「連座制」の版間の差分

削除された内容 追加された内容
経済準学士 (会話 | 投稿記録)
条文を挙げた/裁判例を判例集によって特定/節立てを変える。
1行目:
'''連座制'''(れんざせい)とは、候補者の関係者が[[選挙違反]]において[[秘書]]や[[親族]]が(選挙罪)をした[[ことを理由として、選挙違反]]の結果、候補者がに直接関与していなくとも候補者も処分について、当選無効等の不利益受け与える制度のこと。
 
== 概要各国の連座制 ==
=== イギリス ===
日本の[[公職選挙法]]では、買収や利害誘導、新聞及び雑誌の不法利用の罪により、候補者の総括責任者、出納責任者、地域主宰者については、刑に処せられたとき、候補者の親族や秘書および、組織的選挙運動管理者の場合は、禁固以上の刑に処せられた場合(執行猶予を含む)には候補者の当選は無効となり、同一[[選挙区]]から5年間の立候補が禁止される([[重複立候補]]をしていた場合、選挙区と比例区双方が立候補禁止対象になる)。また、出納責任者が法定選挙費用をオーバーした場合も連座制の適用を受ける。しかし、連座制が適用されて5年経過しなくても、選挙区を変更すれば立候補できることから、処罰が不十分ではないかとの声もある。
[[イギリス]]の[[1883年腐敗防止法]]においては、運動員による選挙違反が立証された場合、候補者は、選挙違反に対する関与の有無を問わず、その当選が無効とされる。また、当該候補者は、違反を犯した選挙区からの立候補を永久に禁止され、その他の選挙区においても7年間立候補をすることが禁止される。
 
同法は、腐敗を極めていた選挙の健全化に大きく貢献した。
このような制度の代表的なものはイギリスの1883年腐敗防止法で、運動員による選挙違反が立証されれば、候補者が関与していなくても当選を無効とする制度を定めたことにより、腐敗を極めていた選挙の健全化に大きく貢献した。イギリスの連座制では違反を犯した選挙区からの立候補は永久にできなくなり、その他の選挙区でも7年間の立候補ができなくなるなど、日本の連座制よりも厳格である。
 
===適用範囲 日本 ===
[[日本]]の[[公職選挙法]]における連座制は、同法251条の2から251条の4において規定されている。その内容は、以下の通りである。
;総括主宰者
;出納責任者
:公職の候補者又は出納責任者と意思を通じて当該公職の候補者のための選挙運動に関する支出の金額のうち法定費用額の2分の1以上に相当する額を支出した者を含む
:「出納責任者」とは、公選法180条の規定により出納責任者として選任届出された者をいうのであって、実際に出納責任者として同法に定める職務を行ったか否かには関係ないと解すべきである
;地域主宰者
:3以内に分けられた選挙区(選挙区がないときは、選挙の行われる区域)の地域のうち1又は2の地域における選挙運動を主宰すべき者として公職の候補者又は総括主宰者から定められ、当該地域における選挙運動を主宰した者をいう
;親族(父母、配偶者、子、兄弟姉妹)
:公職の候補者等又は総括主宰者又は地域主宰者と意思を通じて選挙運動をしたものに限る
;秘書
:公職の候補者等に使用される者で当該公職の候補者等の政治活動を補佐するものをいう。
::公職の候補者等の秘書という名称を使用する者又はこれに類似する名称を使用する者について、当該公職の候補者等がこれらの名称の使用を承諾し又は容認している場合には、当該名称を使用する者は、公職の候補者等の秘書と推定する
;組織的選挙運動管理者等
:公職の候補者又は公職の候補者となろうとする者と意思を通じて組織により行われる選挙運動において、当該選挙運動の計画の立案若しくは調整又は当該選挙運動に従事する者の指揮若しくは監督その他当該選挙運動の管理を行う者をいう。
::「組織」とは、特定の候補者等を当選させる目的の下に、複数の人が、役割を分担し、相互の力を利用し合い、協力し合って活動する実態をもった人の集合体及びその連合体をいうと解される。なお、組織には、通常は、何らかの指揮命令系統が存在する場合が多いと考えられるが、ピラミッド型でなく、水平的に役割を分担する場合には、指揮命令系統が存在しなくても、選挙運動を遂行し得る「組織」が形成されることがあり得ると考えられる。
*「意志を通じて」とは候補者等と組織の総括者、すなわち、選挙運動全体の具体的・実質的な意思決定を行い得る者との間で、選挙運動が組織により行われることについて、相互に認識をし、了解し合うことを意味すると解される。もっとも、候補者等において、その組織の具体的な名称や、具体的な組織の範囲、組織構成、組織の構成員、その組織により行われる選挙運動のあり方、指揮命令系統等の認識までは、必要でないとされている。
 
==== 連座の具体的効果 ====
===免責規定===
以下のいずれかに該当する場合、候補者<ref>公職選挙法上の用語としては、「公職の候補者又は公職の候補者となろうとする者」(「公職の候補者等」)という(公職選挙法251条の2第1項柱書)。</ref>の当選が無効とされ、以後5年間、立候補した選挙区からの立候補が禁止される(公職選挙法251条の2から251条の4)。[[重複立候補]]をしていた場合には、選挙区と比例区いずれについても立候補が禁止される。
以下の場合に該当する限り、連座制の効果のうち、立候補禁止の効果及び衆議院比例代表選挙における復活当選の無効に限って連座制は適用されない(通常の当選無効の効果は免れることができない)。ただし、組織的選挙運動管理者等の違反に限っては、免責規定に該当する限り、当選無効も含めて全ての連座制の効果が及ばないこととなる。
しかし、連座制が適用されて5年経過しなくても選挙区を変更すれば立候補できることから、処罰が不十分ではないかとの声もある{{誰|date=2010年8月}}。
 
なお、[[#連座制適用の手続]]の節において述べる通り、以下のいずれかに該当する場合に直ちに当選無効及び立候補禁止の効力が生じるわけではない(公職選挙法251条の5)。
 
* 候補者の総括主宰者<ref>選挙運動を総括主宰した者をいう(公職選挙法251条の2第1項1号)。</ref>、出納責任者<ref>選挙運動に関する収入及び支出の責任者をいう(公職選挙法180条1項)。</ref>、地域主宰者<rer>公職選挙法上の用語としては、「3以内に分けられた選挙区(選挙区がないときは、選挙の行われる区域)の地域のうち1又は2の地域における選挙運動を主宰すべき者として公職の候補者又は第1号に掲げる者から定められ、当該'''地域における選挙運動を主宰した者''' 」という(公職選挙法251条の2第1項2号)。なお、「第1号に掲げる者」とは、総括主宰者である。</ref>が、各種の買収及び利害誘導罪(公職選挙法221条から223条)又は新聞紙、雑誌の不法利用罪(同法223条の2)によって刑に処せられた場合<ref>「刑に処せられた場合」とは、刑務所に収監されるなどして刑が執行されたことではなく、裁判所において刑が言い渡されたことを意味し(公職選挙法11条1項4号参照)、執行猶予つきの判決を言い渡された者も含まれる(同項5号参照)。</ref>
* 候補者の父母、配偶者、子若しくは兄弟姉妹又は秘書<ref>候補者に使用される者で当該候補者の政治活動を補佐する者をいう(公職選挙法251条の2第1項5号)。秘書と名乗っているだけで秘書としての実質的な活動を行っていなかったことを理由に、ここでいう「秘書」には該当しないとの弁解を困難にするため、候補者の許諾を得て秘書を名乗っていた者は、「秘書」に該当することが[[推定]]される(裁判所は、「秘書」に該当しないことを候補者が立証しない限り、「秘書」に該当すると認定する。)。</ref>若しくは組織的選挙運動管理者<rer>公職の候補者又は公職の候補者となろうとする者と意思を通じて<ref>「意志を通じて」とは候補者等と組織の総括者、すなわち、選挙運動全体の具体的・実質的な意思決定を行い得る者との間で、選挙運動が組織により行われることについて、相互に認識をし、了解し合うことを意味すると解される。もっとも、候補者等において、その組織の具体的な名称や、具体的な組織の範囲、組織構成、組織の構成員、その組織により行われる選挙運動のあり方、指揮命令系統等の認識までは、必要でないとされている(最高裁判所平成9年3月13日判決・最高裁判所民事判例集51巻3号1453頁所収)。</ref>組織により行われる選挙運動において、当該選挙運動の計画の立案若しくは調整又は当該選挙運動に従事する者の指揮若しくは監督その他当該選挙運動の管理を行う者をいう(公職選挙法251条の3第1項)。「組織」とは、特定の候補者等を当選させる目的の下に、複数の人が、役割を分担し、相互の力を利用し合い、協力し合って活動する実態をもった人の集合体及びその連合体をいう(最高裁判所平成9年3月13日判決・最高裁判所民事判例集51巻3号1453頁所収参照)。なお、組織には、通常は、何らかの指揮命令系統が存在する場合が多いと考えられるが、ピラミッド型でなく、水平的に役割を分担する場合には、指揮命令系統が存在しなくても、選挙運動を遂行し得る「組織」が形成されることがあり得ると考えられる。{{誰|date=2010年8月}}</ref>のうち、当該候補者又は総括主宰者若しくは地域主宰者と意思を通じて選挙運動をした者が、各種の買収及び利害誘導罪(公職選挙法221条から223条)又は新聞紙、雑誌の不法利用罪(同法223条の2)によって、禁固以上の刑に処せられた場合
* 出納責任者が法定選挙費用をオーバーした場合(公職選挙法251条の2第3項)
 
また、公務員等<ref>国又は地方公共団体の公務員、特定独立行政法人又は特定地方独立行政法人の役員又は職員及び公庫の役職員をいう。(公職選挙法251条の4第1項)</ref>であった者が当選した場合については、かつての同僚である公務員等が指示・要請等を受けて選挙犯罪を行ったとき、連座制が適用される(公職選挙法251条の4第1項)。
 
==== 免責規定 ====
以下の場合に該当する限り、連座制の効果のうち、立候補禁止の効果及び衆議院比例代表選挙における復活当選の無効に限って連座制は適用されない(公職選挙法251条の2第5項、251の4第2項)。ただし、通常の当選無効の効果は免れることができない)。ただし、組織的選挙運動管理者等の違反に限っては、免責規定に該当する限り、当選無効も含めて全ての連座制の効果が及ばないこととなる
 
また、組織的選挙運動管理者等の違反に限っては、免責規定に該当する限り、当選無効も含めて全ての連座制の効果が及ばない(公職選挙法251条の3第2項)。
;おとり行為
:行為者以外の者からの誘導又は挑発によってされ、当該公職の候補者等の当選を失わせ又は立候補の資格を失わせる目的をもつて、当該公職の候補者等以外の公職の候補者等その他その公職の候補者等の選挙運動に従事する者と意思を通じてされたものであるときをいう。
33 ⟶ 34行目:
::候補者等に課せられる「相当な注意」は、社会通念上それだけの注意があれば、組織的選挙運動管理者等が、買収罪等の悪質な選挙犯罪を犯すことはないであろうと期待し得るものをいうと解される。
 
==== 連座制適用の手続 ====
連座制が適用され、当選無効及び立候補禁止の効力が生じるまでの流れは、以下の通りである。
;総括主宰者、出納責任者、地域主宰者の場合(処刑の通知がなされる場合)
#総括主宰者等の選挙犯罪について、有罪判決が言い渡される(刑に処される)。
:処刑の通知を公職の候補者であった者に最後の審級の裁判所が[[総務大臣]](選挙の監督官庁である[[総務省]]の長である[[国務大臣]])または総務大臣の許可を受けた[[検察官]]の申立てにより通知し、公職の候補者あった者は、総務大臣または総務大臣の許可を受けた検察官を被告に、通知された日から30日以内に、[[高等裁判所]]に対して違反者が総括責任者等に該当しないこと又は免責条項に該当することを理由として、立候補禁止又は当選無効にあたらないことの確認を求める訴訟をすることができる。
#当該有罪判決について控訴若しくは上告がなく、又は控訴及び上告がされたが、上告が棄却されて裁判手続が終了する。
;そのほかの場合
#検察官が、処刑の通知を申し立てる。
:違反者の刑が確定した時から30日以内に[[総務大臣]]または総務大臣から立候補禁止又は当選無効を求める行政訴訟提起の許可を受けた検察官が、両公職の候補者であった者を被告として、立候補禁止又は当選無効を求めて行政訴訟を提起し、その判決の結果連座制の適用となる。
#最後に審理を行った裁判所が、有罪判決が言い渡された旨を書面で候補者(であった者)に通知する(公職選挙法254条の2第1項)。
:なお、選挙の監督官庁は[[法務省]](検察官)ではなく総務省(総務大臣)である。そのため、検察官が行政訴訟を提起する場合は職権乱用を防ぐため必ず総務大臣から立候補禁止又は当選無効を求める行政訴訟提起の許可を受ける必要がある。
#通知を受けた候補者は、通知された日から30日以内に、[[検察官]]を[[被告]]として、違反者が総括主宰者等に該当しないこと又は免責条項に該当することを理由として、立候補禁止又は当選無効にあたらないことの確認を求める訴訟(公職選挙法210条1項)を[[高等裁判所]]に対して提起する。
#候補者が上記訴訟を提起しない場合には、通知された日から30日を経過した時点で、当選無効及び立候補禁止の効力が生じる(公職選挙法251条の5)。
#上記訴訟において、原告(候補者)の敗訴が確定した時点で、当選無効及び立候補禁止の効力が生じる(公職選挙法251条の5)。
 
:なまた、検察官が議員の当選無効を求めて提起した場合(公職選挙法法211条1項)には、その訴訟にいて原告(検察官)の勝訴が確定した時に当選無効及び立候補禁止の効力が生じる(同法251条の5)。<ref>選挙の監督官庁は[[法務省]](検察官)ではなく総務省(総務大臣)である。そのため、検察官が行政訴訟を提起する場合は職権乱用を防ぐため必ず総務大臣から立候補禁止又は当選無効を求める行政訴訟提起の許可を受ける必要がある。</ref>
当選無効及び立候補の禁止は、前者の場合においては、処刑の通知がきて出訴期間を過ぎても訴訟を提起しない場合、原則敗訴の判決(訴状却下の命令も含む)が確定した場合、訴えを取り下げた場合に、後者の場合は訴訟の結果、総務大臣または総務大臣の許可を受けた検察官の勝訴が確定した場合に初めて効力が発生する。
 
当選無効となった場合は、[[繰り上げ当選|繰上補充]]が可能な場合は繰上補充、それ以外の場合で[[再選挙]]の要件を満たす場合は再選挙となる。
 
なお、連座制の適用に直接関係はないが、候補者であった者に通知をした裁判所長は、上記通知をした旨を、[[総務大臣]]等に通知することとされている(同条2項)<ref>[[参議院]](比例代表選出)議員の選挙については[[中央選挙管理会]]に、その他の選挙については関係する[[地方公共団体]]の[[長]]を経て[[選挙管理委員会]] に通知する。衆議院議員選挙において重複立候補した者に対する通知をする場合には、中央選挙管理会にも併せて通知する(公職選挙法254条の2第1項)。 </ref>
 
===国政選挙における主な適用者===
89 ⟶ 95行目:
-->
 
==== 連座制に関する最高裁判例 ====
=====出納責任者該当性=====
〔最高裁昭和41年6月23日判決・最高裁判所民事判例集20巻5号1134頁所収
*公選法251条の2でいう「出納責任者」とは、公選法180条の規定により出納責任者として選任届出された者をいうのであって、実際に出納責任者として同法に定める職務を行ったか否かには関係ないと解すべきである。
*連座訴訟においては、実際に出納責任者が買収等を行ったかを証明する必要は無く、出納責任者が連座制の対象となる罪を犯したものとして刑に処せられたことが証明されれば足りる
=====秘書該当性=====
〔最高裁平成10年11月17日判決・最高裁判所裁判集民事190号223頁所収
*「秘書」に該当するというためには、単に当該候補者等の政治活動を補佐するというだけでは足り、その重要部分を補佐しており、かつ、右補佐の対象が選挙運動とは区別される政治活動であることを要すると限定解釈するべきではない。
 
=====組織的選挙運動管理者該当性=====
〔最高裁平成9年3月13日判決・最高裁判所民事判例集51巻3号1453頁所収
*「組織」とは、規模がある程度大きく、かつ一定の継続性を有するものに限られ、「組織的選挙運動管理者等」も、総括主宰者及び出納責任者に準ずる一定の重要な立場にあって、選挙運動全体の管理に携わる者に限られるというが、そのように限定的に解すべきでなく、また、「意思を通じ」についても、組織の具体的な構成、指揮命令系統、その組織により行われる選挙運動の内容等についてまで、認識、了解することを要するものとは解されない。
*会社の代表取締役が従業員の朝礼及び下請業者の慰労会に名を借りた会食の席に候補者を招いて同人に立候補のあいさつをさせ、従業員や下請業者等に対して投票及び投票の取りまとめを依頼するなどの選挙運動をすることを計画して、指揮命令系統を利用して、選挙運動を行ったものであっても、「組織」に該当し、会社の代表取締役が「組織的選挙運動管理者等」に該当するとされた事例
 
== 注 ==
<references/>
== 関連項目 ==
*[[連座]]