の周辺が ''f'' によってどのように ''q'' の周辺にうつされているのか?を表現しているのが、この関数行列 ''J''<sub>''f''</sub>である。
 
こうして
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という対応ができ、この (''df'')<sub>''p''</sub> を
:''f'' : ''M'' &rarr; ''N''
の ''p'' における'''微分'''という。つまり、微分というのは接ベクトル空間から接ベクトル空間への線型写像のことであり、微分を用いることによって写像は局所的には[[線型代数学]]的な扱いが可能になる。
 
== 写像の階数 ==
(''df'')<sub>''p''</sub> の行列としての表示 ''J''<sub>''f''</sub> の[[行列の階数|階数]]を ''f'' の ''p'' における'''階数'''(''rank'') といい、 ''rank''<sub>''p''</sub>(''f'') と書くと
:''rank''<sub>''p''</sub>(''f'') &le; ''min''(''a'',''b'')
である。