「オークンの法則」の版間の差分

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日本の完全失業率と実質国内総生産成長率の推移
Econiche (会話 | 投稿記録)
回帰はMeasurement Errorの小さい失業率を説明変数とすることが多いが、オークン法則の説明自体は、オークンの示したGDP→失業の流れ(及び先後関係)を尊重すべき。
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[[Image:Okuns law quarterly differences.svg|thumb|300px|1947年から2002年までのアメリカの四半期データ(年率ではない)を用いたオークンの法則の差分形式のグラフ。GNPの変化率(%) = 0.856 - 1.827*(失業率の変化)。 R^2 = 0.504。他の推計結果との違いは、部分的には四半期データを使っていることによる。]]
[[経済学]]において、'''オークンの法則'''(Okun's law)とは、一国の産出量と[[失業]]と産出量の間に[[経験]]的に観測される安定的な負の[[相関]]関係のことである。この法則の「乖離形式」(gap version)は、[[失業率]]が1%上昇する度に、一国の[[国内総生産]](GDP)が[[潜在産出量]]より約21%ずつ低小さくなる度に[[失業率]]が約0.55%上昇することを述べる(米国の場合)。「差分形式」(difference version)<ref>Knotek, 75</ref>は、失業の四半期毎の変化と[[実質GDP]]成長率と失業率差分の間における関係を表す。この法則の正確さは議論の的になっている。法則の名前は、1962年にこの関係を提案した[[経済学者]][[アーサー・オークン]]([[:en:Arthur Okun]])にちなむ(<ref name="Prachowny">Martin Prachowny, "Okun's Law: Theoretical Foundations and Revised Estimates", The Review of Economics and Statistics, 1993, 75, (2), 331-36</ref>
 
==不完全な相関関係==
 
オークンの法則は、理論から導かれた結果ではなく主として経験的観測なので、より正確には「オークンの経験則」と呼ばれる。性など出量と雇用以外要因が産出量間の関係に影響する、生産性などで、オークン法則他要素近似である考慮されていない。オークン自身の元々の法則は、3%の産出量の増加は、1%の失業率の減少、0.5%の労働力率の減少、0.5%の従業員一人当たり労働時間、1%の時間当たりの産出量([[労働生産性]])の増加に対応する、ということであった<ref>Gordon, Robert J., Productivity, Growth, Inflation and Unemployment, Cambridge University Press, 2004, 220</ref> オークンの法則は、失業率が!ポイント上昇すると、2ポイント実質GDPが減少する、ということを述べている
 
この相関の度合いは、対象としている国や時期によって変わる。
 
この相関はGDPまたはGNP成長率と失業率の変化を用いた回帰分析によって回帰試験検証されている。Martin Prachownyは失業率が1%上がる度に産出量が3%下がると推計した(Prachowny 1993<ref name="Prachowny" />)。産出量の減少規模変化に対する失業率の感応度はアメリカでは時間と共にがっているようである。Andrew Abelと[[ベン・バーナンキ|Ben Bernanke]]は、近年のデータを使って失業率1%上る度に2%産出量が下がの2%減少に対応すると推計した(Abel and Bernanke, 2005)。
 
失業の減少または増加より、GDPの増加または減少の方が速い理由はいくつかある{{要出典|date=2010年12月}}<!--そもそも一致するもの(係数が1になるもは)ではないのでは?-->
失業が増加すると、
* 従業員からの資金循環の[[乗数効果]]が減少する
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* 雇用者が必要以上の雇用を維持する等の理由で労働生産性が下降する
 
オークンの法則の含意の1つは、労働[[生産性]]が上昇したり労働力人口が増加したりすると、失業率の純減なしで産出量の純増がありうるということである(雇用なき成長現象)<ref>Ibid, see Chapter 8 and 9, p 223</ref>。これはまた、少なくとも失業率の変化ゼロに対応するだけのGDP成長が無ければ、たとえGDPがプラス成長であっても失業率が上昇することを表している。
 
==オークンの法則の数学的記述==
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アメリカ合衆国では、1965年頃からcの値が上述の通り2から3程度になっている。
 
上に示したオークンの法則の乖離形式を実際に使うそのまま検証するのは難しい。<math>\overline{Y}</math>と<math>\overline{u}</math>は推計するしかなく、測定することはできないためである。「差分形式」または「成長率形式」として知られている形式の方がよく使われており、産出量の変化失業の変化とを次のように関連付ける:
 
:<math>\Delta Y/Y = k - c \Delta u\,</math>:
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* <math>k</math> は完全雇用状態での産出量の年平均成長率
 
アメリカでは現在kがおよそ3%でcがおよそ2である。従ってこの方程式は次のように書ける。
 
:<math>\Delta Y/Y = .03 - 2 \Delta u.\,</math>
この記事の一番上にあるグラフは、オークンの法則の成長率形式を図示している。これは一年毎ではなく四半期データを基に計測されている。
 
==オークンの法則の成長率形式の導出==
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:<math>(\overline{Y}-Y)/\overline{Y} = 1-Y/\overline{Y} = c(u-\overline{u})</math>
:<math>-1+Y/\overline{Y} = c(\overline{u}-u).</math>
両辺の一間の差分をとり、次式を得る:
:<math>\Delta(Y/\overline{Y}) = (Y + \Delta Y)/(\overline{Y}+ \Delta \overline{Y}) - Y/\overline{Y} = c(\Delta \overline{u}-\Delta u).</math>
通分して次式を得る:
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:<math>(\overline{Y} \Delta Y - Y \Delta \overline{Y})/(\overline{Y}Y) = \Delta Y/Y - \Delta \overline{Y}/\overline{Y} \approx c(\Delta \overline{u}-\Delta u)</math>
:<math>\Delta Y/Y \approx \Delta \overline{Y}/\overline{Y} + c(\Delta \overline{u}-\Delta u).</math>
自然失業率の変化<math>\Delta \overline{u}</math>は、ほぼ0に等しいと仮定する。また、完全雇用状態での産出量の成長率<math>\Delta \overline{Y}/\overline{Y}</math>は、その平均値<math>k</math>にほぼ等しいと仮定する。すると、最後に次式を得る:
:<math>\Delta Y/Y \approx k - c \Delta u.</math>
 
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{{reflist}}
 
==出==
*Abel, Andrew B. & Bernanke, Ben S. (2005). ''Macroeconomics'' (5th ed.). Pearson Addison Wesley. ISBN 0-321-16212-9.
*Baily, Martin Neil & Okun, Arthur M. (1965) ''The Battle Against Unemployment and Inflation: Problems of the Modern Economy''. New York: W.W. Norton & Co.; ISBN 0393950557 (1983; 3rd revised edition).