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'''数理論理学'''(すうりろんりがく、mathematical logic)とは、[[論理学|論理]]を[[数学]]よって研究する[[数]]の一分野である。'''記号論理学'''(きごうろんりがく、symbolic logic)とも言う。もともとは、我々が普段行っている推論を記号化し、正しい推論とは何か、そしてその正しさを確かめるにはどんな方法が存在するか、といった問題を数学的に考察する学問として誕生した。特に数学において行われる推論や証明を扱う記号論理学のことを指して数理論理学という言葉が使われることもある。
 
== 数理論理学の発祥 ==
言葉を、[[代数学]]におけると同様に文字や記号の列で表して、その変換について研究するいわゆる'''記号論理学'''、'''数理論理学'''の発祥は、19世紀の[[ジョージ・ブール]]による「論理代数」、[[ゴットロープ・フレーゲ]]の書『[[概念記法]]』に見ることができる。前者は命題論理、後者は述語論理の原型である。数学自体を数学によって研究する[[数学基礎論]]は、数理論理学なしの上はあ得な立ってものである。
 
== 数理論理学の諸体系 ==
数理論理学の体系は、我々が行う推論の中でどのようなものを記号化して考察するかによって様々な体系が存在する。そのような体系には例えば、
[[古典論理学|古典論理]][[様相論理学|様相論理]][[直観主義論理]]・多値論理などがある。本項目では、論理学において最大の重要性をもつ古典命題論理と古典1階述語論理を中心に述べる。それ以外の論理の体系についての詳細は「[[様相論理学]]」、「[[直観主義論理]]」、「[[非古典論理学]]」などを参照。
 
== 命題論理 ==
'''命題論理'''では、例えば「風が吹く」という命題を'''命題記号''' ''A'' で表し「桶屋が儲かる」という命題を命題記号 ''B'' で表したとき、「風が吹けば桶屋が儲かる(風が吹くならば桶屋が儲かる)」という命題は ''A'' → ''B'' のように記号化される。また、「風が吹き、かつ桶屋が儲かる」「風が吹くか桶屋が儲かる」「風が吹かない」という命題はそれぞれ ''A'' ∧ ''B'', ''A'' ∨ ''B'', ¬''A'' のように記号化される<ref>研究者や流派の違いによって、 → の代わりに ⊃ が用いられたり、 ¬ の代わりに ∼ などが用いられることがあるが、記号が違うだけで用法は全く同じである。</ref>。このようにして記号化された命題を命題論理の'''論理式'''と呼ぶ。正式には、論理式は次に述べるように定義される。
 
=== 用いる記号命題論理の言語 ===
命題論理では次の記号が用いられる:
#'''命題記号''' : ''A''<sub>1</sub> , ''A''<sub>2</sub> , ''A''<sub>3</sub> , ...
#'''論理記号''' : ¬ , ∧ , ∨ , → 
#'''括弧''' : ( , )
 
=== 論理式 ===
命題論理の'''論理式'''は次のように帰納的に定義される:
#命題記号 ''A''<sub>1</sub> , ''A''<sub>2</sub> , ''A''<sub>3</sub> , ... は論理式である。
#&alphaphi; と &betapsi; が論理式ならば、(¬&alphaphi;), (&alphaphi; ∧ &betapsi;), (&alphaphi; ∧ &betapsi;), (&alphaphi; → &betapsi;) 論理式である。
#上記の 1. と 2. により論理式とされるものだけが論理式である。
ここで注意するべきことがある。それは、ここで定義された論理式というものは単なる記号の有限列であって、何の意味も持っていないということである。確かに、もともと論理式は日本語(あるいは他の言語)での文命題を記号化することを意図して用意されたものであるが、論理式自体は意味を持っておらず、'''解釈'''をすることによっ通じはじめて意味を持つのである。同じ論理式であっても、ある解釈では真になる現れ、別の解釈では偽になると考えいったことがありう。こ注意は、以下述べる1階述語論理や他の論理の体系についても当てはまる。
 
=== 論理式の真偽 ===
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== 1階述語論理 ==
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:太郎は桶屋である。
:したがって太郎は儲かる。
このように「すべての…について」や、また「ある…について」といった表現を含んだ推論も扱えるようにした論理の体系が'''1階述語論理'''である。一階述語論理の言語('''1階の言語''')では、太郎という'''個体'''を ''a'' などの記号('''定数記号''')で表し、「''x'' は桶屋である」「''x'' は儲かる」のような'''述語'''を ''P''(''x''), ''Q''(''x'') などで表し、さらに「すべての ''x'' について」を ∀''x'' で表す。すると、上の推論は次のように記号化される:
:∀''x''(''P''(''x'') → ''Q''(''x''))
:''P''(''a'')
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=== 1階の言語 ===
'''1階の言語'''は次の記号からなる:
#'''変数''' : ''x''<sub>1</sub> , ''x''<sub>2</sub> , ''x''<sub>3</sub> , ...
#'''論理記号''' : ¬ , ∧ , ∨ , → , ∀ , ∃ (∀ は'''全称量化記号'''、∃ は'''存在量化記号'''と呼ばれる。)
#'''括弧''' : ( , )
#'''述語記号''' : 各正の整数 ''n'' に対して、いくつか(無限個でも0個でもよい)の n-変数述語記号と呼ばれる記号
#'''関数記号''' : 各正の整数 ''n'' に対して、いくつか(無限個でも0個でもよい)の n-変数関数記号と呼ばれる記号
#'''定数記号''' : いくつか(無限個でも0個でもよい)の定数記号と呼ばれる記号
2変数述語記号の中には、'''等号'''と呼ばれる特別な記号 = が含まれることもある。一階の言語は一つではなく、述語記号・関数記号・定数記号に何を用いるかによって無限に存在する。ただし、どの一階の言語にも少なくとも一つは述語記号が含まれているものとする。
 
=== 項 ===
一階の言語における'''項'''は次のように定義される:
具体的には ''n'' 個の項 ''x''<sub>1</sub>, ''x''<sub>2</sub>, ..., ''x''<sub>''n''</sub> と ''n'' 変数関数記号 ''f'' によって項 ''f''(''x''<sub>1</sub>, ''x''<sub>2</sub>, ..., ''x''<sub>''n''</sub>)
#変数と定数記号はすべて項である。
が作られる。
具体的には ''n'' 個の項 #''xt''<sub>1</sub>, ''x''<sub>2</sub>, ..., ''xt''<sub>''n''</sub> と が項で ''f'' が ''n'' -変数関数記号 ならば、''f'' によって項 ''f''(''xt''<sub>1</sub>, ''x''<sub>2</sub>, ..., ''xt''<sub>''n''</sub>) は項である。
#上記の 1. と 2. により項とされるものだけが項である。
 
=== 論理式 ===
ある ''n'' -変数述語記号 ''pP'' によって論理式と項 ''pt''(<sub>1</sub> , ..., ''xt''<sub>1''n''</sub>, を用いて ''xP t''<sub>21</sub>, ..., ''xt''<sub>''n''</sub>) が作らと表される (記号列を''n'原子論理式' = 0, 1, 2, ...)''という
さらに論理式 ''A'', ''B'', ... から論理記号 ∀''x'', ∃''x'' によって ∀''x A'', ∃''x A'' なる論理式が作られる([[量化]])。
 
'''論理式'''は次のように定義される:
#原子論理式は論理式である。
#&phi; と &psi; が論理式ならば、(¬&phi;), (&phi; ∧ &psi;), (&phi; ∧ &psi;), (&phi; → &psi;) は論理式である。
#&phi; が論理式で ''x'' が変数ならば、∀x&phi; , ∃x&phi; は論理式である。
#上記の 1. と 2. と 3. により論理式とされるものだけが論理式である。
 
=== 論理式の真偽 ===
論理式から論理式を導き出す推論規則として、たとえば論理式 ''A'' と ''A'' → ''B'' とから ''B'' を導くことができる。これは[[三段論法]]の一種である。三段論法とは、''F'' → ''G'', ''G'' → ''H'' から ''F'' → ''H'' を導く推論規則で、より正確には
:∀ ''x'' {(''G''(''x'') → ''H''(''x'')) ∧ (''F''(''x'') → ''G''(''x''))} ⇒ ''F''(''x'') → ''H''(''x'')
すなわち、どんな ''x'' を取っても、''F'' ならば ''G''、かつ ''G'' ならば ''H'' が成り立つとき、''F'' ならば ''H'' である、ということである。
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== 意味論と証明構文論 ==
数理論理学の各分科での研究課題方法は、大きく[[ヒルベルト・プログラム|証明論]]・[[モデル理論|意味論]](semantics)と構文論(syntax)に分けられる。
 
=== 意味論 ===
意味論は、上で述べたように論理式に解釈を与え、その意味を考えることによって論理的な真理というものをとらえようとする方法である。現在では、論理的に正しい推論とは何か、といった論理学本来の目的から離れ、数学的な構造を一般的に研究する[[モデル理論]]という分野に発展した。
意味論では、論理式で記述される命題の「意味」を、何らかの数学的対象に写像した上で、これらの数学的対象を研究する。述語論理における意味の与え方の一例としては、実在物 (Entity) の全体の集合 ''E'' と真偽の集合 {0, 1} との直和を世界と定め、素項の集合から ''E'' への写像 ''f'' の各々に述語言語から世界への意味写像 ''f''<sup> ∗</sup> を対応させる規則を然るべく定め、 意味写像を用いて論理式の真偽の概念を定める等々の方法がある。
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=== 証明構文論 ===
{{main|証明論}}
証明論とは数学における証明を記号列と見なす立場(つまり syntax の立場)からの研究であり、20世紀初頭に[[ダフィット・ヒルベルト|ヒルベルト]]により数学の基礎付けを目的として創始された。この方面での重要な成果としては、[[ゲルハルト・ゲンツェン|ゲンツェン]]による LK の基本定理、すなわち「式 ''S'' が LK で provable 証明可能ならば、''S'' は LK で[[三段論法]]なしでも provable 証明可能である」があげられる。この定理は「対偶や背理法のような間接証明法を用いて証明できる命題は、間接証明法を用いなくても証明できる」というようなことを一般化した、論理について成り立つ非常に美しい法則である。基本定理の応用としては、命題論理・述語論理の無矛盾性、そして命題論理の決定可能性がある。また、この方面の研究としては同じくゲンツェンによる自然数論の無矛盾性の証明があげられる。
 
=== 完全性定理 ===
意味論と証明論を関連付ける重要な定理に'''完全性定理'''がある。完全性定理とは。一階述語論理における完全性定理はクルト・ゲーデルによって証明された
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