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[[人工衛星]]'''ニンバス'''(The Nimbus satellites)は、[[気象学]]の研究に用いられた[[アメリカ合衆国]]の第二世代無人観測機。ニンバスシリーズは安定的な地球観測のプラットフォームとして設計され、[[大気科学]]分野のデータを観測・収集するための先進的な観測装置の試験をその目的としていた。これまでにニンバス7号までの人工衛星が北極と南極の上空を結ぶ極軌道である[[太陽同期軌道]]上に打ち上げられている。シリーズの最初であるニンバス1号は[[1964年]][[8月28日]]に打ち上げられた。人工衛星ニンバスには、様々な領域の研究のための多様な観測装置が搭載された。
 
最初の打ち上げから20年以上に渡って、ニンバスシリーズはアメリカ合衆国の地球[[リモートセンシング]]技術の研究開発において主導的な役割を担っていた。7機の人工衛星は14年間に渡って打ち上げられ、延べ30年もの間、宇宙からの観測データを提供し続けた。人工衛星ニンバスによって試験され、研鑽された技術は、観測装置の運用のために[[NASA]]から[[アメリカ海洋大気圏局|NOAA]]に引継がれていた。ニンバスシリーズによって得られた知見は、過去30年の間にNASAとNOAAによって打ち上げられたほとんどの地球観測衛星に受け継がれている。
 
==貢献==
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===地球のエネルギー収支===
人工衛星ニンバスの最も重要な科学的貢献のひとつは、[[地球のエネルギー収支]]の測定である。史上初めて、全球規模で太陽放射エネルギーと地球圏の熱放射エネルギーの量を直接観測できるようになった。この知見は、初期の気候モデルの検証と改善を手助けし、現在においても[[気候変動]]の研究に重要な役割を果たしている。科学者達が[[地球温暖化]]の原因を探るにあたり、人工衛星ニンバスによってもたらされたエネルギー収支のデータが、長時間軸の分析と気温変位検出の研究を可能にした。人工衛星ニンバスに用いられた技術は、NASAの観測衛星[[Terra]]、[[Aqua_(人工衛星)|Aqua]]に搭載されている[[雲及び地球放射エネルギー観測装置(CERES)]](CERES)の向上に役立った。
 
===オゾン層===
人工衛星ニンバスが地球の[[オゾン層]]の観測を始める以前から、オゾン層の生成と破壊に関するメカニズムはある程度理解されていた。オゾン層の生成に関してはよく知られており、一方で地上での実験から[[ハロゲン]]が[[オゾン]]を破壊することも知られていた。[[ラジオゾンデ|観測気球]]によって成層圏オゾン濃度の時系列的な変化が明らかになり、気象現象か季節変動によるものとされた。しかし、こうしたオゾン層に対する個々の知見がどのように全球規模で結びついているかは、わかっていなかった。
科学者たちはNASAの航空機による実験を行い、[[冷蔵庫]]や[[スプレー]]由来の[[フロン類]]のような化合物がオゾン層を破壊していることを証明した。ニンバス7号の観測が1978年から1994年にかけて行われると、そうしたフロン類が毎年冬に[[南極]]に出現する[[オゾンホール]]を生成していることが明らかになってきた。さらに、その年によって差異はあるものの、オゾンホールが年々拡大していることもわかった。人工衛星ニンバスによる観測はオゾンホールのメカニズムを明らかにしたのである。
 
===海氷===
[[1972年]]のニンバス5号打ち上げ時には、[[放射計|マイクロ波放射計]]を用いて、全地域の降雨量を調査することが計画されていた。一方で、打ち上げの数ヵ月後には観測装置の新たな優先項目が立ち上がってきた。全球的な[[海氷]]分布(海氷密接度分布)の作成である。ニンバス7号が打ち上げられた[[1978年]]には、技術の発展により、形成して1年の新しい海氷と他の古い海氷とを分類することができるようになっていた。ニンバス7号の9年にわたる観測の結果、今日の科学者達が気候変動研究に用いている地球の海氷分布の長期的な記録が得られた。
 
ニンバスシリーズが明らかにした数々の予期せぬ科学的発見の中に、1974年から1976年の南半球冬季に出現した南極海の大規模疎氷域(海氷が少ない領域)がある。[[ポリニア]]と呼ばれた海氷に覆われない巨大な領域は、1974年から1976年の3年間の間だけ、冬季に南極を囲む海氷の中に出現した。[[ウェッデル海]]に出現したこのポリニアは夏季に海氷が解けると一旦は消滅したが、翌年の冬季には再び出現したのである。この海氷に覆われない海面部分は、水深2500mの海水温にまで影響を及ぼした可能性があり、同様に広く海洋循環に影響を及ぼしたのではないかと考えられている。ウェッデルポリニアは70年代中頃のニンバス7号の発見以来、観測されていない。
 
[[Category:人工衛星|にんはす]]