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HIw (会話 | 投稿記録)
→‎定義と概論: 返信,前回投稿の署名追加
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(中略)
 それでは先にあげた記憶や感情や思考は,どのようにして客観的に研究されるのか,さいわいにしてわれわれは自分の意識的経験をことばに表現することができる.また,ことばにあらわせないものは表情や動作のなかにそれを読み取ることができる.これらはいずれも〈こころ〉の働きによって生じたものであり,しかも,すべての研究者が共通の対象として取り扱うことができるという意味では客観性を備えている.心理学では,そうした言語的表現,表情,動作をひっくるめて〈'''行動'''(behavior)〉と呼んでいる.心理学はこのような広い意味の行動を研究する学問なのである.さらに詳しくいうと,心理学はどのような条件のもとにどのような行動がおこるのかということ,いわば行動の法則を究明しようとする科学なのである.」末永俊郎「序説」末永俊郎編『新版現代心理学入門』有斐閣 1989年 ISBN 4-641-11050-6 pp.1-2(引用者注:引用元での強調は傍点.)
--[[利用者:HIw|HIw]] 2009年9月28日 (月) 15:10 (UTC)
 
:[[利用者:HIw|HIw]]様、および編集者の皆様お疲れ様です。HIw様がこの度自分の記事を差し戻したことについて、私は異議を申し立てません。むしろ、従来の記事が私が投稿した記事よりより正確かつ優れた記述であったことを確認できたことに満足しています。ただ些細な誤りと気になった点がありますので、その点についてのみ確認することを許して頂ければ幸いです。私は心理学の冒頭の定義として「心を研究対象とする」とは定義しておりません。私は「一般に心理とそれが行動に与える影響を研究する科学である」と定義しております。ちなみに現状の定義である「一般に心と呼ばれるものの様々な働きである心的過程と、それに基づく行動を探求する学問」では「心的過程」という合成語を使用してしまうことで意味するところが不明になっていると思いますが、その議論については別の機会に別の編集者が取り組んでいただきたいと思います。
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:現状の概説で示されている記述に問題を感じていたのが自分だけならば、この項目の記事は既に十分に役割を果たしています。したがって私は異議を申し立てることはしません。あとHIw様が二つの文献を示してくれたお手間に感謝します。教科書をよく読むように助言を頂くほど自分の知的水準が低いことを恥ずかしながら露呈しましたので、恐らくこの項目を編集することはもう二度とないと思いますが、HIw様が示していただいた資料について簡単に応答しておこうと思います。ただ私は偶然にも『新版現代心理学入門』にはよく目を通していました。「こころ」から出発し、心理学の方法論としての行動主義の立場、つまり行動の動機となっている心理ではなく環境に応じてどのような反応が得られたのかを観察するスキナーなどにより実践されてきた心理学の伝統、を概説することは現代心理学の入門書として優れていると思います。今田氏の定義は初めて知りました。彼の定義も行動主義を踏まえた定義の一例として理解しました。これは議論というよりも、HIw様が示して下さった参考資料への御礼です。最後に細かい注意ですが、HIw様は署名することを忘れているようです。ノートでは署名をしていただくようお願い申し上げます。--[[利用者:Kazu 62|Kazu 62]] 2009年9月29日 (火) 00:26 (UTC)
 
お返事が遅れて申しわけありません.またご指摘の前回署名を忘れたのはまったくのうっかりです.大変失礼しました.前回の分にも署名を追加しておきます.
 
さて,現在の概論は概論とも呼べないお粗末なものです.記述内容も心理学を専攻した人ならわかるとしても,心理学をよく知らない人が「心理学とはどういうものか」を知りたくても全くわからないでしょう.ですからKazu 62さんが書かれたような概論が必要だと考えています.上で指摘されている概論の三つの要素もかなり的確だと思いますし,それは投稿された概論を読んでもわかりました.ですから「視点の誤り」で差し戻すのは残念で,再投稿をお願いしたわけです.視点の誤りはちょっとした思い違いであろうと思っていました.ところが上のノートを読むとKazu 62さんは現在の心理学の主要な立場とは異なる立場を信念として取っておられるように思われます.そうなると再投稿をお願いするのは控えるべきで,ますます残念です.今後概論を投稿される方はKazu 62さんの「概論の三つの要素」をぜひ参考にしていただきたいと思います.
 
そこで定義についてですが,導入部の定義「一般に心理とそれが行動に与える影響を研究する科学である。」では心理学の研究対象として「心理」と「それ(心理)が行動に与える影響」の二つが挙げられています.まず後半部分「それ(心理)が行動に与える影響を研究する科学である。」から取り上げると,これは哲学における心の研究の方法,演繹的な方向で,心理学の行動から心的過程を解明する,帰納的な方向とは視点が逆なのです.あるいは上のノートの最後の方にある「行動の動機となっている心理」という句から,「問題行動を起した生徒の,その行動の動機となった心理」のような状況を連想したのですが,そういうことを想定しているのだとすれば,もちろん教育心理学や犯罪心理学などで,そういう問題意識で研究が行われることはあるでしょうし,それを否定するつもりはありません.しかし現在心理学の研究者がおこなっている研究の多くでは,実験や調査を通じて前回引用した末永先生のいう「広い意味の行動」のデータを取り,それを分析して心的過程(例えば色の知覚メカニズムとか記憶の構造とか)を推定するという手続きがとられています.少し私見がはいっているかもしれませんが,現代の心理学はこのように推定された心的過程の総体として心を「理解」しようとしているのではないかと思います.
 
ですから,導入部の定義の前半部分「一般に心理……を研究する科学である。」だけではなく,概論部分で
*「心理学の基礎的な理解のためには'''心理学の研究対象である心'''をどのように捉えることが可能であるかを知る必要がある。」
*「心理学が心という複雑な現象を明らかにする上で」
*「'''心理学は'''直接的に観察することができない'''心を対象とする研究である'''ために、」(以上強調は引用者)
と「心理学が心を研究対象としている」ことを繰返して強調されると,現在の心理学について読者に誤解を与えることになります.あくまでも現在の心理学の主要部分では直接の研究対象は行動で,そこから心的過程を推定しているのです.
 
心理学でも「心理学は心を研究する学問である」という定義がないわけではありません.古いところで[[元良勇次郎]]の「心理学」第1章(『哲學雜誌』第二十一巻第二百二十七號の附録,1906(明治39)年)では「心理學は概して之を云へば心を研究する學に相違なきも(以下略)」とありますし,『新版心理学辞典』(平凡社,1981年)の「心理学」の項目で[[相良守次]]は「心理学は,読んで字のとおり,心の学問あるいは心の理(ことわり)を説く学問であり,(以下略)」としています.しかし,元良は直前の緒言でさまざまな学派の意見を紹介し,また定義につづけて演繹的・哲学的な研究から帰納的な研究への変化を述べています.相良も定義の直後から,ギリシャ時代からの「心理学の沿革」を3ページにわたって説明しています.ただ単に「心理学は心を研究する学問である」として済ませているわけではありません.
 
私は行動主義者ではありません.研究上のスタンスをあえて言えば「情報処理心理学」で,心的過程を情報処理過程と捉えて,その推定には積極的です.末永先生の『現代心理学入門』は「環境への適応」という観点で全体が統一された,通読に耐える教科書です.通読したのは随分以前ですが,特に行動主義的立場で偏っていた印象はありません.今田恵『心理学』も特定の立場に偏らない,1950~60年代の最もスタンダードな教科書だったであろうと推測しています.
 
もっとも,心理学は客観的で科学的な立場を確立するために行動主義の影響を強く受けました.ですから現在の心理学者が中立的だと考えても,行動主義が登場する以前の心理学と比較すれば行動主義的であることは否めません.定義についてもそうです.その事情を[[東洋 (心理学者)|東洋]]先生は『心理学の基礎知識』有斐閣 1970;1978年 ISBN 4-641-08351-7 の1-18 「心理学が行動の科学といわれるのはなぜか」(p.25)で次のように説明しています.
「(前略)そして,直接の研究対象はあくまでも行動であるものの,刺激と行動との,あるいは行動と行動との関係を説明する仮説的構成概念は,それが刺激および反応のことばではっきり定義されている限りは受け入れてよいとする[[新行動主義]]が1930年代から支配的になった.
 1945年以後,アメリカの心理学の影響が世界的に強くなった故もあり,いわゆる新行動主義の立場をとらない研究者も,諸概念の行動のことばでの定義の必要性をみとめる点ではほぼ一致し,心理学の直接の研究対象は人や動物の行動であるという考え方が一般的にうけいれられるようになった.」
 
Wikipediaでは出典の提示が奨励され,また文献で検証できないオリジナルな考えは[[Wikipedia:独自研究は載せない|独自研究]]と呼ばれ,投稿しないことになっています.ですから心理学の定義も概論も特定の立場に偏らない,「一般的にうけいれられ」ている記述を心がけるべきでしょう.しかし現在の心理学は行動主義の影響を受けているわけですから,心理学の専門家が中立的な記述と考えても,Kazu 62さんは行動主義的と思われるかもしれません.
 
最後に気になる点について二つほど質問させてください.
*投稿された概論中での[[ジークムント・フロイト|フロイト]]の記述に私は特に大きな問題は感じませんでしたし,いまどきフロイトに言及しただけで目くじらを立てる心理学者がどれほどいるのか疑問です.それで上記ノート中で「現在の心理学として完全に否定しているフロイトの見解」とされているのは何か根拠または出典があるでしょうか.精神分析の分野に詳しくない者としては判断しかねるのですが,前出『心理学の基礎知識』(p.9)で[[詫摩武俊]]先生は「フロイトの考えが臨床心理学や人格心理学の領域で高く評価され,重要な位置をしめるようになったのは,それほど古いことではないのである.」としています.つまりこれによると,短くても最近30年はフロイトの考えは心理学に受け入れられていることになるのですが,どうでしょうか.
*もうひとつは個人的に興味のある事項なのですが,投稿された概論中では「ヴィルヘルム・ヴントは、実験によって心の複雑な構造を個々の要素に還元することを試みた。」とされています.しかし,[[ヴィルヘルム・ヴント|ヴント]]は実験室を開設した一方で,自身は哲学的傾向を強め,内観法を重視するようになったという趣旨の記述を文献で読んだ記憶があります.そして意識内容を要素に分析することを試みたのは,現在われわれが考えるような心理学的実験ではなく,主に内観法を通じてであったと理解しています.いかがでしょうか.
投稿された記述に根拠や出典があればご教示いただけると幸いです.--[[利用者:HIw|HIw]] 2009年10月2日 (金) 13:58 (UTC)
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