「ダストトレイル」の版間の差分

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 ダストトレイル(ダストチュブ)は、[[流星群]]の理論的な空間分布を考える際、母天体([[彗星]]・[[小惑星]])が特定の近日点通過日付近で、太陽熱の作用で[[流星]]物質を集団で放出したと仮定して、その特定の近日点通過年を冠して、たとえば、「しし座流星群の1899年のダストトレイル」、「しし座流星群1998年近日点回帰時における、3公転前のダストトレイル」(この例では同じ物の言い換え)というふうに、その流星物質の集団の名称として使われる言葉。従って個々は、特定の[[流星]]群の、[[流星]]物質総体のうちの、更に一部分を指している。なおそれは理論的な概念であり、現時点で直接観測された例は無い。
 
 ダストトレイルの語から、個々の[[流星]]物質は、「塵の道」を車のように移動するかの印象を受けるが、実際には流星物質は車ではなく、道路の材料そのものである。「塵で出来た道」に近い。
 
 個々のダストトレイルを形成している[[流星]]物質同士の間に、強力な[[万有引力]]が働いている訳でも無いので、何十公転もしているうちに、流星物質個々の公転周期のわずかな差や、大惑星への接近のしかたの違いで、いずれは煙が拡散するように、それはバックグラウンドに溶け込んでしまうはずである。なお、この場合のバックグラウンドとは、流星群に属さない、[[散在流星]]の事ではなくて、毎年現れる[[流星群]]であれば、平穏な年の平均的な流星群を形成している流星の事である。
 
 以上の事から、個々のダストトレイルの研究は、[[流星群]]が平穏な年よりも活発である状態や、もともと普段の年はほとんど群流星が出現しない弱い[[流星群]]が、突発的に多数出る場合の理論究明に使われる。流星群の活動が特に強い、突発的な1時間程度の時間幅の活動に、観測した時点から見て比較的新しい近日点通過年に形成されたダストトレイルが、関与している場合が多いとされている。
 
 太陽系では太陽引力がずば抜けて大きいため、天体の軌道はほぼ楕円であり、小さな初期速度ベクトルの差では、楕円同士の形や向き、大きさに大差は生じにくい。その事から、かなり前には各ダストトレイルは、母天体から発してその軌道前後に、母天体の軌道にほぼ沿っており、その存在確率は、母天体の軌道から離れるに従って、単調に減少して行くようなモデルがとられていた。このイメージは[[流星群]]の進化の説明として、今でも一般に使用されている。なお平穏な年の[[流星群]]の流星物質の軌道の観測から、その[[流星群]]の母天体の判定をするような場合には、今でもその考えが有効である場合も多い。
 
 しかしダストトレイル自体は実際に挙動を実際に計算してみると、惑星に接近した部分だけが大きく位置を変えるため、個々には、流星群の分布領域の内部で、曲がった細いフィラメント状になっている場合があり相当複雑であった。特に観測時点から見て、新しい近日点通過年のダストトレイルが、普段は幾らか流星を降らす程度の流星群が、[[流星雨]]になる場合に寄与が大きいため、計算をするかしないかで、強い出現の予測の精度が大きく変る場合があった。計算結果と実際の強い出現、[[流星雨]]の挙動を比較した流星観測者達は、今世紀になって、皆そうした状況に大いに驚嘆させられたのである。
 
==関連項目==