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'''士気'''({{lang-en-short|morale}})とは一般に部隊の任務を遂行する上で有用な兵員の心理的な積極性や耐久性を指す。
'''士気'''(しき)は、集団、特に軍隊における部隊の精神的な精強度をいう。'''モラール'''({{lang-en-short|morale}})とも。
 
== 概要 ==
戦闘部隊が発揮する[[戦闘力]]には兵員数や装備などの物質的的要素だけではなく、団結や錬度などの心理的要素が関わっていることが分かっている。士気とは戦闘力を構成する心理的要素の一つであり、[[心理学]]的には[[集団態度]]として理解することができる。つまり戦闘に対する集団の中で形成され、保持されている態度であり、軍事教育や訓練やリーダーシップによって強化することが可能である。シブタニの研究では士気の水準が高い部隊では構成員が所属する部隊を誇りとし、部隊の評判に対して強い反応を示し、部隊の象徴を提示することに大きな喜びを覚えることが報告されている。
士気は主に勝利への集団的な強い意志によって生ずると考えられており、[[兵器]]や[[陣地]]などの有形の戦力以上に[[戦闘]]の勝敗に影響する場合もある。士気は集団行動への個人の積極性でもあり、集団内におけるコミュニケーションによって維持される。また指揮官の能力、部下の上官に対する信頼、自らの[[兵器]]や装備に対する信頼、自身の知識・体力・技術などに対する自信によって支えられているものである。また致命的な危機に直面しても、先天性、使命感、責任感、知的な意志などによって恐怖を抑える勇気も士気の維持増進に直結する。集団に対する帰属意識も士気に大きく貢献する。具体的には集団への忠誠心、自身が負傷した時に仲間が助けてくれるという信頼、優秀な集団への誇り、自身の功績を認定してくれるという励み、などが集団同一視を生み出し、自己無力感を解消する。
 
士気を左右する要因として部隊を組織している個々人の生理学的、心理的な状態や性質が士気に影響を与えることが報告されている。マニングは暖かい食事や入浴、睡眠などの健康増進のための措置の重要性を指摘している。またストーファーは太平洋戦線の兵士に対する調査を行い、相対的剥奪の概念を導入しながら、過酷な環境においても当初期待していたよりも多くの物質的な快適さや満足を兵員に提供することで士気が急速に高揚することと、覚悟していたよりも多くの不愉快さや不満がもたらされた時に士気が低下するという因果関係を考察した。また世界大戦後のベトナム戦争や研究から士気を決定づける重要な要素として明確な目標を認識することの重要性が報告されている。
逆に士気が低下すると、兵士の自発的な判断による効率的な戦闘が期待しづらくなり戦力は低下、抗命や[[戦争神経症]]が多発する。「士気崩壊」と呼ばれる状態に陥ると士気の低下が部隊全体に伝染し組織的な戦闘が困難になる。撤退はしばしば敗走に変わり、脱走が相次いで部隊が霧散消失する。
 
致命的な危機に直面しても、先天性、使命感、責任感、知的な意志などによって恐怖を抑える勇気も士気の維持増進に直結する。集団に対する帰属意識も士気に大きく貢献する。具体的には集団への忠誠心、自身が負傷した時に仲間が助けてくれるという信頼、優秀な集団への誇り、自身の功績を認定してくれるという励み、などが集団同一視を生み出し、自己無力感を解消する。逆に士気が低下すると、兵士の自発的な判断による効率的な戦闘が期待しづらくなり戦力は低下、抗命や[[戦争神経症]]が多発する。「士気崩壊」と呼ばれる状態に陥ると士気の低下が部隊全体に伝染し組織的な戦闘が困難になる。撤退はしばしば敗走に変わり、脱走が相次いで部隊が霧散消失する。
 
== 参考文献 ==
*Baynes, J. C. 1967. Morale. New York: Praeger.
*[[防衛大学校]]・防衛学研究会編『軍事学入門』(かや書房、2000年)
*George, A. L. 1971. Primary groups, organization, and military performance. in Handbook of military institutions, ed. R. W. Little, pp. 293-318. Beverly Hills, Calif.: Sage.
*服部実『防衛学概論』(原書房、1980年)
*Glass, A. J. 1973. Lessons learned. in Neuropsychiatry in World War Ⅱ, zone of the interior, ed. R. L. Bernucci and A. J. Glass, pp. 735-59. Washington, D.C.: Office of the Surgeon General, Department of the Army.
*Holmes, R. 1985. Acts of war. New York: Free Press.
*Kellett, N. A. 1982. Combat motivation. Boston: Kluwer Nijhoff.
*Manning, F. J. 1991. Morale, cohesion & esprit. in Handbook of military psychology, ed. R. Gal and A. D. Mangelsdorff. New York: Wiley.
*Mowday, R. T., L. W. Porter, and R. M. Steers. 1982. Employee-organization linkages. New York: Academic Press.
*Richardson, F. M. 1978. Fighting spirit. London: Leo Cooper.
*Shibutani, T. I. 1978. The derelicts of Company K: A sociological study of demoralization. Berkeley, Calif.: Univ. of California Press.
*Stouffer, S. A., A. A. Lumsdaine, M. H. Lumsdaine, R. M. Williams, M. B. Smith, I. L. Janis, S. A. Star. and L. S. cottrell. 1949. The American soldier. Princeton, N.J.: Princeton Univ. Press.
 
== 関連項目 ==
*[[集団]] - [[集団行動]] - [[動機づけ]] - [[コミュニケーション]] - [[リーダーシップ]]
*[[集団]]
*[[軍事的リーダーシップ]] - [[軍事教育]] - [[団結]] - [[戦闘動機づけ]]
*[[集団行動]]
*[[戦闘力]] - [[戦闘効率]] - [[心理戦]]
*[[リーダーシップ]]
*[[井ケイの戦い]] - 士気を高めるために「背水の陣」が用いられたことで知られる。
 
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