「層位学的研究法」の版間の差分

削除された内容 追加された内容
Chokorin (会話 | 投稿記録)
加筆
Chokorin (会話 | 投稿記録)
加筆
1行目:
'''層位学的研究法'''(そういがくてきけんきゅうほう;stratigraphical method)とは、考古[[遺物]]を含む層([[遺物包含層]])同士の上下関係や[[遺構]]の[[切り合い関係]]、その他付帯する要素によって、遺物の年代の新旧を決定する[[考古学]]の研究方法。もともとは、[[地質学]]から移入された方法であるが、方法論として取り込まれる過程で検証されて[[考古学]]独自のものに発展している。また海外の考古学研究ではこの方法はあまり重視されておらず、世界の考古学研究の中で日本独特の研究法として特筆される。
 
== 概要 ==
[[画像:Kyoto-hakkutu-huukei.jpg|250px|right|thumb|[[京都市]]内の[[発掘調査]]([[江戸時代]]の層の下に[[豊臣秀吉|秀吉]]時代の[[盛土]]層、さらにその下に[[室町時代|室町]]、[[平安時代|平安]]、[[古墳時代|古墳]]、[[弥生時代|弥生]]など各時代の文化層がつづく)]]
 
地質学における「[[地層累重の法則]]」、つまり、より新しい地層はより古い地層の上に重なるという原則をもとにしており、同一地点においては、上層の方が新しい年代を示し、下層の方がより古い年代を示すであろうという前提のもとに、[[遺構]][[遺物]]の新旧関係、[[相対年代]]を考えていこうとする研究である。
 
[[切り合い関係]]とは、遺構相互が重複している場合、たとえば遺構Aが破壊されて遺構Bが営まれているようすが土色や土質の観察によって確認できるのであれば、遺構Bの方が遺構Aよりも年代的に新しいことは明らかであり、これもまた相対年代を把握する手がかりとなる。
 
== 留意点 ==
[[遺跡]]における層位では、明快に区分しうる複数の層が累重する状態は、[[貝塚]]、[[遺丘]]で古い層の遺構を完全かつ平面的に破壊して整地し新しい層の遺構が築かれる場合などに限られる。この場合は、のちの時代に荒らされていない[[遺物包含層]]において、同一地点の下層の遺物は古く、上層の遺物は新しいと判断できる。ただし、この場合も、包含層が堆積する速度は、場所および時代によって異なり、決し均質ではなから、基準地層面からの深さの差はかならずしも年代差を反映せず、浅かったり深かったりすることがある。また、新しい層の古い層への破壊が著しい場合、本来なら新しい順にA、B、Cの文化層があるはずなのが、中間のB層がなくなってしまうことがありうる。
 
そのために、多くの場合、考古学における層位学的方法は、人為的なものや自然の影響によるものを含めて、包含層同士ないしは地層同士の境界もしくは包含層中ないし地層中に認められる面を規準として考えることが多い。言い換えれば、ある遺跡におけるある「面」がその遺跡におけるある時間的位置を決定するものと考えるということである。
15行目:
前述した貝塚や遺丘のような場合、複数の面が垂直的に上下関係にあると考えられるから、それらの面同士、またそれらの面にともなう遺構・遺物同士の間に層位的、時間的な前後関係が確認されると考えることができる。しかし、多くの場合は、古い面を破壊して新しい面や新しい遺構が築かれている場合が多く、面相互の切り合い関係によって、ひとつの面とその上位または下位の層に含まれる遺物との関係についても、層位的=時間的前後関係を認めることができる。
 
しかし、複数の包含層が累重していても、上層に年代的に古い遺物が含まれる場合があったり、人工的に埋められた遺物や長期間地表面に露出していた遺物、また破損しにくいために長期間にわたって使用され続けてきた遺物が包含層に含まれる場合、他の遺物との新旧関係を正しく示さないことがありうる。こういった場合は、時間的前後関係を確認できない。また、遺構が使用または機能していた時期と遺構内に堆積した土に含まれる遺物は、遺構の年代を決定する要素になりえず、遺構の所在する面にからんで遺構が機能した時期に使用された遺物がからんでいる場合に遺構の年代を決定する要素となる。つまり溝や井戸が埋まりかけた途中の層で確認される遺物は、その溝の機能した時期、溝の築かれた時期の面の時間的位置を示さず、[[縄文時代]]の[[竪穴式住居|竪穴住居跡]]の炉や住居の入り口部分に使用された[[土器]]、[[古墳時代]]から[[平安時代]]の竪穴住居跡のカマドに使用された[[土師器]]の[[甕]]などが遺構及び遺構が使用された面、遺構が機能した時代にかかわる遺物ということになる。[[中世]]の墓に使用される[[蔵骨器]]には、壊れにくい甕が使用されることがあり、蓋に使用される[[鉢]]などと年代が異なることがあり良好な[[共伴]]資料にもかかわらず、墓の築かれた面、言い換えれば被葬者の埋葬された年代の決定には使用できない場合もあるので気をつけなければならない。
 
一方で、時代の判明した遺物を含む層が連続していることが確認できたり、時期の判明している[[火山灰]]層などがある場合は、[[絶対年代]]の判明したその地層を基準にして堆積層同士の新旧関係やおおよその年代を知ることができる。このようにして多くの遺跡の遺構・遺物についてその層位的関係を論じることが可能になる場合がある。
 
なお、人工層位といって特定の間隔を設定して、[[土器]]をとりあげて、その土器の出土頻度から遺跡の時期区分を設定する場合もある。
 
==関連項目==