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フィラリアは[[線形動物門]](線虫類)に属する[[寄生虫]]で、今日の日本ではヒト寄生性のフィラリアがほぼ根絶されているため、[[イヌ]]寄生性のフィラリアの方が有名になっている。しかし、ヒト寄生性のフィラリアは[[江戸時代]]には全国的に分布し、重大視される感染症の一つであった。稀にイヌ寄生性のフィラリアも人体に感染することがあるが、これは[[心臓]]寄生性であり、象皮病は起こさない。
 
フィラリア類の雌は[[ミクロフィラリア]]と呼ばれる[[幼生]]を多量に産生し、これが末梢の[[毛細血管]]中に移行して[[媒介者]]である[[]]に吸引され、他の宿主に運搬される。バンクロフト糸状虫などはリンパ管やリンパ節に成虫が寄生するため、雌の産んだミクロフィラリアは、まずリンパ管内に出現する。患者は急性症状として成虫やミクロフィラリアに起因するリンパ管やリンパ節の[[炎症]]を起こし、これが繰り返されることでリンパ管の閉塞や破裂が起こる。リンパ管の主要な機能は身体末梢部に毛細血管から供給される[[組織液]]の回収であるので、リンパ管の破壊が進行すると身体末梢部に組織液が滞留し、むくみ([[浮腫]])を生じる。この浮腫の刺激によって皮膚や皮下組織の結合組織が増殖して象皮病をきたすのである。
 
このように、象皮病の直接的な原因はフィラリアの寄生ではなく、リンパ管の破壊と、それによる組織液の滞留である。そのため、体内のフィラリアが既に死滅して感染自体は終結していても、この症状は進行する。むしろ重症の象皮病の患者の体内からは既にフィラリアは見られないことが多い。