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[[数学]]、特に[[線型代数学]]における'''跡'''(せき、{{lang-en-short|''trace''}}; '''トレース'''、{{lang-de-short|Spur}}; シュプール)あるいは'''対角和'''(たいかくわ)は、[[線型写像]](あるいは行列)の[[主対角成分]]の[[総和]]であり、その[[固有値]]の総和('''固有値和''')に等しい。
{{Otheruses|数学の跡(せき)|日本史の跡(あと)|跡 (御家人)}}
[[数学]]、特に[[線形代数]]における'''跡'''(せき)は、'''トレース''' (trace)、'''シュプール'''([[ドイツ語]]Spur)、'''跡和'''(せきわ)、'''対角和'''(たいかくわ)ともいい、[[正方行列]]の[[主対角成分]]の[[総和]]である。これは、行列が表す[[線型写像]]の[[固有値]]の総和に等しい。同様に、有限次元線形空間の上の線形写像に対して、その跡が表現行列の跡として定義される。
 
== 定義 ==
=== 行列の跡 ===
''n''次正方行列 <math>(a_{ij})</math> の跡(トレース)は
:<math>\mathrm{tr}(a_{ij}) := \sum _{i=1} ^n a_{ii}</math>
である。
 
=== 線型写像の跡 ===
体 ''K'' 上の[[ベクトル空間]] ''V'' 上の線形写像 ''f'' が有限次元の像を持つとき、''V'' の有限個の元 ''x''<sub>1</sub>, ..., ''x''<sub>''n''</sub> と双対空間 ''V''* の元 ''y''<sub>1</sub>, ..., ''y''<sub>''n''</sub> が存在して
: 任意の ''z'' &isin; ''V'' について ''f''(''z'') = &sum; ''y''<sub>''i''</sub>(''z'') ''x''<sub>''i''</sub>
となっている。このとき、&sum; ''y''<sub>''i''</sub>( ''x''<sub>''i''</sub>) は ''x''<sub>1</sub>, ..., ''x''<sub>''n''</sub> と ''y''<sub>1</sub>, ..., ''y''<sub>''n''</sub> の選び方によらず ''f'' のみによって定まる量となり、 ''f'' の跡あるいは指標 (distribution character) tr(''f'') とよばれる。同様にして一般に環の上の射影加群上の有限階数準同形写像について同じ式によって跡が定義される。
 
とくに ''n''-次正方行列 (''a''<mathsub>(a_{''ij})''</mathsub>) の跡(トレース)
==派生概念==
:<math>\mathrm{tr}(a_{ij}) := \sum _{i=1} ^n a_{ii}</math>
体の拡大 ''K'' &sub; ''L'' が与えられたとき、''L'' の各元 ''a'' は乗法によって''L''上の''K''-線形写像を定めるが、そのとき対応する跡のことを ''a'' の ''K''上の跡 tr<sub>''L''/''K''</sub>(''a'') という。体 ''K'' 上代数的な数 ''a'' が与えられたとき、拡大体 ''L'' として ''a'' が生成する体 ''K''(''a'') をとり、そこでの跡を ''a'' の跡と呼ぶこともある。これは[[最小多項式]]の[[解]]の総和にひとしい。特に、単に[[代数的数]]の跡と言った場合には有理数体上の跡 tr<sub>'''Q'''(''a'')/'''Q'''</sub>(''a'') をさす。
に等しい。
 
== 派生概念 ==
体 ''K'' 上にノルムが与えられているとき、無限次元空間バナッハ空間上の作用素 ''f'' で、&sum; |''y''<sub>''i''</sub>(''z'') ''x''<sub>''i''</sub>| が有限となるような''V'' の元の列 ''x''<sub>1</sub>, ..., ''x''<sub>''n''</sub>,... と双対空間 ''V''* の元の列 ''y''<sub>1</sub>, ..., ''y''<sub>''n''</sub> , ... によって
; 被約トレース
: ''f''(''z'') = &sum; ''y''<sub>''i''</sub>(''z'') ''x''<sub>''i''</sub>
: 体の拡大 ''K'' &sub; ''L'' が与えられたとき、''L'' の各元 ''a'' は乗法によって ''L'' 上の''K''-線形写像を定めるが、そのとき対応する跡のことを ''a'' の ''K'' 上の被約トレースまたは跡 tr<sub>''L''/''K''</sub>(''a'') という。体 ''K'' 上代数的な数 ''a'' が与えられたとき、拡大体 ''L'' として ''a'' が生成する体 ''K''(''a'') をとり、そこでの跡を ''a'' の跡と呼ぶこともある。これは[[最小多項式]]の[[解]]の総和にひとしい。特に、単に[[代数的数]]の跡と言った場合には有理数体上の跡 tr<sub>'''Q'''(''a'')/'''Q'''</sub>(''a'') をさす。
が成り立っているようなものについては、ふたたび ''f'' のみによる量として跡 tr(''f'') = &sum; ''y''<sub>''i''</sub>( ''x''<sub>''i''</sub>) が定義される。このような作用素はトレースクラス(L<sup>1</sup>級)の作用素とよばれる。
; トレースクラス
: 体 ''K'' 上にノルムが与えられているとき、無限次元空間バナッハ空間上の作用素 ''f'' で、&sum; |''y''<sub>''i''</sub>(''z'') ''x''<sub>''i''</sub>| が有限となるような''V'' の元の列 ''x''<sub>1</sub>, ..., ''x''<sub>''n''</sub>,... と双対空間 ''V''* の元の列 ''y''<sub>1</sub>, ..., ''y''<sub>''n''</sub> , ... によって
:: ''f''(''z'') = &sum; ''y''<sub>''i''</sub>(''z'') ''x''<sub>''i''</sub>
: が成り立っているようなものについては、ふたたび ''f'' のみによる量として跡 tr(''f'') = &sum; ''y''<sub>''i''</sub>( ''x''<sub>''i''</sub>) が定義される。このような作用素はトレースクラス(L(''L''<sup>1</sup>-級)の作用素とよばれる。
 
== 性質 ==
二つの線形空間 ''E'', ''F'' とそれらの間の線形写像 ''a'': ''E'' &rarr; ''F'', ''b'': ''F'' &rarr; ''E'' について tr(''ab'') = tr(''ba'') が成り立つ。特に、正方行列 ''A'' と可逆行列 ''X'' について不変性 tr(''A'') = tr(''XAX''<sup>-&minus;1</sup>) が成り立っている。行列の冪に関する跡 ''p''<sub>''k''</sub>(''A"'') = tr(''A''<sup>''k''</sup>) もこのような不変性を持つ。一般に正方行列の成分に関する多項式写像 &phi;: M<sub>''n''</sub>(''K'') &rarr; ''K'' で、このような不変性 &phi;(''A'') = &phi;(''XAX''<sup>-&minus;1</sup>) を満たすものは、''p''<sub>1</sub>, ..., ''p''<sub>''n''</sub>に関する多項式によって表すことができる。
 
== 関連項目 ==
;* [[行列式]]:正方行列の固有値の[[総乗]]
 
== 参考文献 ==