「ユビキチン」の版間の差分

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[[画像:Ubiquitin cartoon.png|thumb|240px|ユビキチンの構造のリボン図]]
[[Image:Ubiquitin surface.png|thumb|240px|上図の分子表面表示]]
'''ユビキチン''' (ubiquitin) は76個の[[アミノ酸]]からなる[[蛋白質|タンパク質]]で、他のタンパク質の修飾に用いられ、タンパク質分解、[[DNA修復]]、[[翻訳 (生物学)|翻訳]]調節、[[シグナル伝達]]などさまざまな生命現象に関わる。至る所にある ([[ユビキタス|ubiquitous]]) ことからこの名前が付いた。進化的な保存性が高く、すべての[[真核生物]]でほとんど同じアミノ酸配列をもっているが、[[真正細菌]]には存在しない。[[古細菌]]にもユビキチン様タンパクの存在が示唆されている。
 
標的タンパク質に対するユビキチンの付加はユビキチンシステムと呼ばれ、3つの酵素、ユビキチン活性化酵素 (E1)、ユビキチン結合酵素 (E2)、さらに'''ユビキチン転移酵素(ユビキチンリガーゼ)''' (E3) によって行われる。標的タンパクのリシンの側鎖のアミノ基 (−NH<sub>2</sub>) とユビキチンのC末端がアミド結合することでひとつめのユビキチンが付加され、更にそのユビキチンの中の[[リシン () ]]の側鎖に更に次のユビキチンが付加する、といった具合に複数のユビキチンが次々と付加されることがわかっている。ユビキチンにはK6, K11, K29, K48, K63の[[リシン]]残基が存在するがそれぞれ役割が異なり、蛋白タンパク質の分解に関与するリシン残基はK48である。ユビキチンリガーゼは基質タンパク質のdegronと呼ばれる配列を認識して結合する。Degronの認識にはタンパク質の[[翻訳後修飾]](リン酸化、水酸化、脱アセチル化等)が重要な役割を果たす場合があり、また、どのような修飾がユビキチン化に関与するかはそれぞれの基質によって異なる。例としてレセプターにはリン酸化が、HIF-1αには水酸化がそれぞれ選択的ユビキチン化に必要である。ポリユビキチン化されたタンパク質は[[プロテアソーム]]と呼ばれる巨大な[[酵素]]複合体の[[プロテアーゼ]]によって分解される(ユビキチン-プロテアソームシステム)。また、一度標的タンパク質に結合してプロテアソームに取り込まれたユビキチンは、脱ユビキチン化酵素(DUB)によって基質から除去され、再利用される。また[[シグナル伝達]]や[[クロマチン]]の修飾にも用いられる。
 
ユビキチン化は[[フォールディング]]が異常なタンパク質(ミスフォールドタンパク質や不要になったタンパク質を[[細胞]]から除去するためにも重要な役割を持っており、このシステムをタンパク質の品質管理と呼ぶ。新生タンパク質の約30%がミスフォールディングタンパク質であると言われており、まずはじめにこれらのタンパク質をhsp90等の[[シャペロン|分子シャペロン]]が修復しようと試みる。修復が不可能なほどタンパク質の構造がひどく壊れていたときには小胞体から細胞質に輸送され、分子シャペロンによって品質管理ユビキチンリガーゼとして働く C-terminus of Hsc-70-interacting protein (CHIP) などへと運ばれた後にユビキチン化を受け、分解される。これらの機構を小胞体関連分解(Endoplasmic Reticulum(ER)-associated degradation; ERAD)と呼ぶ。
 
近年、ユビキチン-プロテアソーム系は[[MHC class I]]分子を介した細胞内由来タンパク質のCD8陽性T細胞への提示にも関与していることが明らかとなっている。抗原提示細胞の細胞質中にある、または細胞質中に取り込まれたタンパク質(ペプチド)はユビキチン-プロテアソーム系により短いペプチド断片へと分解された後に、[[小胞体]](ER)上のTAPを介してER内にとりこまれ、ER内の[[MHC class I]]分子と会合し、細胞表面に輸送されてT細胞エピトープとして提示される。