「隷書体」の版間の差分

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左右の払いで波打つような運筆('''波磔''')をもち、一字一字が横長であるのが主な特徴。
 
字体が篆書と異なり横長になったのは、記録媒体が柾目の[[木簡]]に変化したためで、柾目を横切る横画に大きな負担がかかるためである。木簡・竹簡・帛書に書く場合は少々右上がりの字体も見られるが、石碑に彫る場合には字全体は水平になるよう彫り師が修正する。また書者も[[篆書体|篆書]]のような[[硬筆]]を好まず、横画をドーム状に膨らませたり([[#乙瑛碑|乙瑛碑]]など)、[[楷書体|楷書]]で言う「[[書法#向勢|向勢]]」を取って字を引き締めたり([[中国の筆跡一覧#史晨前碑|史晨前後碑]]など)、重心を字の左に寄せて長く太い波磔で[[バランス]]を取る([[#曹全碑|曹全碑]]など)、1字の中で筆跡の強弱を極端に変化させる([[中国の筆跡一覧#礼器碑|礼器碑]]など)、あえて古式な字体に戻しながらも波磔の妙と折衷させる([[中国の筆跡一覧#張遷碑|張遷碑]]など)といったように、字の書き方に創意工夫を加えるようになる。なお、波磔は1字につき1回しか認めない[[ルール]]が確立していた。
 
篆書から隷書への変化は字形の違いが大きく、これを「隷変」と呼ぶ。隷書は主に直線と鉤状の折れ線によって成っている。ここに至って初めて[[筆画]]と[[書道用語一覧#筆勢|筆勢]]が生まれた。それに従って、筆記のための省画や「{{Lang|zh|氵}}」(さんずい)や「{{Lang|zh|亻}}」(にんべん)などの部首の変形が広く行われるようになり、筆記に適した文字に変化した。その一方、隷書以降の文字は一見して字源を知ることが困難になった。