「初期のヒト属による火の利用」の版間の差分

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竃馬 (会話 | 投稿記録)
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[[Image:Homo erectus.JPG|thumb|225px|火を使ったことで知られる初期の[[ヒト属]]、[[ホモ・エレクトス]]の再現像]]
 
'''初期のヒト属による火の利用'''が始まってから、[[ヒト属|ヒト]]の[[社会文化的進化]]は急激に早まった。ヒトは火を[[調理]]に使い、暖を取り、獣から身を守るのに使い、それにより個体数を増やしていった。火を使った調理は、ヒトが[[タンパク質]]や[[炭水化物]]を摂取するのを容易にした。火により寒い夜間にも行動ができるようになり、あるいは寒冷地にも住めるようになり、ヒトを襲う獣から身を守れるようになった<ref name="energy" />。
 
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== 火が生活に与えた影響 ==
[[Image:Zhoukoudian Caves July2004.jpg|thumb|right|250px|[[周口店の北京原人遺跡]]。[[北京原人]]はH.エレクトスの一種であり、火を使っていたと考えられている。]]
人間ヒトの生活は、火とその明るさで大きな影響を受けた。夜間の活動も可能となり<ref>{{cite book|title=Genes, Culture, And Human Evolution: A Synthesis|last=Stone|first=Linda|coauthors=Paul F. Lurquin, Luigi Luca Cavalli-Sforza|page=33|publisher=Blackwell Publishing|year=2007}}</ref>、獣や虫除けにもなった<ref name="energy">{{cite web|url=http://www.dieoff.org/page137.htm|title=Energy and Human Evolution|accessdate=2007-11-12|last=Price|first=David}}</ref><ref name="James" />。また、当初は火を起こすのが難しかったため、火は集団生活で共用されるべきものとなり、それにより集団生活の必要性が増した<ref name=kimu/>。
 
火の使用は栄養価の向上にも繋がった。タンパク質は加熱することで、栄養を摂取しやすくなる<ref name="energy" /><ref name="zhoukoudian">{{cite journal|last=Weiner|first=S.|coauthors=Q. Xu, P. Goldberg, J. Liu, O. Bar-Yosef|title=Evidence for the Use of Fire at Zhoukoudian, China|journal=Science|volume=281|pages=251–253|year=1998|doi=10.1126/science.281.5374.251|pmid=9657718|issue=5374}}</ref><ref name="Eisley">{{cite journal|last=Eisley|first=Loren C.|year=1955|title=Fossil Man and Human Evolution|journal=Yearbook of Anthropology|pages=61–78|publisher=University of Chicago Press|accessdate=2007-11-12}}</ref>。黒化した獣の骨から分かるように、肉も火の使用の初期から加熱調理されており、動物性タンパク質からの栄養摂取をより容易にした<ref>{{cite web|url=http://www.digonsite.com/drdig/earlyman/33.html|title=What evidence is there that Homo erectus used fire? Why did they use it?|accessdate=2007-11-12}}</ref><ref name="thought">{{cite journal|title=Food for Thought|last=Gibbons|first=Ann|date=June 15, 2007|journal=Science|accessdate=2007-11-12|url=http://www.sciencemag.org/cgi/reprint/316/5831/1558.pdf|format=pdf|doi=10.1126/science.316.5831.1558|volume=316|pages=1558|pmid=17569838|issue=5831}}</ref>。加熱調理された肉の消化に必要なエネルギーは生肉の時よりも少なく、加熱調理はコラーゲンのゼラチン化を助け、炭水化物の結合を緩めて吸収しやすくする<ref name="thought" />。また、病原となる寄生虫や細菌も減少する。
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実際、H.エレクトスの歯や歯の付着物から、加熱調理無しには食べるのが難しい硬い肉や[[根菜]]などが見つかっている<ref name="crunchy">{{cite news|url=http://www.abc.net.au/science/news/stories/2005/1514032.htm|title=News in Science - Homo erectus ate crunchy food - 22/11/2005|accessdate=2007-11-12|last=Viegas|first=Jennifer|date=November 22, 2005}}</ref><ref>{{cite web|url=http://anthro.palomar.edu/homo/homo_2.htm|title=Early Human Evolution:&nbsp; Homo ergaster and erectus|accessdate=2007-11-12}}</ref>。
 
== 考古学的考証の難しさ ==
石器時代のような大昔の遺跡の発掘作業において、ヒトが火を使っていたかどうかを調べるのは非常に困難である。小規模な火の跡は風雨にさらされるなどして証拠が遺物として残らない場合があるし、一方で、化学反応、火山活動、落雷などによる[[自然発火]]・加熱現象があるためである。また、洞窟などは風雨に晒されにくいため、火を使った跡が比較的残りやすいが、古代人が住んだ洞窟は石灰岩など浸食されやすい石でできている場合が多く<ref name=hino/>{{rp|89}}、確実に遺跡が残るとは限らない。
 
オーストラリアの人文学者[[レイモンド・ダート]]は、自身が発見した[[アウストラロピテクス・アフリカヌス|アウストラロピテクス]]が300万から200万年前に火を使っていたと信じ、これをアウストラロピテクス・プロメテウス([[プロメーテウス]]は人類に火を伝えたとされるギリシア神話の神)と名付けたが、今では間違いだったと判明している<ref name=kyo>『石器時代文明の驚異』</ref>{{rp|208}}。
 
== 火を使っていた可能性のある時代(前期旧石器時代) ==
{{Location map+|Africa|width=250|float=right|caption=不確かだが80万年以上前に火が使われた可能性がある場所|AlternativeMap=Africa relief location map.jpg|places=
{{Location map~|Africa|lat_deg=0.623462|lat_min=0|lon_deg=36.074982|lon_min=0|position=left|background=|label=バリンゴ湖}}
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[[南アフリカ共和国]]の{{仮リンク|スワートクランス|en|Swartkrans}}でも火を使ったような跡が見つかっており<ref>Renfrew and Bahn (2004). ''Archaeology: Theories, Methods and Practice'' (Fourth Edition). Thames and Hudson. Page 341.</ref>、150万から100万年前のものと見られる<ref name=hino/>{{rp|88}}。見つかった動物の焼けた骨のいくつかは、{{仮リンク|アシュール文化|en|Acheulean|label=アシュール石器}}、[[骨角器]]、明らかに人が切った跡を残した骨などと共に見つかっている<ref name="James" />。ここにいたのも[[ホモ・エレクトス]]と考えられている。ただし、見つかった骨が当時の人に焼かれたものであるとの決定的な証拠は無い<ref name=hino/>。
 
== 火の使用の始まり(前期旧石器時代) ==
=== アフリカと中近東 ===
{{Location map+|Africa|width=250|float=right|caption=関係地図|AlternativeMap=Africa relief location map.jpg|places=
{{Location map~|Africa|lat_deg=-34.108087|lat_min=0|lon_deg=24.389992|lon_min=0|position=top|background=|label=クラシーズ河口洞窟}}
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イスラエルの[[テルアビブ]]から12km東にある{{仮リンク|ケセブ洞窟|en|Qesem Cave}}では、[[更新世]]後期である紀元前38万から20万年前に火を日常的に使ってた跡が残っている。強い火で加熱された骨や土の塊から、火の近くで獣を殺して解体したことを示唆している<ref>{{cite journal |author=Karkanas P, Shahack-Gross R, Ayalon A, ''et al.'' |title=Evidence for habitual use of fire at the end of the Lower Paleolithic: site-formation processes at Qesem Cave, Israel |journal=J. Hum. Evol. |volume=53 |issue=2 |pages=197–212 |year=2007 |month=August |pmid=17572475 |doi=10.1016/j.jhevol.2007.04.002 |url=http://www.tau.ac.il/humanities/archaeology/info/ran_barkai/HabitualUseofFireJHE2007.pdf}}</ref>。
 
=== ヨーロッパ ===
{{Location map+|Europe|width=250|float=right|caption=関係地図|AlternativeMap=Europe relief laea location map.jpg|places=
{{Location map~|Europe|lat_deg=47.619269|lat_min=0|lon_deg=18.376651|lon_min=0|position=right|background=|label=ベルテスゾロス}}
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また、スペインの{{仮リンク|トラルバ|en|Torralba (site)}}や{{仮リンク|アンブロナ|en|Ambrona}}では、紀元前50万から30万年前の炭と木が、{{仮リンク|アシュール文化|en|Acheulean}}の石器と共に見つかっている<ref name="James" />。フランスの{{仮リンク|サン・エステーヴ・ジョンソン|en|Saint-Estève-Janson}}では20万年前の炉が5つと赤土がエスカーレ洞窟の中で見つかっている<ref name="James" />。
 
=== アジア ===
{{Location map+|World|width=350|float=right|caption=関係地図|places=
{{Location map~|World|lat_deg=39.689851|lat_min=0|lon_deg=115.93224|lon_min=0|position=top|background=|label=周口店}}
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[[ジャワ島]]の{{仮リンク|トリニール|en|Trinil}}でも焼かれた骨と炭と見られる跡が残っている<ref name="James" />。(いわゆる[[ジャワ原人]]の遺跡。)これは50万年前のものと見られている<ref>Knox College [http://courses.knox.edu/anso101/07Australopithecus.pdf Early Hominids]</ref>。
 
== ネアンデルタール人の登場(中期旧石器時代) ==
前期旧石器時代の[[ホモ・エレクトス]]が火を使っていたかどうかについては異論を唱える学者もいる。しかし、[[中期旧石器時代]]の[[ネアンデルタール人]](ホモ・ネアンデルターレンシス)が火を使っていたことに関しては異論が少ない<ref name=kyo/>{{rp|211}}。
 
ネアンデルタール人による火の使用の跡はいくつも見つかっている。例えばフランスの[[ドルドーニュ県]]XVI洞窟からは、乾燥した[[地衣類]]を燃料に使った6万年前の炉の跡が見つかっている<ref name=kyo/>{{rp|211}}。また、{{仮リンク|ブリュニケル洞窟|fr|Grotte de Bruniquel}}からは少なくとも4万7600年前の炉の跡が見つかっている<ref name=kyo/>{{rp|211}}。
 
==関連項目 脚注 ==
*[[火#火の利用の始まり]]
*[[人類の進化#ホモ・エルガスターとホモ・エレクトゥス]]
*[[発火法]]
*[[テクノロジー#火]]
 
==脚注==
{{Reflist|2}}
 
== 参考文献 ==
* {{Cite book
| 和書
124 ⟶ 117行目:
| isbn = 4-309-22352-4
}}
 
== 関連項目 ==
* [[火#火の利用の始まり]]
* [[人類の進化#ホモ・エルガスターとホモ・エレクトゥス]]
* [[発火法]]
* [[テクノロジー#火]]
 
{{DEFAULTSORT:しよきのひとそくによるひのりよう}}
[[カテゴリ:火]]