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'''匿名組合'''(とくめいくみあい; 独 stille Gesellschaft; 仏 société en participation)とは、当事者の一方(匿名組合員)が相手方(営業者)の[[営業]]のために[[出資]]をなし、その営業より生じる[[利益]]の分配を受けることを約束する[[契約]]形態をいう。つまり、営業者が匿名組合員から集めた財産を運用して利益をあげ、これを分配するのが匿名組合契約である。日本においては[[b:商法第535条|商法第535条]]に規定されている。実務上は'''TK'''とも呼ばれる。
*[[商法]]について以下では、条数のみ記載する。
 
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[[組合]]という名称にも関わらず匿名組合は団体ではなく、法的には営業者の単独企業である。匿名組合員の出資は[[営業者]]の財産になり([[b:商法第536条|536条]]1項)、匿名組合員は営業者の行為について第三者に対して権利義務を有しない(同条2項、なお[[b:民法第675条|民法675条]]と対照)。その反面として、匿名組合員がその氏若しくは氏名を営業者の商号中に用い、又はその商号を営業者の商号として用いることを許諾したときは、その使用以後に生じた債務について、営業者と連帯して履行する責任を負う([[b:商法第537条|537条]])。
 
こうしたことから、匿名組合員は、営業者の行為に関する権利義務関係の'''名'''宛人とならず、一般には当該営業に関する取引相手に対して'''名'''前が顕れないので、「匿名」と呼ばれるわけである。<br>
 
また、匿名組合契約に基づく損益は、匿名組合員に全て分配することが出来るため(ただし、損失分配時は税務上は出資額を限度とする))。そのため、導管体として利用価値が高く、しばしば[[特別目的会社]](SPC(SPC)と投資家との間において利用されることがある。(この場合、SPCを営業者、投資家を匿名組合員とする))。
 
==匿名組合の起源==
匿名組合は中世イタリアにおける地中海貿易で活用されたコンメンダ(commenda)(commenda)に由来する。同じく[[合資会社]]もコンメンダから発展したものである。コンメンダの中でも貴族や聖職者のようにその身分から営利行為に関わることを良しとはされなかった人々が出資関係を秘匿しつつ利益を上げるという需要に応えて発展したのが匿名組合であり、出資関係の秘匿を必要としないコンメンダが合資会社へと発展した。
 
== 商法における匿名組合 ==
=== 匿名組合の成立 ===
匿名組合は営業者と匿名組合員との匿名組合契約によって成立する。
 
=== 匿名組合の効力 ===
*対内的効力
**出資義務
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**匿名組合員は、営業者の行為について、第三者に対して権利義務を有しない([[b:商法第536条|商法第536条]]4項)。
**自己の氏名等の使用を許諾した匿名組合員は、氏名等の使用以後に生じた債務については営業者と連帯して責任を負う。([[b:商法第537条|商法第537条]])。
 
=== 匿名組合の終了 ===
*匿名組合の終了原因([[b:商法第539条|商法第539条]]1項・[[b:商法第540条|商法第540条]])
*出資価額返還請求権([[b:商法第541条|商法第541条]])
 
==特定債権等に係る事業の規制に関する法律における匿名組合==
[[特定債権等に係る事業の規制に関する法律]](1992(1992年6月5日法律第77号)の第2条第4項第2号イでは、この法律に従って「特定債権等譲受業」を行うべき事業体のプロトタイプとして、匿名組合契約を次のように定義している。
 
「当事者の一方が相手方の営業のために出資を行い、相手方が営業としてその出資された財産を特定債権等の取得及び行使(特定物品にあっては、その譲渡又は賃貸をいう。以下同じ。)により運用し、当該運用から生ずる利益の分配及び当該出資の価額(当該出資が損失によって減少した場合にあっては、その残額)の返還(以下「利益の分配等」という。)を行うことを約する契約」
 
==不動産特定共同事業法における匿名組合==
[[不動産特定共同事業法]](1994(1994年6月29日法律第77号)の第2条第3項第2号では、「不動産特定共同事業契約」の一類型として、匿名組合契約を次のとおり規定している。
 
「当事者の一方が相手方の行う不動産取引のため出資を行い、相手方がその出資された財産により不動産取引を営み、当該不動産取引から生ずる利益の分配を行うことを約する契約」
 
==ファイナンス・スキームの一部としての活用例==
匿名組合は、その性質上、特定の事業に関して出資者に[[エクイティ]]・ホルダーとしての地位を与えるために用いることができ、また、パス・スルー課税であることから、[[資産流動化]]などのスキームにおいて、[[特別目的会社]]が[[劣後]]投資家との間で匿名組合契約を締結して出資を得ることが多く見られる。映画の撮影資金、[[アイドルタレント]]のデビュー資金を匿名組合で集めるなど、ユニークな事例もある。その中でも注目すべきは、本来大規模な資金を必要とするクリーンエネルギー設備資金を、一般市民からの[[匿名組合]]出資で薄く広く集める「風力発電ファンド」「太陽光発電ファンド」であろう。風力発電については北海道で、[[太陽光]]発電については[[長野県]]で、それぞれ匿名組合出資の実例がある。
映画の撮影資金、[[アイドルタレント]]のデビュー資金を匿名組合で集めるなど、ユニークな事例もある。その中でも注目すべきは、本来大規模な資金を必要とするクリーンエネルギー設備資金を、一般市民からの[[匿名組合]]出資で薄く広く集める「風力発電ファンド」「太陽光発電ファンド」であろう。風力発電については北海道で、[[太陽光]]発電については[[長野県]]で、それぞれ匿名組合出資の実例がある。
 
==租税法と匿名組合==
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==関連項目==
* [[合資会社]]
* [[投資事業有限責任組合]]
 
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