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[[Image:pilin.png|thumb|right|200px|淋菌のピリンの3D構造。PDB 1AY2。このピリンが重合して、IV型線毛をつくる。]]
 
[[細菌]]の細胞外構造体で、[[タンパク質]]が[[重合]]して繊維状となるもので、[[鞭毛]]以外を指す英語ではpilus(pilus(単数形)pili(pili(複数形)、もしくはfimbria(fimbria(単数)fimbriae(fimbriae(複数)ともいう。通常、pilusとfimbriaは区別しないで使用される。線毛は1950年代に[[走査型電子顕微鏡]]観察によって発見されたが、2つの研究グループがこれらの名称を別々に用いたことが、現代まで続いている。
 
線毛の主要なサブユニットタンパク質はピリン(pilin)またはフィンブリリン(fimbrillin)という(フィンブリンとは異なる)。性線毛(sex pili)クラスI型線毛、IV型線毛など多数の種類が知られており、一つの細胞が複数種の線毛をもつことも多い。線毛は、細菌の鞭毛(らせん型の剛体で、根元で回転して推進力を与える)とは本質的に異なるが、その構造やはたらきは多種多様である。[[真核生物]]の[[繊毛]]ともまったく異なる。また、医学用語では、この繊毛を「線毛」と呼ぶので注意が必要である
 
==性線毛==
性線毛は細菌間の[[接合]]において[[DNA]]を送り込む装置として細胞間を連結する.F。F[[プラスミド]]がつくるF線毛は長さ2-20 µm、幅8 nmで、中心には約2nm2 nmの空隙がある。通常、接合を起こす[[プラスミド]]に存在する[[遺伝子]]からつくられる。接合の相手は、同種の細菌が多いが、別種の細菌、真核細胞の場合もあり、遺伝子の水平移動を起こす主因となる。Rプラスミドによる薬剤耐性遺伝子群の水平移動や[[アグロバクテリウム]]''Agrobacterium''の線毛(T線毛ともいう)による植物細胞の[[形質転換]]は有名である。性線毛はIV型分泌装置によってつくられる。
 
==クラスI型線毛==
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IV型線毛は病原性の淋菌や緑膿菌、大腸菌だけでなく、粘液細菌(''Myxococcus'')、シアノバクテリアなどにもあり、[[グラム陰性菌]]に広く分布する。役割としては,付着や宿主への感染にはたらくもの、twitching運動やDNAの取込みにはたらくものがある。構造としては、細胞膜から生じ、外膜を貫通して、細胞外へ伸びた毛であり、長さ約2-10 µm、径約7 nmで、内部は中空にはなっていない。線毛全体はフレキシブルで、先端は付着性である。II型分泌装置によって形成され、PilTと呼ぶATPアーゼによって線毛は細胞膜内に引き込まれる。
 
[[淋菌]]''Neisseria gonorrhoeae''や[[緑膿菌]]''Pseudomonas aeruginosa''では、IV型線毛は宿主への感染、twitching運動などにはたらいている。粘液細菌''Myxococcus xanthus''では[[滑走運動]]を起こしている。twitching運動する[[シアノバクテリア]]''Synechocystis''にも同様の線毛があり、その運動やDNAの取込みに必須である。線毛の先端は周囲の物体に付着し、線毛の根元が細胞内に引き込まれることで、細胞が周囲の物体に引き寄せられるという。このため、線毛による運動は物体表面でのみ起きる。この点では、鞭毛による遊泳運動とは本質的に異なる運動である。[[DNA]]などを細胞内に取り込むときも、この線毛の引き込み運動が利用されるという。なお、twitching運動は、進行方向や運動速度が頻繁に変化する特徴をもつ。
 
粘液細菌''Myxococcus xanthus''の滑走運動はS運動(social motility)とA運動(adventure motility)が知られている。前者は、柔らかい寒天の表面を細胞集団で移動する運動でIV型線毛がかかわっている。桿状の細胞の一方の末端にのみ数本のIV型線毛を生じていて、となりの細胞のIV型線毛に付着したり、細胞外多糖などに接着し、引き込み運動によって線毛を生じている末端方向へ前進運動する。A運動は、硬い寒天の表面を単独細胞で移動する運動で、そのしくみはまだよくわかっていない。どちらの運動も数分間で向きを180180度変える往復運動であり、進行方向が反転するとき、これまで生じていた末端から線毛は消失し、反対側の末端に新たに線毛が形成される。
 
腸管病原性[[大腸菌]]の桿状細胞の両極に生じるIV型線毛は集まって束状線毛(BFP, bundle-forming pilus)を形成する。これによって小腸の上皮にコロニーを形成する。その主要ピリンはbundlinという。プラスミド上のbfpオペロンにある14個の遺伝子からつくられる。