「欧州理事会議長」の版間の差分

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== 沿革 ==
欧州理事会は1961年に非公式首脳会合として初めて開かれ、その後1974年に定例的に開か化さるようになった。このとき欧州理事会議長は欧州連合(1993年11月1日以前は[[欧州諸共同体]])理事会の議長国の制度にならうこととなった。欧州理事会は[[欧州連合加盟国|加盟国]]の首脳で構成されていることから、欧州理事会の議長は議長国の首脳が務めることとなった。この輪番制の議長職は半年ごとに交替する制度を採った<ref>{{Cite web|last=Stark|first=Christine|date=2002-09-02|url=http://www.dragoman.org/ec/belfast-2002.pdf|title=Evolution of the European Council: The implications of a permanent seat|publisher=Dragoman.org|language=英語|format=PDF|accessdate=2009-12-17}}</ref><ref name="nbiz">{{Cite web|last=van Grinsven|first=Christine|year=2003|month=September|url=http://www.clingendael.nl/publications/2003/20030900_cli_paper_dip_issue88.pdf|title=The European Council under Construction: EU top level decision making at the beginning of a new century|publisher=Netherlands Institution for international Relations Clingendael|language=英語|format=PDF|accessdate=2009-12-17}}</ref>。
 
=== 常任化 ===
[[欧州憲法条約]]では従来の輪番制に代わり、常任の「欧州理事会議長」の概要を示していた<ref>{{Cite web|url=http://europa.eu/scadplus/constitution/europeancouncil_en.htm|title=The European Council|publisher=EUROPA|language英語|accessdate=2009-12-17}}</ref>。欧州憲法条約は批准手続きにおいて、フランスとオランダの国民投票で否決された。しかしながら欧州理事会と議長職についての変更点はリスボン条約でも残され、そのリスボン条約は2009年12月1日に発効した。
 
常任議長がどのような性質を持つ役職であるかということが具体的にされていなかったため、初代常任議長は将来における「常任議長職の輪郭を描く」ものとされている<ref>{{Cite web|last=Goldirova|first=Renata|date=2007-10-22|url=http://euobserver.com/9/25009|title=First names floated for top new EU job|publisher=EUobserver.com|language=英語|accessdate=2009-12-17}}</ref>。常任議長は基本条約で示されているような、たんに欧州理事会の会合における議長を務め、会合と政策の円滑な進行を確保する程度の象徴的な役職に過ぎないという考え方がある。常任議長がこのような役職であれば、政界引退が近いような指導者にとってみれば自らの経歴に花を添えるものと考えるような最高の役職となり、常任議長となった人物は欧州連合の機関に対して権力を行使するよりも事務的な作業に力を注ぐことになりかねない<ref>{{Cite web|last=Ley Berry|first=Peter Sain|date=2007-11-16|url=http://euobserver.com/9/25161|title=&#91;Comment&#93; The new EU president: standard bearer or shaker?|EUobserver.com|language=英語|accessdate=2009-12-17}}</ref>。これに対して別の考え方では常任議長について、連合内部でより積極的な活動ができるようになり、また対外的に発信する役職となると見ている。このような考え方での常任議長は事実上の「ヨーロッパの大統領」と位置づけられ、世界に対して欧州連合を代表する役職となる。そのような役職に就く人物には強いスマ性ーダーシップが求められることになる<ref name="Constitution">{{Cite web|url=http://europa.eu/scadplus/constitution/europeancouncil_en.htm|title=The Institutions of the Union - The European Council|publisher=EUROPA|language=英語|accessdate=2009-12-17}}</ref>。
 
リスボン条約では欧州理事会議長の選任手続きが定められておらず、公の場での発言や憶測などが飛び交うなかさまざま様々な人物が候補に挙がった。2007年11月19日に[[フランス]][[共和国大統領 (フランス)|共和国大統領]][[ニコラ・サルコジ]]は常任議長の候補として[[トニー・ブレア]]、[[フェリペ・ゴンサレス]]、[[ジャン=クロード・ユンケル]]の名を私見として挙げ<ref>{{Cite web|date=2007-10-19|url=https://pastel.diplomatie.gouv.fr/editorial/actual/ael2/bulletin.asp?liste=20071022.html|title=CONFERENCE DE PRESSE DU PRESIDENT DE LA REPUBLIQUE, M. NICOLAS SARKOZY|publisher=Ministère des Affaires étrangères|language=フランス語|accessdate=2009-12-17}}</ref>、とくにブレアについては長らく最有力候補と目されてきた。ところがブレアに対しては[[イラク戦争]]を開戦したことや、出身国[[イギリス]]が[[ユーロ圏]]や[[シェンゲン協定|シェンゲン圏]]に入っていないということもあって、常任議長にはふさわしくないとする強い反発が起こった。
 
=== 初代常任議長 ===
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会合後の記者会見でファン・ロンパウは加盟国の個性を強調しつつ、次のように述べている。
{{Quote|(仮訳)すべての国が協議で勝利となるべきなのです。敗者が出るような協議はけっしてよい協議ではありません。私はすべての方々の利益や感性を考えていきます。ヨーロッパの統合が強さをもたらそうとも、ヨーロッパの多様性は私たちの強さなのです。|Herman Van Rompuy<ref>{{Cite web|last=Chu first=Henry|date=2009-11-20|url=http://www.latimes.com/news/nation-and-world/la-fg-eu-president20-2009nov20,0,7505745.story|title=European Union settles on a Belgian and a Briton for top posts|publisher=Los Angeles Times|language=英語|accessdate=2009-12-17}}</ref>}}
 
== 権能 ==
=== 2009年以前 ===
2009年以前は欧州連合理事会議長国の国家元首や政府首脳が、輪番制で任期6か月の欧州理事会の議長を務めた。議長は会議における議題を設定することになっていたが、この権限がそれぞれの国の益を図るために乱用されたこともあった。また議長国は会議において本来の出席者とは別の協議参加者を加えることができた<ref name="nbiz"/><ref name="How work">{{Cite web|url=http://europa.eu/abc/12lessons/lesson_4/index_en.htm|title=How does EU work?|publisher=EUROPA|language=英語|accessdate=2009-12-17}}</ref><ref name="Europa Council">{{Cite web|url=http://europa.eu/european-council/index_en.htm|title=European Council|publisher=EUROPA|language=英語|accessdate=2009-12-17}}</ref>。
 
またこの輪番制議長は出席する加盟国首脳のなかの筆頭 (Primus inter pares) にすぎなかった。輪番制議長はもっぱら欧州理事会の会合の準備と議事進行を務めるものであり、なんらかの執行権を持つものではなかった。しかしながら議長は欧州理事会を対外的に代表し、また欧州理事会の会議のあとや、就任と退任のさいには[[欧州議会]]に対して報告を行なう<ref name="How work"/><ref name="Europa Council"/>。
 
=== 2009年以後 ===
常任議長の役割は概して管理的なものとなり、欧州理事会の活動の調整、会議の開催と議事進行、会議後の欧州議会に対する報告といったものが挙げられる。また欧州連合条約第15条では欧州理事会議長について「その地位と能力において、欧州連合外務・安全保障政策上級代表の権限を害さない限りで[[共通外交・安全保障政策]]に関する諸問題について連合の対外的な代表を請け負う」としている。しかしながら欧州委員会委員長や外務・安全保障政策上級代表などの役割が重複する部分でどれだけ欧州理事会議長が影響力を持つのかという点は明確にされていない。また欧州理事会議長がその役職を全うするのに十分な人材や資源を持つことができるのか、あるいは特定の部署組織を持たないなかで欧州理事会議長が加盟国首脳らの「遊び玉」となるのではないかといったことも考えられている<ref name="Vague">{{Cite web|last=Mahony|first=Honor|date=2007-11-28|url=http://euobserver.com/9/25234|title=Unclear EU treaty provisions causing 'nervousness'|publisher=EUobserver.com|language=英語|accessdate=2009-12-17}}</ref>。
 
== 待遇 ==
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欧州理事会議長には運転手つきの自動車とおよそ20人の職員が与えられる。また「象徴的すぎる」と考えられた公邸は用意されていないものの、住居手当が支払われている。また象徴的すぎるということと、欧州委員会委員長との均衡を図るために専用航空機を用意することも見送られた<ref name="EUO April Perks"/>。
 
欧州理事会議長を欧州委員会委員長よりも厚遇することによって2009年度予算案が欧州議会で否決されるというおそれがあった。欧州議会は高額の俸給などを、欧州理事会議長が権限を強めるものと受け止めていた。また欧州連合理事会では欧州理事会議長に付ける職員を60人にしようとする案が出されていたが欧州議会の委員会では欧州議会と欧州連合理事会が相互の予算に干渉しないとする[[紳士協定]]を撤回することもほのめかした<ref>{{Cite web|last=Mahony|first=Honor|date=2008-04-22|url=http://euobserver.com/9/26018|title=MEPs to use budget power over EU president perks|publisher=EUobserver.com|language=英語|accessdate=2009-12-17}}</ref>。
 
== 民主性 ==
[[欧州議会議員]]や各国議会の議員に対する説明責任が規定されていないこと、主要な議題については各国の首脳らが欧州理事会議長を隠れ蓑にするのではないかという疑念につながっている<ref name="Vague"/>。輪番制での欧州理事会議長はその人物の出身国の負託を受けていただけであったが、常任議長はほか出身国以外の加盟国からも選出されるということになる<ref name="Leinen utopian">{{Cite web|last=Leinen|first=Jo|year=2007|url=http://www.europesworld.org/NewEnglish/Home/Article/tabid/191/ArticleType/articleview/ArticleID/21152/Default.aspx|title=A President of Europe is not Utopian, it’s practical politics|publisher=Europe's world|language=英語|accessdate=2009-12-17}}</ref>。
 
[[ドイツ]]の内相だった[[ヴォルフガング・ショイブレ]]<ref>{{Cite web|date=2009-06-02|url=http://euobserver.com/883/28216|title=British Conservatives call for EU to return powers|publisher=EUobserver.com|language=英語|accessdate=2009-12-17}}</ref>など一部からは欧州理事会議長に民主的な負託を与えるために[[直接選挙]]を実施することが求められた。直接選挙が実施されれば議長は欧州理事会においてより強力な指導力を発揮できるほか、欧州連合における民主的正当性に対する疑念に対応することができる。しかしながらその一方で直接選挙を実施すれば、欧州議会の民主的負託や、欧州委員会の潜在的な付託と対立を起こしかねない。また欧州理事会議長に負託を与えることになると、欧州連合の運営が議会重視ではなく[[大統領制]]の性格が強まることになる<ref name="Leinen utopian"/>。
 
=== 欧州委員会との関係 ===
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欧州理事会議長は加盟国の首相など国内での役職を持つことが禁じられているが、ヨーロッパ規模での役職との兼務についてはこのような制限が存在しない。たとえば欧州理事会議長は欧州議会議員や欧州委員会委員長などと兼職することができる。つまり欧州理事会は同一人物を欧州理事会議長と欧州委員会委員長に任命することができ、欧州連合全体における大統領的な役職を創設することになるのである<ref name="Constitution"/>。
 
2つの役職が兼職されていなくともこの両頭体制で[[コアビタシオン]]が発生したり、両者の間での内部抗争が起こる可能性がある。大統領(欧州理事会議長)と[[フランスの首相|首相]](欧州委員会委員長)がいるフランスの[[半大統領制]]と比べると、欧州理事会議長は欧州委員会委員長を直接的に任免したり、欧州議会を解散したりするような法的権限を有していない。つまり欧州理事会議長には名誉権威はあるが権限がなく、他方で欧州委員会委員長には権限はあるが欧州理事会議長のような名誉権威はないのである<ref>{{Cite web|last=Hix|first=Simon|coauthors=Roland, Gérard|url=http://fpc.org.uk/articles/201|title=Why the Franco-German Plan would Institutionalise 'Cohabitation' for Europe|publisher=Foreign Policy Centre|language=英語|accessdate=2009-12-17}}</ref>。直接選挙が行われるなどして欧州理事会議長の民主的負託が強化されれば、このような欧州委員会委員長との関係についての問題が大きくなりかねない<ref name="Leinen utopian"/>。
 
== 脚注 ==