「外傷初期診療ガイドライン日本版」の版間の差分

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== Secondary Survey ==
Primary Surveyの完了、蘇生の継続、ABCの安定を確認した後で行なわれるものである。全身において系統的に損傷を検索するため、解剖学的評価に主眼を置く。また、Primary Surveyにおいて切迫するDが確認された場合、これへの対処が最優先となる
 
=== 病歴の聴取 ===
病歴聴取に当たっては'''AMPLE'''を重視する。
* '''A'''llergy: [[アレルギー]]歴
* '''M'''edication: 服用薬
* '''P'''ast history & Pregnancy: 既往歴・妊娠
* '''L'''ast meal: 最終の食事
* '''E'''vents & Environment: 受傷機転や受傷現場の状況
 
=== 全身検索 ===
; 頭部・顔面
{{節stub}}
:* 頭痛・視力低下・複視・聴力障害・咬合障害
:* 眼損傷・鼓膜損傷
:* 頭蓋底骨折: [[パンダ目|パンダの目]]徴候や[[:en:Battle's sign|バトル徴候]](乳様突起耳介後部の皮下腫脹変色)
:* 陥没骨折・顔面骨骨折・上顎/下顎骨骨折
:* 口腔・鼻腔内損傷
:などに注意する。
; 頚部
: 頚椎・頚髄損傷を疑う場合は、頸椎X線3方向撮影を行なう。なお、頚部観察中は頚椎カラーを外すが、これ以外のSecondary Surveyの間は、原則としてカラーは装着しておく。
; 胸部
: 視診・聴診・触診・打診に加え、[[心電図]]および[[X線撮影#胸部X線写真|胸部X線写真]]を確認する。この際、下記のPATBED2Xの8外傷に注意する。
:* '''P'''ulmonary contusion: [[肺挫傷]]
:* '''A'''ortic rupture: 大動脈損傷
:* '''T'''racheobronchial rupture: 気管損傷
:* '''B'''lunt cardiac contusion: 鈍的心挫傷
:* '''E'''sophageal rupture: 食道損傷
:* '''D'''iaphragmatic rupture: 横隔膜損傷
:* '''P'''neumothorax: 気胸
:* '''H'''emothorax: 血胸
; 腹部
: 腹腔内出血と腹膜炎に注意して、視診・聴診・触診・打診に加えて[[FAST検査]]を再度、反復して実施するとともに、必要に応じて腹部造影CT検査を行なう。管腔臓器損傷の診断はしばしば困難であるが、6時間以内に開腹術の要否を判断することが求められる。またこの際、診断的腹腔洗浄が有用である。
; 骨盤・会陰
: 骨盤骨折の診断では、骨盤X線単純写真が重要である。これで骨盤骨折を否定したのち、生殖器、会陰、肛門の診察を施行する。可能なら直腸診を行ない、直腸損傷、腹膜炎、後部尿道損傷に注意する。
; 四肢
: 骨折や脱臼を疑う所見に注意し、これが疑われる場合は自他動運動を制限してX線撮影を行なう。一方、これ以外の部位において自動運動が可能なら、骨折や脱臼、重篤な軟部組織損傷を否定できる。また、動脈損傷に注意して、CRT([[:en:Capillary refill|Capillary refilling]] time: 毛細血管再充満時間)や四肢末梢動脈の拍動を確認する。これと同時に、知覚運動機能も確認する。この際、[[コンパートメント症候群]]に注意する。
; 背面
: 背面を観察できるようにする方法には、脊椎を軸にして転がす方法(log roll法)と仰臥位のままで持ち上げる方法(flat lift法)があり、患者状態や動員できる人数によって選択する。
; 神経系
: 「切迫するD」に該当せずとも、GCS合計点が15未満であったり、15でも場合によっては頭部CT検査が望ましい。
 
=== 感染予防 ===
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; 破傷風予防
: 必要に応じて、破傷風トキソイドおよび破傷風免疫グロブリンが投与される。これらの適応については議論の余地があることが示されているが、[[防衛医療]]の一環として行なわれることが増えている。
 
=== 最終チェック ===
'''FIXES'''が合言葉とされる。これは、下記のとおりの意味である。
; F:Finger or tube into every orifice
: 外耳道内の確認や直腸診を怠っていないか。また、必要な[[カテーテル]]は適切に留置されているか。
; I:Intravenous / Intramuscular therapy
: [[輸液]]路は確保されたか、また適切な薬物投与が行なわれたか。
; X:X‐ray Photograph
: [[X線撮影|X線]]や、その他CT検査など適切な[[放射線診断学|画像診断]]を行ったか。
; E:Electrocardiogram
: [[心電図モニタ]]にとどめず、[[心電図#12誘導心電図|12誘導心電図]](ECG)を記録したか。
; S:Splint
: 骨折に対して副子(シーネ)で創外固定を行ったか。
 
== 関連項目 ==