「干しいも」の版間の差分

削除された内容 追加された内容
編集の要約なし
Uguisuan (会話 | 投稿記録)
編集の要約なし
1行目:
[[画像:Hishiimo.jpg|thumb|240px|right|干しいも]]
'''干しいも'''(ほしいも、干し芋)は[[サツマイモ]]を蒸して乾燥させた[[食品]]である。日本においては全国各地で作られているが、産業としては8割以上が[[茨城県]]で生産されている。正式名は「甘藷蒸切干」だが<ref name=hakken>[http://www.pref.ibaraki.jp/discover/products/special/04.html 茨城県ホームページ:発見!!いばらき ほしいも]</ref>、「乾燥芋(かんそういも、かんそいも)」「蒸し切り干し」「きっぽし」「いもかち」などと呼ばれることもある。
 
== 概要 ==
7行目:
適度な水分を含むため、粘度のある噛み応えとサツマイモらしい甘味が特徴的である。そのまま生で食べてもよいが、火であぶると柔らかくなり甘味も増し、また表面を軽く焦がすことにより香ばしさが生まれる。
 
栄養面でも優れている。[[コレステロール]]は含まれず、整腸作用のある[[食物繊維]]を多く含む。[[チアミン|ビタミンB1]]や[[ビタミンC]]、[[カリウム]]にも富んでいる<ref name=hitachinaka1>[http://www.city.hitachinaka.ibaraki.jp/0701nosei/hosiimo.html ひたちなか市農政課:たべたいもん ほしいもーん]</ref>。[[酸性食品とアルカリ性食品|アルカリ性食品]]に分類されることも、健康に良い根拠として挙がる場合がある<ref name=hakken />
 
後述するように複雑な製法ではないが、時間と手間がかかるため、価格は1袋500gで1000円程度するものもある。また製造時の端切れを集めたものを「切甲(せっこう)」「しろた」と言い<ref>「[http://mito.keizai.biz/headline/281/ 干しいもパイ「ほっしぃ~も」商品化-規格外の切れ端を活用]」([[水戸経済新聞]] 2010年4月22日)</ref>、通常品の半値程度で販売されている。形が整っていないために二級品扱いで安価ではあるが、味は変わらない。家庭でも作ることができるが、美味しく仕上げるには蒸し方にある程度のコツが必要となる。
 
== 歴史 ==
[[蒸す|蒸して]]から干す現在の製法が確立されたのは、[[文政]]年間の頃、現在の[[御前崎市]]にあたる地域であると言われる。その後、保存食として全国各地に広まった。[[日露戦争]]で[[レーション|野戦食]]としても活用され、軍人いもと呼ばれた。[[明治]]時代末から茨城県での生産が始まり、現在は圧倒的なシェアを誇るまでになっている
 
[[1908年]](明治41年)から、茨城県[[那珂湊市|那珂湊]](現在の[[ひたちなか市]])での生産が始まり、農閑期の副業として定着した。導入経過は2説あり、一説にはせんべい屋の湯浅藤七という人物が導入し、宮崎利七が静岡からの技術支援を受けて、那珂湊の水産干物加工設備を流用して企業化した<ref>[http://www.pref.ibaraki.jp/discover/products/veget/08.html 茨城県ホームページ:発見!!いばらき かんしょ]</ref>。異説としては、小池誠司(吉兵衛)・大内地山兄弟が、[[茨城県知事の一覧|県知事]]の[[森正隆]]に献策して、静岡からの技術者2名の派遣を受けて製造を始めたとする。ただし、後者の小池らの事業はごく小規模に個人レベルで行っただけと見られる。その後、原料のサツマイモに適した土壌だったことや、冬の乾燥した気候が生産に適していたことから<ref name=hitachinaka1 />、現在は茨城県が圧倒的なシェアを誇るまでになっている。
 
== 製法 ==
[[ファイル:Hoshi-imo.JPG‎|thumb|200px|薄切りにした芋をビニールハウスで天日干ししている様子]]
[[ファイル:Tamayutaka.JPG‎|thumb|200px|原料になる玉豊種のサツマイモ]]
収穫後のサツマイモを水で洗って、皮をつけたまま1~2時間ほどかけて蒸し上げる。蒸し器から出した後、皮をむき、[[すだれ]]に広げ冬場の寒風を利用して[[天日]]で1週間程度干す<ref name=hitachinaka1 />。そのまま干されることもあるが、[[ピアノ線]]などを使って1cm程度の厚さに切ってから干されることが多い。切らずにそのまま干した「丸干しいも」の場合、20日間ほどのより長期の乾燥が必要になる。良く乾燥させた方が保存性は高くなるが、食感は固くなる。
 
サツマイモの甘味を増やすため、サツマイモを収穫後に寒気にあて[[糖化]]させるなどの工夫もしている。
22 ⟶ 25行目:
近年は、衛生確保のため[[ビニールハウス]]や[[網]]を張って乾燥させていることが多い。また温暖化の影響で天日乾燥が難しくなったため、機械乾燥で生産されるものもある。蒸すのではなく、[[茹でる|茹でた]]ものを干す場合もあるが、この場合[[デンプン]]が[[デンプン#糊化|糊化]]しないので蒸したものより固くなる。
 
原料となるサツマイモの品種は玉豊種(タマユタカ、農林22号)が主で、いずみ種(泉13号)も使用される。[[2005年]]頃からは、新品種の玉乙女種も使用されている。ベニマサリを使ったものもある。主力の玉豊種は今では干しいもの専用品種に近いサツマイモで、[[19601961年]]から使用されるようになった。他の品種と比べて大型で、外皮、肉色とも白く、食感はホクホクではなくネットリしている。生では白いのに、干すと飴色に変わる<ref>[http://ja-hitachinaka.or.jp/t_hoshiimo.cgi JAひたちなか:ほしいも]</ref>
 
サツマイモの収穫後に製造されるため、必然的に干しいもの製造は冬季から初春に行われるが、[[冷凍]]保存されたものが一年を通じて[[流通]]している。
 
== 産地 ==
県別の生産高では茨城県([[ひたちなか市]]、[[東海村]])が全国第一位となっているほか、冬の[[からっ風]]が強い[[群馬県]]、[[明治時代]]に産業化が始められた[[静岡県]]、[[長崎県]]などで生産が多い[<ref>http://www.jrt.gr.jp/diary/nikki_05.html]</ref>。最近では茨城県の業者による技術指導の下、[[中華人民共和国|中国]]産も出回っているが、国産に比べ甘味や食感に差異がある。
 
== 保存方法 ==
室温保存も可能であるが、[[保存料]]等は使われておらず、さらに最近のものは食感を良くするため乾燥しすぎないようにしているのでカビが発生しやすい。このため[[冷蔵庫]]での保存が好ましい。冷凍にすれば長期保存が可能である。なお、適切な保存がされずにカビが生えてしまい、[[クレーム]]を招くことの多い商品の一つであるが、前述の結晶化した糖分がカビと見間違えられただけのケースもある<ref>[http://www.k-sho.co.jp/user_data/imokyu.php 幸田商店:芋Q&A]</ref>
 
店頭販売用の干しいもは、密封性の高い[[フィルム]]で作られた包装袋に[[脱酸素剤]]と同封することで、日持ちを向上させている。
 
== 脚注 ==
{{Reflist}}
 
== 参考資料 ==
* 先﨑千尋『ほしいも百年百話』(茨城新聞社、2010年)
 
== 関連項目 ==