「眼球運動障害」の版間の差分

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=== 複視で、麻痺側がどちらかを決定する方法 ===
[[複視]]には単眼性複視と両眼性複視がある。単眼性複視とは片目を覆っても消失しない複視であり両眼性複視とは、片目を覆ると消失する複視である。単球性複視では眼鏡、コンタクトレンズ、眼球に問題があると考える。両眼性複視は視線の不一致が原因なので様々な原因疾患を考えなければならない。一般に複視の25%25%が単眼性であり、75%75%が両眼性である。両眼性ならば問診によって鑑別疾患を絞る。
両眼性複視の場合は健側眼では[[中心視野]]でとらえ、麻痺側では周辺視野でとらえるために像が二重になる(斜視の場合は抑制がかかるため二重には見えない)。従って、麻痺側眼の像(仮像)は常に健側眼の像(真像)の外側に生じることになる。診察では複視が生じるどちらの像が消えたかを尋ねる。例えば、右目を遮蔽した時に外側の像が消えれば右眼が麻痺側である(被覆/被覆解除テスト)。麻痺筋の特定での経験則として簡便な方法もある。両眼視で6つ基本方向のどれを見たときに複視が最も酷くなるのか患者に尋ねれば麻痺筋の特定は楽である。さらにMaddoxの記憶法を用いると便利である。これは「異常筋は同名直筋かあるいは正反対の斜筋である」というものである。麻痺筋が推定できれば、[[神経診断学]]に基づき更なる精査を行っていく。
=== 動眼神経麻痺 ===
完全麻痺では、外眼筋麻痺に加えて眼瞼挙筋麻痺による高度の[[眼瞼下垂]]と瞳孔括約筋麻痺による散瞳と対光反射消失を認める。眼球は外転しており、内転、上転、下転が不能である。動眼神経麻痺では、病変部位の診断とともに腫瘍、動脈瘤などの圧迫なのか、炎症、虚血などの非圧迫性病変なのかを診断することが大切となる。動眼神経の最外側はE.W核から出る副交感神経が走行する。従って、外からの圧迫では最初にそれが障害されるため、散瞳が外眼筋麻痺に先行して出現する。一方、炎症、虚血など非圧迫性病変では最外側の副交感神経が最も障害を受けにくく、散瞳を伴わない(瞳孔回避)[[動眼神経麻痺]]を呈することがある([[糖尿病]]、[[ウェルニッケ脳症]]、Tolosa-Hunt症候群など)。機序の推定が済んだら、次に局在診断を行う。病変部位を、中脳、クモ膜下腔、海綿静脈~上眼窩裂の3か所に大別する・鑑別は随伴症状で行う。[[中脳]]では大脳脚の錐体路障害による片麻痺あるいは赤核障害による振戦を対側半身に認める。クモ膜下腔は髄膜刺激症状を伴う。海綿静脈洞周辺では滑車、外転、三叉神経第一枝の障害を伴うことが多い。動眼神経単独の障害では病変部位としては、クモ膜下腔と海綿静脈洞~上眼窩裂の病変を第一に考える。
 
=== 滑車神経麻痺 ===
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=== 外転神経麻痺 ===
[[外転神経麻痺]]では眼球は内転しており、外転が不能である。病変部位は[[動眼神経麻痺]]と同様に、橋、くも膜下腔、海綿静脈洞~上眼窩裂の3ヵ所に大別する。橋病変ではPPRF障害による側方注視障害、[[顔面神経麻痺]]、橋底を通る錐体路障害による片麻痺を伴う。くも膜下腔病変では髄膜刺激症状を伴い、海綿静脈~上眼窩裂の病変では動眼神経、三叉神経第一枝の障害を伴う。外転神経の単独の麻痺ではクモ膜下腔か海綿静脈~上眼窩裂の病変を第一に考える。遠隔部の脳腫瘍が頭蓋内圧亢進で外転神経を頭蓋底に押し付けて麻痺させることもあり、脳腫瘍の偽性局所徴候として有名である。外転神経は走行距離が長いため、頭蓋内圧亢進症で障害されやすいと理解されている。
 
=== 全外眼筋麻痺 ===
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== 注視麻痺 ==
[[File:Vestibulo-ocular reflex EN.svg|thumb|250px|目の協調運動に関わる神経回路]]
両眼視が1側に偏位している[[共同偏視]]では、注視麻痺を考える。注視麻痺には側方注視麻痺と垂直注視麻痺がある。病変部位として、大脳と脳幹の注視中枢あるいは両者を結ぶ神経路を考える。注視麻痺は核上性眼筋麻痺であり、[[眼球頭反射]](人形の眼反射)は陽性で、眼球は正中線を超えて対側に動く。
 
=== 側方注視麻痺 ===
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== 内眼筋について ==
眼球運動障害に瞳孔異常、即ち内眼筋障害が合併することも多いため、纏める。[[瞳孔]]は[[自律神経]]の支配を受ける。交感神経が散瞳を、副交感神経が縮瞳を担う。交感神経の走行は以下の通りである。視床下部に1次ニューロン、第1胸髄の中心灰白質中間外側核に2次ニューロン、上頚部交感神経節(星状神経節)に3次ニューロンがある。3次ニューロンの軸索は内頸動脈周囲に交感神経叢を形成し頭蓋内に入り、その後眼窩に至って瞳孔散大筋と眼瞼板筋を支配する。この経路は対側に交叉せず、その障害は同側に[[ホルネル症候群]]が生じる。副交感神経の瞳孔中枢は中脳上丘の[[エディンガー・ウェストファル核]](EW核)である。その軸索は動眼神経として眼窩に至り、毛様体神経節に終わる。そこから出る短毛様体神経が瞳孔括約筋を支配する。この経路は対光反射の遠心路であり、障害されると対光反射消失と、散瞳が生じる。注意点としては動眼神経(副交感神経)は上眼瞼挙筋、交感神経は瞼板筋を支配しているのでどちらが障害されても眼瞼下垂は生じる。また、眼底検査するときは、薬物で散瞳させてしまうのでこういった瞳孔の検査ができなくなってしまう。眼底鏡を見る前に十分瞳孔は観察しなければならない。
=== 瞳孔反射 ===
[[対光反射]]と[[輻輳調節反射]]がある。対光反射とは、一側瞳孔に光を当てると両側で縮瞳が起きる反射である。これは求心路の視神経からの神経線維が中脳上丘視蓋部を通って両側のE.W核に終わるからである。輻輳調節反射は眼前近くの物を見せると両眼球が内転(輻輳反射)して縮瞳する(調節反射)反射である。この反射の経路は複雑で網膜から光刺激と同様、[[外側膝状体]]を介して[[後頭葉]]、[[視覚野]]に行った後、視蓋前核に行き、動眼神経核とE.W核に入力をする。このように、両反射の経路が異なるため、対光反射では縮瞳がなく、輻輳調節反射では縮瞳が見られることがある。[[アディー瞳孔]]、[[アーガイル・ロバートソン瞳孔]]、動眼神経異所性再生がその例である。EMDとして、対光反射が異常ではない人に対して、輻輳調節反射をみる診断学的価値はない。
=== 瞳孔の異常 ===
大きさ、形、位置の異常がある。大きさの異常には縮瞳、散瞳、瞳孔不同がある。瞳孔不同は正常人の約20%20%にみられ、必ずしも、病的病態ではない。形は正常では正円であるが、楕円(アディー瞳孔)や不整(アーガイル・ロバートソン瞳孔)がある。正常な瞳孔径は加齢とともに減少する。10歳では7mm7mm、30歳で6mm6mm、80歳で4mmである
=== 縮瞳を起こす病態 ===
片側の縮瞳では、交感神経障害による[[ホルネル症候群]]を第一に考える。ホルネル症候群は特有の症状を呈するので診断は容易である。両側性の縮瞳では高齢者、アーガイル・ロバートソン瞳孔、副交感神経刺激作用を有する[[麻薬]]、[[有機リン]]、フェノチアジンなどの中毒でみられる。橋出血では針先瞳孔(pin-point pupil)と呼ばれる両眼の著しい縮瞳が起きる。これは交感神経の一次ニューロン下行路の障害による。
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*問題解決型 救急初期検査 ISBN 4260004638
*神経内科ケーススタディ ISBN 4880024252
*Q&AQ&Aとイラストで学ぶ神経内科 ISBN 4880024635
 
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