「チェロ」の版間の差分

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== 語源 ==
チェロの語は本来は[[イタリア語]]の "{{lang|it|Violoncello}}" に由来する。これは「小さな[[ヴィオローネ]]」("{{lang|it|Violone}}" と接尾辞"{{lang|it|cello}}")という意味である。なお、ヴィオローネは[[コントラバス]]の元になった楽器であり、このヴィオローネという語もまた「大きなヴィオラ」("{{lang|it|Viola}}" と接尾辞"{{lang|it|one}}"。ちなみに現在の[[ヴィオラ]]のことではなく単に弦楽器という意)であるから、"{{lang|it|Violoncello}}" は「小さな大きなヴィオラ」という意味である。これが[[英語]]に[[外来語]]として入ったのちに "{{lang|en|Cello}}" と略され、それが[[日本語]]に入り「チェロ」となった。すなわち、本来「チェロ」とは「小さな」という意味である。
 
== 構造 ==
[[画像:Cello parts.png|256px|frame|left|チェロの各部の名称。[[魂柱]]は内部にある柱であり、およその位置を図示している]]
チェロと同じく[[ヴァイオリン属]]の[[ヴァイオリン]]や[[ヴィオラ]]とほぼ同じ構造である([[コントラバス]]は[[ヴィオール属]]の影響を強く受けているため、チェロなどの他の3つとは多少異なる) ただし、低い音を出すために全体が大きくなっており、特に厚みが増している。弦も素材や基本構造こそ同じものの、太く丈夫に作られており、それに伴って弓もヴァイオリンなどより太いが、長さは逆に短くなって。また、チェロはその大きさと重さゆえにヴァイオリン・ヴィオラのように顎で挟み手に持つことが困難なので、[[エンドピン]]を床に立てて演奏する。エンドピンには[[亜鉛]]の[[合金]]が使用されることが多いが、最近では[[炭素繊維|カーボン]]や[[チタン]]、[[タングステン]]なども使用されている。本体の大きさに比べると[[指板]]はヴァイオリンなどより若干細めである。ヴァイオリン属では低音楽器になるほど胴体と弦の角度が大きいため、ヴァイオリンに比べると[[駒 (弦楽器)|駒]]が高く丈夫に作られている。
 
また受け持つ[[音域]]からすると本来チェロはもっと大型化すべき楽器であるが、演奏が困難になるので現在のサイズとなっている。弦の長さもこれ以上長く出来できないので、巻線を使用するなどで低い音を出すようにしている。正しく調律した状態で4本の弦にかかる張力は、弦のメーカーや銘柄によっても多少異なるが、おおむね同じであり、最も太いC弦も最も細いA弦も ほぼ同じ9〜13kg程度の張力で、楽器全体では40〜50kgの張力となる。コントラバスのように[[ウオームギア]]による巻き取り機構は一般的に備えておらず、バイオリンやヴィオラと同じように木製のペグの摩擦のみだけで弦の張力を支えている。このため、ペグの調整が不完全な状態であると調弦がきわめて調律が困難である。
 
基本的に[[メイプル]]などの木材で製作されるが、[[ドライカーボン]]製のチェロもアメリカでは販売されており、独特の音色と音量でユーザーが増えつつある。非売品としては[[ガラス]]製のチェロも製作されたが日常の演奏に耐えるものではない。
 
== 調弦 ==
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チェロには4本の弦があり、奏者から見て左側、音が最も高い弦から第1弦、第2弦、第3弦、第4弦と番号が振られている。調弦は、第1弦が[[中央ハ]]音のすぐ下のイ音(A3)であり、以下[[音程|完全5度]]ごとに、ニ(D3)、ト(G2)、ハ(C2)となる。このため「C線」「C弦」(それぞれ「ツェーせん」「ツェーげん」と読む。[[音名]]は[[ドイツ語]]読み)など音名で呼ぶことも多い。第4弦のハ音は[[中央ハ]]音の2[[オクターブ]]下の音となる。この調弦は[[ヴァイオリン]]より[[音程|1オクターブと完全5度]]低く、[[ヴィオラ]]より1[[オクターブ]]低い。
 
変則的な調弦([[スコルダトゥーラ]])を用いる楽曲としては[[ヨハン・セバスティアン・バッハ|バッハ]]の「[[無伴奏チェロ組曲]]」や、[[コダーイ・ゾルターン]]の「無伴奏チェロソナタ 作品8」(低い方からB1, F#2, D3, A3と調弦)などがある。バッハの無伴奏チェロ組曲第5番は、第1弦を低めにG3と調弦する。また、第6番は第1弦より高いE4の弦を1本追加した五弦の楽器[[ヴィオロンチェロ・ピッコロ]]用に書かれている。
 
== 記譜法 ==
チェロは基本的に[[音部記号#ヘ音記号|ヘ音記号]]で[[楽譜]]に書かれるが、高音部にはテノール記号([[音部記号#ハ音記号|ハ音記号]])も使われる。さらに[[音部記号#ト音記号|ト音記号]]も稀に使われるが、時代によって意味が異なるので注意が必要である。テノール記号が併用される現代では、ト音記号も実音で記譜する。これに対し、主に19 世紀にはト音記号は声楽の[[テノール]]と同じようにオクターブ下げて読むのが普通であった。
 
== 歴史 ==
今日のスタイルのチェロの形態が確立したのは18世紀末以降のものであり、それまでは各種の形態、演奏法があったと推察されている。[[J.S.バッハ]]と同時代で親戚に当たる[[J.G.ヴァルター]](Walter)の音楽辞典(1732)には「チェロはイタリアの低音楽器で、ヴァイオリンのように演奏された。即ち部分的に左手で支えられた」と記されている。また、[[レオポルト・モーツァルト]]の「ヴァイオリン奏法」(1756)では、「かつては五弦であったが今は四弦しかない」「この頃は脚の間に挟んでささえられる」と記されており、[[ヴァイオリン]]のような奏法であったこと、ヴィオロン・チェロ・ピッコロや[[ヴィオラ・ポンポーザ]]のような楽器も広くチェロという楽器であったことが推察される。実際に当時の絵画や彫刻に記されたチェロと思しき楽器を肩の上または胸に当てて演奏する姿が知られている。近年、このタイプのチェロ(ヴィオロンチェロ・ダ・スパッラ=肩かけチェロ)の復元演奏が主に[[バロック・ヴァイオリン]]奏者の手によって行われている (外部リンク参照) 。1800年頃を境に音量が求められるようになって、楽器の構造や仕様に手が加えられた。この改造後の現代仕様のチェロのことを'''モダン・チェロ'''、歴史的楽器で改造を受けていないものを'''バロック・チェロ'''と言って区別することがある。バロック・チェロにはエンドピンがく、通常5弦のことが多い。
 
まれに[[ヴィオラ・ダ・ガンバ]]を「チェロの祖先」などと表現することあるが、[[ヴィオール属]]と[[ヴァイオリン属]]は直接的な祖先・子孫という関係にはたらないため、誤りである。
 
== 演奏法 ==
[[Image:Auditorio1.jpg|thumb|right|240px|[[ピアノ三重奏]]。右端がチェロ]]
演奏法については楽器の構え方が大きく異なったりポジションのシステムが異なっていたりするが、ヴァイオリンと共通する部分が多い。[[ヴァイオリン#演奏のしかた|ヴァイオリンの「演奏のしかた」]]の項を参照されたい。
 
以下に、ヴァイオリンの奏法と大きく異なる点を列挙する。
*楽器は、胴を左右の脚の間に置き、棹(ネック)が奏者から見て顔の左側にるように構える。楽器がずれないようエンドピンの先を床に固定する。
*運指は、低ポジション(指板の上の方を用いる)では人差し指・中指・薬指・小指を用い、各指で押さえる音程の間隔は半音を基本とする(人差し指と中指の間は全音とすることもあり「拡張」と呼ばれる)。高ポジション(指板の下部を用いる)では親指も指板上に乗せて弦を押さえる。
*調弦は、低音域で五度の和音の響きをペグの調整により聞き取り調弦をする。しかし、ペグによる微調整が難しいため、自然[[フラジオレット]]を活用し、隣り合った低い方の弦の第3[[倍音]]と高い方の弦の第2倍音が同音程となるようにアジャスタで調整する方法も多用される。そのため、チェロは全ての弦にアジャスターが組み込まれたテールピースを採用することが多い。なお、ヴァイオリンやヴィオラは隣合う弦の[[重音]]で調弦し、また柔らかく調弦しやすい金属巻きガット弦を用いる奏者が多いので、アジャスタを全ての弦に取り付ける例は少ない。
 
== チェロ奏者(チェリスト) ==