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[[ファイル:Arduino ftdi chip-1.jpg|thumb|right|250px|電子部品の[[表面実装]]]]
'''電子工学'''('''でんしこうがく''')、もしくは'''エレクトロニクス'''({{lang-en-short|Electronics}})は、[[電磁気]]現象を応用した[[工学]]の一分野。なかでも、[[電子]]の振る舞い、特に[[電子管]]・[[半導体素子]]のような[[能動素子]]の扱いを体系化することを特徴とする。
 
'''電子工学'''('''でんしこうがく''')、もしくは'''エレクトロニクス'''({{lang-en-short|Electronics}})は、[[科学]]および[[テクノロジー]]の一分野であり、様々な媒体や真空における[[電子]]の動きを制御して利用する。電子の流れを制御することで、情報を処理し、機器を制御する。[[電気工学]]と対比させた場合、電気工学は[[発電]]、[[送電]]、[[電力]]の制御や応用を扱う。[[リー・ド・フォレスト]]が[[三極管]]を発明した1906年ごろ、電気工学から電子工学が派生した。三極管は[[電気信号]]を[[増幅]]可能な初の機械的でない[[能動素子]]である。1950年ごろまで、この分野は[[無線工学]]とほぼ同義であり、無線[[送信機]]と[[受信機]]、それらに使用する[[真空管]]を初めとする[[電子管]]についての設計や理論的研究が中心だった。
電子工学の知識は電子や[[電磁場]]を操作して、[[制御装置|制御]]や[[情報処理]]、[[電力]]を[[変電|変換]]・[[送電]]するための機器に応用されている。
 
今日のエレクトロニクス機器のほとんどは[[半導体素子]]を使って電子を制御する。半導体素子とそれに関連する工学は[[物理学]]と関係が深く、より応用に近い[[電子回路]]の設計や構築は[[電気工学]]と関係が深い。
電子工学の発展は[[電気通信]]の出現とともに真に重要なものとなった。[[有線通信|有線]]・[[無線通信|無線]]通信技術は、[[電信]]・[[電話]]を通じて音声・映像・データなどの[[情報]]を送り、また[[伝送路]]を通じて機器を遠隔操作するためなどに利用される。
 
== 電子素子と電子部品 ==
[[電子部品]]は、電子システム内で電子の振る舞いやそれに関わる力場に決まった形で影響を与え、システムが意図した機能を果たすようにするものである。電子部品は一般に何らかの[[配線部品]]([[プリント基板]]に[[はんだ]]付けするなど)で相互接続され、[[増幅回路]]、[[発振回路]]、[[フィルタ回路]]など特定の機能を持った[[電子回路]]を構成する。電子部品は個別にパッケージングされる場合と、[[集積回路]]の形で複合的にパッケージングされる場合がある。よく見られる電子部品としては、[[コンデンサ]]、[[抵抗器]]、[[ダイオード]]、[[トランジスタ]]などがある。電子部品はトランジスタや[[サイリスタ]]などの[[能動素子]]と、抵抗器やコンデンサなどの[[受動素子]]に分類される。
 
== 回路の種類 ==
電子機器・システムは次の部分に分けられる。
 
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[[テレビ受像機]]を例にとると、入力は[[アンテナ]]や[[ケーブルテレビ]]から得られた放送信号である。テレビ受像機内部の信号処理回路は、放送信号から[[輝度信号|輝度]]や[[色信号|色]]や[[音声信号|音声]]の情報を取り出す。出力は電気信号を[[ブラウン管]]や[[スピーカー]]によって映像や音声の形態に変換することによって実現される。
 
電子回路や装置はアナログとデジタルに分類される。両者の橋渡しをする[[アナログ-デジタル変換回路]]と[[デジタル-アナログ変換回路]]もある。
== 電子工学科 ==
 
日本では、[[大学]]や[[高等専門学校]]、[[工業高校]]など技術系学校の[[学科]]名(の固有名詞)の一つとして「電子工学科」が定着している。電子工学科では、電子工学のみならず、電気工学全般を学ぶが、従来の「電気工学科」に比べて、情報通信関連の教科に重点が置かれる。
=== アナログ回路 ===
{{Main|アナログ回路}}
[[ファイル:HitachiJ100A.jpg|right|thumb|250px|周波数可変[[インバータ]] J100(日立)]]
[[ラジオ]]受信機などの[[アナログ]]電子機器の多くは、数種類の基本回路の組み合わせで構成されている。[[アナログ回路]]は連続的な範囲の電圧を使う。
 
電子回路は1個から数千個の部品で構成されるため、これまでに考案されたアナログ回路は使用している部品の違いを考慮すれば膨大な数になる。
 
アナログ回路には[[線型回路]]もあるが、非線型な効果を持つミキサ回路、変調回路なども多数存在する。アナログ回路の典型例として、真空管やトランジスタを使用した[[増幅回路]]、[[オペアンプ|演算増幅回路]]、[[発振回路]]などがある。
 
最近では完全にアナログだけの回路は滅多にない。アナログ回路であっても性能を改善するためにデジタル回路や[[マイクロプロセッサ]]技術を利用していることが多い。そのような回路は一般に "Mixed Signal" と呼ばれる。
 
アナログ回路もデジタル回路も線型な素子と非線型な素子を使っているため、区別の難しい場合もある。例えば[[コンパレータ]]は連続的に変化する電圧を入力としながら、デジタル回路のような2つの電圧レベルのどちらかを出力する。
 
=== デジタル回路 ===
{{Main|デジタル回路}}
[[デジタル回路]]はいくつかの離散的な電圧レベルをとる電子回路である。デジタル回路は[[ブール論理]]を物理的に実装した最も一般的な形態であり、全ての[[デジタルコンピュータ]]の基盤である。ほとんどのデジタル回路は2つの電圧レベルをとり、"Low"(0) と "High"(1) として使用する。"Low" は0V付近ということが多く、"High" は電源電圧に依存して決まる。
 
[[コンピュータ]]、[[デジタル時計|デジタル]][[クォーツ時計]]、[[プログラマブルロジックコントローラ]](生産工程の制御で使用)などは全て[[デジタル]]回路で構成されている。他には[[デジタルシグナルプロセッサ]]もある。
 
基本回路:
* [[論理回路]]
* [[加算器]]
* [[乗算器]]
* [[フリップフロップ]]
* [[カウンタ (電子回路)|カウンタ]]
* [[レジスタ (コンピュータ)|レジスタ]]
* [[マルチプレクサ]]
* [[シュミットトリガ]]
 
高集積部品:
* [[マイクロプロセッサ]]
* [[マイクロコントローラ]]
* [[ASIC]] (Application-specific integrated circuit)
* [[デジタルシグナルプロセッサ]] (DSP)
* [[FPGA]] (Field-programmable gate array)
 
== 放熱 ==
[[ファイル:Low efficiency fins.png|thumb|熱設計支援ソフトウェア(FloTherm)によるヒートシンクのシミュレーション]]
{{See also|ヒートシンク}}
電子回路は[[熱]]を発生するため、誤動作を防ぎ長期間の信頼性を確保するには放熱が重要となる。放熱技法としては[[ヒートシンク]]や[[送風機|ファン]]による空冷、[[CPUの冷却装置|コンピュータの放熱]]に見られる[[水冷]]などがある。放熱システムの設計にあたっては、[[対流]]、[[熱伝導]]、熱エネルギー[[放射]]などを利用する。
 
== ノイズ ==
電子回路にはノイズが付き物である。この場合のノイズとは、電気信号に重なっている好ましくない変動で、電気信号の内容である情報を不明瞭にする傾向がある<ref>IEEE Dictionary of Electrical and Electronics Terms ISBN 978-0-471-42806-0</ref>。ノイズは回路に起因する信号の歪みとは異なる。ノイズは電磁気や熱によって発生し、回路の温度を低く保てば低減させることができる。その他のノイズとしては[[ショット雑音|ショットノイズ]]などがあるが、これは電子回路の物理特性の限界に起因するため、除去できない。
 
== 電子工学と数学 ==
電子工学には数学が不可欠である。電子工学に熟達するには、回路解析の数学にも熟達する必要がある。
 
回路解析は、回路内の特定の点の電圧(電位)や特定経路を通る電流といった値を変数として、一般に連立一次方程式から値を求める技法を指す。このための解析ツールとして[[SPICE (ソフトウェア)|SPICE]]回路シミュレータなどがある。
 
また電子工学では[[電磁気学]]も重要である。
 
== CAD(コンピュータ支援設計) ==
[[ファイル:FreePCB screenshot.png|thumb|プリント基板設計用EDAソフトの例(FreePCB)]]
{{Main|EDA (半導体)}}
今日のエレクトロニクス設計技師は、[[電源回路]]、[[半導体素子]]([[トランジスタ]]など)、[[集積回路]]といった既存の要素を組み合わせて[[電子回路]]を[[回路設計|設計]]する。その際に使用する[[EDA (半導体)|EDA]](電子設計自動化)ソフトウェアは、回路エディタ機能や[[プリント基板]]設計機能を備えている。
 
== 組み立て技法 ==
[[ファイル:Cordwoodcircuit.agr.jpg|thumb|300px|コードウッド型配線]]
電子部品を相互接続するに当たっては、様々な技法が長年使われてきた。例えば、初期の電子システムでは部品を木製の板([[ブレッドボード]])に固定し、それらを[[空中配線]]することで回路を構成していた。他にもコードウッド型配線(図参照)や[[ワイヤラッピング]]などが古くから使われてきた。現在では[[FR4|ガラスエポキシ基板]]などの[[プリント基板]]が主流で、より安価な紙フェノール基板(黄色から茶色の色が特徴)も使われている。近年、電子機器の健康や環境への影響が懸念されるようになってきており、特に[[欧州連合]](EU)向けの電子機器については[[RoHS]]指令や[[WEEE指令]]が2006年7月に施行されている。
 
== 教育 ==
日本では、[[大学]]や[[高等専門学校]]、[[工業高校]]など技術系学校の[[学科]]名(の固有名詞)の一つとして「'''電子工学科'''」が定着している。電子工学科では、電子工学のみならず、電気工学全般を学ぶが、従来の「電気工学科」に比べて、情報通信関連の教科に重点が置かれる。
 
== 団体 ==
学会
* [[IEEE]] (Institute of Electrical and Electronics Engineers)
* [[電子情報通信学会]]
 
業界団体
* [[EIA]](アメリカ電子工業会)
* JEITA([[電子情報技術産業協会]])
 
== 脚注・出典 ==
{{Reflist}}
 
== 参考文献 ==
* {{Citation|author=Paul Horowitz and Winfield Hill|title=The Art of Electronics|edition=Second|year=1989|publisher=Cambridge University Press|isbn=9780521370950}}
* [http://nanohub.org/resources/1500 Online course on ''Computational Electronics''] on Nanohub.org
 
== 関連項目 ==
{{Portal|エレクトロニクス}}
{{Commons|Category:Electronics|{{PAGENAME}}}}
* [[電子回路]]・[[デジタル回路]]・[[アナログ回路]]・[[フィルタ回路]]・[[論理回路]]・[[アナログ-デジタル変換回路]]・[[デジタル-アナログ変換回路]]
* [[集積回路]]・[[半導体素子]]・[[電子管]]・[[受動素子]](部品)・[[配線部品]]
* [[パワーエレクトロニクス]]・[[光エレクトロニクス]]・[[マイクロエレクトロニクス]]
* [[通信工学]]・[[無線工学]]・[[伝送工学]]・[[交換工学]]
* [[電気工学]]・[[電気計測工学]]・[[電力工学]]・[[電磁気学]]
* [[制御工学]]・[[メカトロニクス]]・[[デジタル制御工学]]
* [[コンピュータ]]・[[情報工学]]
* [[エレクトロニクス用語一覧]]
* [[電気工学]]・[[電気計測工学]]・[[電力工学]]・[[電磁気学]]
* [[通信工学]]・[[無線工学]]・[[伝送工学]]・[[交換工学]]
* [[コンピュータ]]・[[情報工学]]・[[計算機工学]]
* [[制御工学]]・[[メカトロニクス]]・[[デジタル制御工学]]・[[ロボット工学]]
* [[パワーエレクトロニクス]]・[[光エレクトロニクス]]・[[マイクロエレクトロニクス]]
* [[電気音響工学]]
* [[電子工作]]
* [[EIA]]・[[EDA]]
* [[不確定性原理]]
* [[エンリコ・フェルミ]]
 
== 外部リンク ==
{{Commonscat|Electronics}}
* [http://www.jeita.or.jp/japanese/index.htm 社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)]
* [http://www.electricalandelectronics.org Electrical and electronics web portal]
* [http://www.electroniq.net Electronics tutorials, projects and software]
* [http://www.phy.davidson.edu/instrumentation/NEETS.htm Navy 1998 Navy Electricity and Electronics Training Series (NEETS)]
 
{{テクノロジー}}