「三角帽子 (ファリャ)」の版間の差分

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スペインの庭園の夜→スペインの庭の夜
「作曲の経緯」を加筆、「代官と粉屋の女房」の項目を新設。
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{{クラシック音楽}}
『'''三角帽子'''』(さんかくぼうし、原題:''El sombrero de tres picos'')は、[[ペドロ・アントニオ・デ・アラルコン]]が[[スペイン]]・[[アンダルシア]]の民話を元にした短編[[小説]]、またはこれ『三角帽子』を元にして[[マヌエル・デ・ファリャ]]が[[1917年]]に作曲した[[バレエ]]音楽、もしくは後に抜粋された2つの[[組曲]]。以下[[バレエ音楽]]を中心に記述する
 
== 作曲の経緯 ==
[[1903年]]にファリャと台本作家の[[カルロス・フェルナンデス・シャウ]]は[[王立サン・フェルナンド美術アカデミー]]で開かれるコンクール用の題材としてアラルコンの小説『三角帽子』に目をつけたが<ref>この時には[[ダンテ]]の『[[神曲]]』に基づく『フランチェスカ・ダ・リミニ』も計画された。</ref>、歌劇『[[はかなき人生]]』([[1913年]])の制作が優先され、この企画は棚上げとなった<ref name=daikan>CD『代官と粉屋の女房』(harmonia mundi、HMA 1951520)ライナーノート </ref>。
 
その後ファリャは『[[恋は魔術師]]』([[1915年]])を共同制作した[[グレゴリオ・マルティネス・シエラ]]とともに、『三角帽子』に基づく[[パントマイム]]を制作することにした<ref name=daikan></ref>。ファリャが作曲途中であった[[1916年]]に[[バレエ・リュス]]の主宰である[[セルゲイ・ディアギレフ]]がファリャにバレエ音楽の作曲を依頼。ディアギレフは最初『[[スペインの庭の夜]]』をバレエ化したいと考えていたが、これにファリャが熱心でなく、[[スペイン]]・[[アンダルシア]]の民話を元にしたアラルコンの小説『三角帽子』を元にした『[[コレヒドール_(官職)|代官]]と粉屋の女房』''El Corregidor y La Molinera''の再構成を提案した。ディアギレフはこれに同意し、振付に[[レオニード・マシーン]]を、さらに舞台・衣装デザインに[[パブロ・ピカソ]]を起用した。(<ref>このとき、ピカソはファリャの肖像画も書いている。</ref>。
 
[[1917年]]始めには一応の作曲が完了し、ディアギレフはこれをすぐに上演することを求めたが、ファリャとシエラは当初の計画通りパントマイムとして上演することを望み<ref name=daikan></ref>、4月7日に[[マドリード]]のエスラバ劇場(Eslava Theatre)で、[[ホアキン・トゥリーナ]]指揮のマドリード・フィルハーモニック・オーケストラの演奏で初演された([[第一次世界大戦]]のためバレエの上演が困難であったためでもある<ref>『最新名曲解説全集6(管弦楽曲III)』音楽之友社、1980年</ref>)。
 
この時のパントマイム『'''代官と粉屋の女房'''』は小編成オーケストラのために書かれていたが(後述)、初演に立ち会ったディアギレフのアドヴァイスに基づき、大編成オーケストラのためのオーケストレーションの改編と大幅な曲の追加やカットが行われ、[[1919年]]にバレエ音楽『三角帽子』として完成した。
 
== バレエの初演 ==
 
* 曲の初演:1917年、[[マドリード]]
* バレエ初演:[[1919年]][[7月22日]]、[[ロンドン]]・[[アルハンブラ劇場]]
* バレエ:[[バレエ・リュス]]
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* 日本初演:[[1979年]]
 
* 現在の楽譜出版:イギリス・チェスターミュージック
== 出版 ==
[[1921年]]にイギリスのチェスター・ミュージックより出版され現在に至っている。
 
== 構成 ==
2幕形式。13曲から成る。
 
== 作曲の経緯 ==
バレエ・リュスの主宰である[[セルゲイ・ディアギレフ]]が依頼。ディアギレフは最初『[[スペインの庭の夜]]』をバレエ化したいと考えていたが、これにファリャが熱心でなく、[[スペイン]]・[[アンダルシア]]の民話を元にしたアラルコンの小説『三角帽子』を元にした『[[コレヒドール_(官職)|代官]]と粉屋の女房』''El Corregidor y La Molinera''の再構成を提案した。ディアギレフはこれに同意し、振付にレオニード・マシーンを、さらに舞台・衣装デザインにパブロ・ピカソを起用した。(このとき、ピカソはファリャの肖像画も書いている。)
 
[[1917年]]、[[第一次世界大戦]]のためスペイン本土で「代官と粉屋の女房」という[[パントマイム]]劇のかたちで試演された。[[1919年]]に改作後、ロンドンで原作と同名のバレエ「三角帽子」として初演された。
 
== 編成 ==
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=== 第2幕 ===
その日の夜、近所の人々が祭の踊り「セギディリア」を踊っている(近所の人たちの踊り)。粉屋も「ファルーカ」を踊りだす(粉屋の踊り)。激しい踊りが続くが、代官のわなにより、粉屋は無実の罪で2人の警官に逮捕されてしまう<ref>ここで出てくるのが[[ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン|ベートーヴェン]]の[[交響曲第5番 (ベートーヴェン)|『運命』]]の有名な主題。[[ホルン]]の[[ゲシュトップフト]]で奏される。</ref>。代官は女房を奪い取ろうと忍び寄ってくる(代官の踊り)が、気が急いでいる代官は水車小屋の前の川に落ち、粉屋の女房に助けられるが結局逃げられてしまう。代官はぬれた服を脱ぎ、粉屋のベッドに潜り込む。そこに逃げ出してきた粉屋が戻ってくるが、代官の服を見て自分の服と代官の服を交換し、代官の女房のところに向かう。代官は粉屋の衣服を着て外に出て(終幕の踊り)、警官に見つかり、その警官と近所の人に袋叩きに遭い、逃げていく。近所の人たちは、平和を取り戻した粉屋の夫婦を中心に、一晩中踊って一件落着「ホタ」。
 
== 初演版(『代官と粉屋の女房』)==
=== 編成 ===
小編成オーケストラ用であり、打楽器は全く含まない。
 
* [[フルート]]1([[ピッコロ]]持ち替え)
* [[オーボエ]]1
* [[クラリネット]]1
* [[ファゴット]]1
* [[ホルン]]1
* [[トランペット]]1
* [[ピアノ]]
* 弦楽5重奏
* [[メゾソプラノ]]独唱(オフステージ)
 
初演時は第1、第2[[ヴァイオリン]]、[[ヴィオラ]]、[[チェロ]]が2名づつ、合計17人で演奏された。
 
=== 『三角帽子』への改編 ===
あらすじや、2幕構成であることは同一であるが、『三角帽子』への改編に際し、「序奏」、「粉屋の踊り」などが追加された(ただし「粉屋の踊り」の序奏部分は最初から存在していた)。「終幕の踊り」も初演版では約30秒程度の短いフィナーレに過ぎない。
 
反対に、第2幕の終わり頃にあった[[ベートーヴェン]]の[[交響曲第1番 (ベートーヴェン)|交響曲第1番]]の第4楽章序奏のパロディー(『三角帽子』練習番号55に見られるイ長調の上昇音階はその名残りである)などはカットされてしまっている。
 
== 同一の主題を扱った作品など ==