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'''映画の著作物'''(えいがのちょさくぶつ)は、主に[[著作権]]保護に関する[[条約]]や[[法律]]における用語であり、著作権の保護対象となる[[著作物]]のうち、劇場映画作品その他動的な映像表現を伴う著作物を、他の一般著作物と区別して言い表すために使用される言葉である。映画の著作物は、その創作過程および流通過程に他の著作物にはない特徴をもつことから、その著作権の性質を規定する特別な条項が、条約および各国の法律にみられる。
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=== 一般原則 ===
著作権法上は一般の劇場用[[映画]]作品を念頭に置いて規定が置かれているものの、これにに加えて[[テレビ番組]]全般、[[アニメ]]、[[ビデオグラム]]、[[コマーシャルメッセージ|CM]]用の[[フィルム]]などがこれに該当する。もっとも、映画それ自体の定義は設けられていない。ただし、映画の著作物には、後述の映画類似の著作物も含まれるので、映画それ自体の定義をする意味に乏しい。ただし、一般の著作物と同様に著作物であるためには創作性が要求されるので、監視のために固定されたビデオカメラなどによって撮影された動画については、創作性のある編集が施されているような事情でもない限り、映画の著作物に該当するか否か以前の問題として、著作物たり得ない。
=== 物への固定 ===
映画の著作物であるためには、物への固定が必要である。したがって、テレビの生放送は、放送と同時に録画されていなければ映画の著作物には該当しない。
=== 映画類似の著作物 ===
著作権法上は、映画の著作物のほか、「映画の効果に類似する視覚的又は視覚的効果を生じさせる方法で表現され、かつ、物に固定されている著作物」を含む(2条3項)。したがって、映画を収録したビデオテープやDVDも映画の著作物として保護される。
これに対し、[[ゲームソフト]]、特に[[ロールプレイングゲーム]]たるソフトについては、操作によりテレビに表示される内容が異なることもあり、前述の固定の要件との関係でも映画類似の著作物であるか否かが問題となり、下級審では判断が分かれていた。しかし、最高裁判例では、映画の著作物であることが肯定され、この点については決着した([http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=02&hanreiNo=25234&hanreiKbn=01 最一判平成14年4月25日民集56巻4号808頁])。
ただし、「三國志III事件」の控訴審においては、画面の大半が静止画像であり、連続的な動きを持った影像はほとんど用いられていなかったことから、「映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる」ものとは認めらず、映画類似の著作物であるとは認められないとした(東京高判平成11年3月18日判例時報1501号79頁)。
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=== 未編集フィルム、未使用フィルムを巡る問題 ===
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== 映画の著作物に特有の規定 ==
=== 著作者 ===
映画の著作物も著作物の一種である以上、「著作物を創作する者」が著作者である(2条1項2号)。しかし、多数の者がその製作に関与しているため、権利関係が錯綜するのを防止する趣旨も含め、法は、「制作、監督、演出、撮影、美術等を担当してその映画の著作物の全体的形成に創作的に寄与した者」に著作者を限定され(16条本文)、[[著作者人格権]]はそのような者に帰属する。具体的には[[映画監督]]等であるが、形式的に監督となっているだけでは著作者とは言えず、創作面において実質的に製作過程を統括することが必要であり、「全体的形成に創作的に寄与」という要件が重要である。
ただし、映画が職務著作(15条)である場合は、映画製作者(2条1項10号)である法人などが著作者となり、監督などが著作者になるわけではない(16条但書)。
また、「その映画の著作物において翻案され、又は複製された小説、脚本、音楽その他の著作物」の著作者は、映画の著作物の原著作物の著作者であり、[[二次的著作物]]たる映画の著作物の著作者ではない。
=== 著作権の帰属 ===
[[著作権]]は、創作と同時に著作者に原始的に帰属するのが原則である(17条1項)が、映画の著作物では、「その著作者が映画製作者に対し当該映画の著作物に参加することを約束しているときは、当該映画製作者」に著作権が帰属する(29条1項)。
これは監督等の著作者が映画の製作に参加しているのだという意思を持って製作に携わる場合であり、大抵の場合にはこれに該当することになろう。映画製作者とは、「映画の著作物の製作に発意と責任を有する者」をいい(2条1項10号)、映画製作のために経済的リスクを負担する者を指す。このように、映画の著作物の著作権は、著作者ではなく原則として映画製作者(映画会社やプロダクション)に帰属するため、財産権たる著作権と人格権たる著作者人格権が、原始的に別個の法人格に帰属する帰結になる。
映画の著作物に限ってこのような規定が設けられている理由としては、
* 映画の製作には多くの人が関わっており、その全員に著作権の行使を認めると、映画の著作物の円滑な利用が困難になるから
* 映画の製作には多大な費用がかかっているため、製作者に著作権を帰属させて権利を行使させ、費用の回収を容易にするべきであるから
などと説明される。
29条1項の規定により著作権が映画製作者に帰属した場合でも、著作者人格権は監督等の著作者に残ることになるが、このとき、映画の公表については同意したものとみなされる(18条2項3号)ため、[[公表権]]は働かない。
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==== 放送用映画 ====
28条2項3項
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=== 頒布権 ===
映画の著作物には、他の著作物と異なり、支分権として頒布権に関する規定が著作権法に設けられている。頒布権とは、有償無償を問わず映画の著作物の複製物を、公衆に譲渡又は貸与、あるいは公衆に提示することを目的として特定人に譲渡又は貸与する権利(26条、2条1項19号)をいう。
これは、映画産業の業界慣行として古くから[[映画館]]に[[映画会社]]が上映用フィルムの譲渡(配給)を行うという商慣習があり、仮に頒布権を認めなければプリントされたフィルムの転売や映画館同士での融通行為が行われてしまうおそれがあるため、上映用フィルム譲渡後においても映画会社がプリントフィルムの中古転売や賃貸等を規制できるようにすることができるよう認められた規定であった。また、映画の著作物は、他の著作物と比較して製作にかかる費用が巨額であり関わる人員も大勢いることから権利保護の要請も高かったことも別途規定が設けられた要因と考えられる。
条文上は、「著作者」が頒布権を有することになっているが、著作者(多くの場合、映画監督)が映画製作者に対し当該映画の製作に参加することを約束しているときは、著作権は映画製作者に帰属するので(29条1項)、著作者たるべき者のほかに映画製作者たるべき者がいる場合は、著作権の支分権たる頒布権を有するのは著作者ではなく、映画製作者となる。また、映画館などにおける上映それ自体は、上映権(22条)の問題であり、頒布権の問題ではない。
なお、映画以外の著作物には、頒布権の制度はないが、これに代わる支分権として[[譲渡権]]が認められている(26条の2)。ただし、後述する頒布権の消尽に関する判例の存在により、公衆に提示することを目的としない複製物については、頒布権と譲渡権の区別は曖昧になっている。
==== 頒布権の消尽 ====
前述のように、頒布権は劇場用映画のフィルムの配給を想定したものである。しかし、映画の著作物には前述の映画類似の著作物も含まれるので、これらの著作物にも形式的には頒布権が認められることになる。しかし、ゲームソフト([[コンピュータゲーム]])の中古販売をめぐって、頒布権を侵害することになるのかが問題とされた。
この点については、固定の要件との関係で映画の著作物であるのか否か、映画の著作物であるとして頒布権が消尽したのかが争点となった。この点について、[http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=02&hanreiNo=25234&hanreiKbn=01 最一判平成14年4月25日民集56巻4号808頁]は、映画の著作物であることを前提に、配給制度という取引実態のある映画の著作物やその複製物については,これらの著作物等を公衆に提示することを目的として譲渡・貸与する権利が消尽しないと解されていたが,著作権法26条は消尽の有無は解釈に委ねられているとして、公衆に提示することを目的としない家庭用テレビゲーム機に用いられる映画の著作物の複製物の譲渡については、当該著作物の複製物を公衆に譲渡する権利は、いったん適法に譲渡されたことにより、その目的を達成したものとして消尽し、もはや著作権の効力は、当該複製物を公衆に再譲渡する行為には及ばないものと解すべきであると判断した。
=== 保護期間 ===
一般の著作物は、原則として著作者の死後50年を経過するまで著作権が存続する(51条2項参照)のに対し、映画の著作物の場合は、公表後70年(その著作物が創作後70年以内に公表されなかったときは、その70年)を経過するまで存続する。
映画においては、「その映画の著作物の全体的形成に創作的に寄与した者」が著作者であるとされる(16条本文)が、監督のほか多数の者が関与することが多いため、過不足なく著作者を確定することが困難である。そのため、著作者の死亡を基準としない扱いにしている。その結果、他の著作物と比較して実質的に[[著作物の保護期間|保護期間]]が短くなる問題があるため、平成15年法律第85号による改正(2004年1月1日[[施行]])により、保護期間が50年から70年に延長された。これにより、1953年に公表された団体名義の独創性を有する映画の著作物について、その保護期間が2003年12月31日で終了するのか、それ以降も存続するのかという解釈問題が生じた(これについては、[[1953年問題]]を参照)。
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* 旧法時の映画の保護期間
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=== ワンチャンス主義 ===
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{{Cquote|
; 著作権法 第91条
# 実演家は、その実演を録音し、又は録画する権利を専有する。
# 前項の規定は、同項に規定する権利を有する者の許諾(第103条において準用する第63条第1項の規定による利用の許諾をいう。以下この節及び次節において同じ。)を得て映画の著作物において録音され、又は録画された実演については、これを録音物(音を専ら影像とともに再生することを目的とするものを除く。)に録音する場合を除き、適用しない。}}
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映画の著作物については通常[[俳優]]・[[歌手]]など多数の実演家が出演・関与するが、各々の実演家が保有する録音・録画権(いわゆる[[著作隣接権]]に該当する)についてもそのままでは多数の権利処理が必要となってしまい、特に映像の二次利用(ビデオソフト化、DVD化、テレビ放映など)の際に障害となってしまう。このため、一旦映画の著作物として録音・録画されたものを二次利用する場合には、各実演家の持つ録音・録画権は適用されないこととすることで、権利処理を簡略化している。なお映画の著作物に対する放送権(第92条2項)、送信可能化権(第92条の2・2項)、譲渡権(第95条の2・2項)に対しても同様の処理が行われる。
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ただしこれに対しては、俳優・歌手など実演家側の業界団体である[[日本芸能実演家団体協議会]](芸団協)などが以前より不満を表明しており、保護期間(現在は実演の翌年から起算して50年。第101条2項)の延長、映像の二次利用に対する報酬請求権を認めるなどの法改正を要望している<ref>[http://internet.watch.impress.co.jp/cda/event/2004/09/21/4702.html 権利強化を求める権利者サイドの声~パネルディスカッション] - Internet Watch・2004年9月21日</ref>。
== 関連項目 ==
* [[1953年問題]]
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{{Law-stub}}
[[Category:著作権法]]
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