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== 概説 ==
高次元時空の概念は、もともと素粒子論、場の理論(field theory)に基づいて提唱され、研究されてきた。元来は20世紀初頭に
ブレーンワールドの概念は、もともと素粒子論、場の理論(field theory)に基づいて提唱され、研究されてきたが、その後、[[超弦理論]](superstring theory)に応用されてD-ブレーン(超弦の端点が載ブレーン)などの概念が確立し、さらに発展した(B2008のノート参照)。特に、1998-2000年にアントニアディス・アルカニハメド・ディモポーロス・ドヴァリらの大きな余剰次元(large extra dimension)の模型、ランドール・サンドラムのワープした(歪んだ)余剰次元(warped extra dimension)の模型、ドヴァリ・ガバダジェ・ポラッティのブレーン誘導重力(brane induced gravity)に基づく模型などが提唱されて以降、その理論的、現象論的側面からの研究、宇宙論的側面を明らかにする研究などが活発に行われるようになった。近年精力的に研究が進められている宇宙モデルの1つである。
KaluzaとKleinによって提唱された[[カルツァ=クライン理論]]による重力と電磁気力の統一が目的であった。しかしカルツァ=クライン理論は電磁気力の精密測定との整合性がとれず、歴史から忘れ去られる。
1980年代、[[超弦理論]](superstring theory)において26次元の高次元時空が存在すれば弦の量子化が可能であることが発見された。ここで高次元模型は再び日の目を見る。90年代には、D-ブレーン(超弦の端点が固定された膜:Dirichlet-brane)などの概念が確立し、弦理論における高次元時空の概念はさらに発展した(B2008のノート参照)。この期を境に、「高次元時空上に存在する、ゲージ粒子などの特定の種類の粒子が局在化した、4次元以上の時空の膜」の意として「ブレーン」と言う言葉が誕生した(語源はmembrane:和約は「膜」)。
ブレーンワールドの概念これをきっかけに高次元模型、もともと素粒子論、場の理論(field theory)に基づいて提唱され、再び研究されてきたがの対象となりその90年代、[[超弦理期には現象]](superstring theory)応用されてD-ブレーン(超弦の端点が載ブレーン)などの概念が確立し、さらに発展した(B2008のノート参照)特に、1998-2000年にアントニアディス・アルカニハメド・ディモポーロス・ドヴァリらの大きな余剰次元(large extra dimension)の模型、ランドール・サンドラムのワープした(歪んだ)余剰次元(warped extra dimension)の模型、ドヴァリ・ガバダジェ・ポラッティのブレーン誘導重力(brane induced gravity)に基づく模型などが提唱されてた。以降、その理論的、現象論的側面からの研究、宇宙論的側面を明らかにする研究などが活発に行われるようになった。近年精力的に研究が進められている宇宙モデルの1つである。
 
このような研究の動機のひとつは、超弦理論やM理論における高次元空間での整合的な理論構築である。時空の次元を増やす理論は、[[カルツァ=クライン理論]]をはじめとして古くからあるが、余剰次元は小さく丸まっていて通常の低エネルギーの観測手段では見えないとするコンパクティフィケーション(compactification)の考えに基づいていた。これに対し、ブレーン仮説では、余剰次元は小さくはない<ref>ただし、重力が逆二乗で減衰するのは4次元空間のみであり、余剰次元の大きさには依然上限がある。</ref>が、低エネルギーの物質や電磁場はブレーン上にのみ存在でき、重力だけは余剰次元にも存在しうると考える。
ブレーン仮説を考えると、物理学における基本的な4つの力(相互作用)のうち、重力だけが極端に弱いという[[階層性問題]]を「重力だけがバルク中も作用するから」として説明できる可能性がある。空間の埋め込みの数学的研究は19世紀に遡り、物理的なブレーンワールドは、1980年代頃から研究され、発展してきたが、上述のように、1998年頃階層性問題への適用が再認識され、加速器、宇宙等での観測の可能性が指摘されて、一躍注目を集めるようになった。
 
以降、これらの概念を応用して、宇宙の初期特異点の解決を試みるモデル・ビッグバンの起源を複数のブレーンの衝突で説明するモデル([[エキピロティック宇宙論]])・[[宇宙のインフレーション]]をブレーンの運動で捉えるモデル・宇宙の[[ダークエネルギー]]問題の解決を試みるモデルなど、宇宙論のさまざまな分野でアイデアが提出され研究されている。また、[[一般相対性理論]]を高次元空間で考える研究も進展し、例えば時空が高次元であるならば、陽子ビームを衝突させる[[LHC]]加速器でミニ・[[ブラックホール]]が生成される可能性も指摘され、近い将来実験検証が開始される予定である。ブレーン宇宙モデルでは、一般に余剰次元の効果の現れるエネルギースケールが4次元理論(プランクスケール)や従来の高次元宇宙模型(カルツァ・クライン理論)に比べてずっと小さくなり得るため、初期宇宙にブレーンのサイズが余剰次元のサイズと同程度の時期があれば、将来的にその痕跡が[[宇宙マイクロ波背景放射]]の揺らぎなどから観測されると期待されている。
 
以降、これらの概念を応用して、宇宙の初期特異点の解決を試みるモデル・ビッグバンの起源を複数のブレーンの衝突で説明するモデル([[エキピロティック宇宙論]])・[[宇宙のインフレーション]]をブレーンの運動で捉えるモデル・宇宙の[[ダークエネルギー]]問題の解決を試みるモデルなど、宇宙論のさまざまな分野でアイデアが提出され研究されている。
また高次元模型の自然な帰結として、[[一般相対性理論]]を高次元時空で考える研究もされてきた。例えば時空が高次元であるならば、陽子ビームを衝突させる[[LHC]]加速器でマイクロ・[[ブラックホール]]が生成される可能性も指摘され、近い将来実験検証が開始される予定である。
ブレーン宇宙モデルでは、一般に余剰次元の効果の現れるエネルギースケールが、4次元理論での重力スケール(プランクスケール)や従来の高次元宇宙模型(カルツァ・クライン理論)に比べてずっと小さくなり得るため、初期宇宙にブレーンのサイズが余剰次元のサイズと同程度の時期があれば、将来的にその痕跡が[[宇宙マイクロ波背景放射]]の揺らぎなどから観測されると期待されている。
 
== 関連項目 ==