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しかし、この2はやがて家計の所得となり、消費は所得の関数であるため、その所得の90%(C=0.9Y より)の1.8が消費される。その消費1.8は同量の国民所得1.8を増加させ、さらにその90%の消費1.62を拡大させる。
 
こうして、貯蓄と消費への振り分けが十分に早いペースで最終段階まで進むと仮定した場合、この年における消費量18増える(=2×0.9+2×0.9^2+2×0.9^3…)。はじめの投資の増加2と合算して国民所得は20(総消費)の増加分は20(C=X/(1-β)、ここでは=2/(1-0.9))であり、これが追加的な投資に対して最終的に得られる所得の増分(⊿Y=⊿C+G+⊿I)となる。一方で所得のうち消費されなかった分である貯蓄は2)。実2(所得対する限界貯蓄性向は1-βであり投資貯蓄の増加の10倍である。分⊿S=⊿Y×(1-β)、の10倍が乗数(の場合は投資乗数)ある。10という数字どこから出てくるかというと、数式の CS=20×(1-0.9Y から計算され9)=2))となる。
 
このことは、当初の投資によって増加した所得のうち、貯蓄されずに消費された分だけが、それと同量の新たな所得を実現することを示している。つまり、限界貯蓄性向を高めれば高めるほど、それだけ乗数効果が弱まるということになる。たとえば限界貯蓄性向が1であったとする。これは増加した所得を全く消費せず、全額を貯蓄に回すことを意味している。このとき、新たな所得はまったく生まれないことになる。
乗数=1/(1-0.9)
乗数=10
である。この場合の「0.9」のことを消費性向と呼ぶ。またこの乗数10は、限界貯蓄性向0.1の逆数でもある。
 
投資に使われた資金は、企業や家計の手元を周回して、その手を渡るたびに、労働力や生産物の取引を媒介し国民所得を増大させるが、そのうちの一部は周回のたびに少しずつ貯め込まれて、回らなくなる。そのため、投資の乗数効果には限界があるのである。
 
このことは、当初の投資によって増加した所得のうち、貯蓄されずに消費された分だけが、それと同量の新たな所得を実現することを示している。つまり、限界貯蓄性向を高めれば高めるほど、それだけ乗数効果が弱まるということになる。たとえば限界貯蓄性向が1であったとする。これは増加した所得を全く消費せず、全額を貯蓄に回すことを意味している。このとき、新たな所得はまったく生まれないことになる。
 
この投資乗数の例では、当初の投資の増加分2は、最終的に生じた貯蓄2と一致している。また、かりに限界貯蓄性向の値を高めたとしても、それまで以前よりも乗数が下がって消費と所得が減少するだけであり、最終的な貯蓄は2のままで変化することはない。これは、貯蓄がマクロ的には投資と一致することを意味している。すなわち総投資が変化しない限り、総貯蓄が変化することはない。日常的な感覚(ミクロ)によれば、投資ができる分量は貯蓄された分量に制約されており、貯蓄をすればするほど大きな投資も可能になるように見えるが、マクロ経済では単年度の追加的な投資量によりその年の追加的な貯蓄量が決定されており、このことを貯蓄のパラドックスという。マクロ経済で単年度の貯蓄量を増やそうと当年度の投資量を減らしたとしても、当年度の貯蓄量は減ることになる(参照:[[合成の誤謬]])。