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===翻訳===
* 『究竟一乗宝性論』4  [[堅慧]]造、[[勒那摩提]](ratnamati)訳 (511年訳)
 
* Theg-pa chen-po rgyud bla-mahi bstan-bcos (rnam-par bzad-pa)
 チベットでは略称を『ウッタラタントラ』Uttaratantra (Rgyud bla-ma)という。著者は原典に記載はないが、中国では堅慧(Saramati、沙羅末底)と伝え、チベットでは韻文を[[弥勒]]、散文の註釈を[[無著]]の作とする。漢訳年代、および内容から判断して、成立は4世紀末-5世紀初と考えられる。
 
===内容===
 サンスクリット本によると全体は5章に分かれている。
# 如来蔵章
# 菩提章
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# 仏業章
# 称讃功徳章
漢訳は第1章相当部分を7品にひらき、併せて1111品とする。
 
 1章は序論としての7種金剛句(教化品第1)1)、[[三宝]]への[[帰依]](仏、法、僧宝品第2-4)4)の説明を含む。7種金剛句とは仏法僧の三宝と、如来性、菩提、仏功徳、仏業の7をいい、このうち後4は如来性の4種の見地を示すものとして、それぞれ第1-第4章の題名を形成している。<br>
 ここで如来性とは、仏性、すなわち仏たるべき性質のことで、それが因となって三宝を生み出すので、宝性(ratnagotra)といわれる。この如来性が衆生のうちにあって煩悩にまとわれているとき、これを如来蔵(tathaagatagarbha)と呼ぶが、論はこれを10種の観点〔自性、因、果、業(はたらき)、相応、行(あらわれ)、時差別、遍一切処、不変、無差別〕および3種の意義([[法身]]、[[真如]]、性)によって述べ(一切衆生有如来蔵品第5)、9種の譬喩によって説明する(無量煩悩所纒品第6)<br>
 第2章は、同じ如来性が離垢清浄となった状態すなわち[[菩提]]の説明で、これを仏の法身の全現という意味で、[[転依]]と称する(身転清浄成菩提品第8)。そして、転依によって仏の[[徳性]](如来功徳品第9)と[[慈悲]]の働き(仏業品第10)がのこりなく顕現するというのが第3、4章の主題である。<br>
 第5章(校量信功徳品)は本論の無上性を強調し、末尾には[[阿弥陀仏]]への帰依がみられる。
 
 ここで如来性とは、仏性、すなわち仏たるべき性質のことで、それが因となって三宝を生み出すので、宝性(ratnagotra)といわれる。この如来性が衆生のうちにあって煩悩にまとわれているとき、これを如来蔵(tathaagatagarbha)と呼ぶが、論はこれを1010種の観点〔自性、因、果、業(はたらき)、相応、行(あらわれ)、時差別、遍一切処、不変、無差別〕および3種の意義([[法身]]、[[真如]]、性)によって述べ(一切衆生有如来蔵品第5)5)9種の譬喩によって説明する(無量煩悩所纒品第6)<br>6)
 なお、論述作の目的に関して、第1章の末尾(為何義説品第7)に、『[[般若経]]』の[[空]]説を批判し、この『宝性論』では仏性の有を説くのであると述べている。本書には、『[[華厳経]]』の<性起品>『智光明荘厳経』『[[如来蔵経]]』『[[勝鬘経]]』『[[不増不滅経]]』『[[大乗涅槃経]]』や『[[大集経]]』の諸品(<陀羅尼自在王品><無尽意菩薩品><宝女品><海慧菩薩品><虚空蔵菩薩品><宝髻菩薩品>等)が引用され、インドにおける如来蔵説の発展を知るための好資料を提供している。また『[[大乗荘厳経論]]』『[[大乗阿毘達磨経]]』の引用をはじめとし、論述の端々に唯識説との深い関係が看取される。
 
 2章は、同じ如来性が離垢清浄となった状態すなわち[[菩提]]の説明で、これを仏の法身の全現という意味で、[[転依]]と称する(身転清浄成菩提品第8)8)。そして、転依によって仏の[[徳性]](如来功徳品第9)9)と[[慈悲]]の働き(仏業品第10)10)がのこりなく顕現するというのが第34章の主題である。<br>
 
 5章(校量信功徳品)は本論の無上性を強調し、末尾には[[阿弥陀仏]]への帰依がみられる。
 
 なお、論述作の目的に関して、第1章の末尾(為何義説品第7)7)に、『[[般若経]]』の[[空]]説を批判し、この『宝性論』では仏性の有を説くのであると述べている。本書には、『[[華厳経]]』の<性起品>『智光明荘厳経』『[[如来蔵経]]』『[[勝鬘経]]』『[[不増不滅経]]』『[[大乗涅槃経]]』や『[[大集経]]』の諸品(<陀羅尼自在王品><無尽意菩薩品><宝女品><海慧菩薩品><虚空蔵菩薩品><宝髻菩薩品>等)が引用され、インドにおける如来蔵説の発展を知るための好資料を提供している。また『[[大乗荘厳経論]]』『[[大乗阿毘達磨経]]』の引用をはじめとし、論述の端々に唯識説との深い関係が看取される。
 
===参考文献===
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* [http://21dzk.l.u-tokyo.ac.jp/SAT/ddb-sat3.php?mode=detail&useid=1611_ 究竟一乗宝性論] [[大正新脩大蔵経]]vol.31, pp. 813-848
 
* 東北目録 108, pp.24-32, pp  32-56.(チベット訳)
:註釈にDar-ma rm-chen (ツォンカパの弟子)のTika (Tikkaa) (東北・西蔵撰述 N0.5434)その他。
 
* E.Obermiller『Sublime Science of the Great Vehicle to Salvation』, Acta Orientalia, Ⅸ, 1931(上海版1940)(蔵文  英訳)
* H.W.Bailey & E.H.Johnston 『A Fragment of the Uttaratantra in Sanskrit』Bull S.O.S. vol.Ⅷ, 1935(Obermillerの上記上海版所収)
* 宇井伯寿『宝性論研究』昭34(梵文和訳を含む)
* 中村瑞隆『梵漢対照・究竟一乗宝性論研究』昭36
* 月輪賢隆「究竟一乗宝性論について」日仏年報7年、昭11
* 高田仁覚「究竟一乗宝性論序品について」密教文化  31号、昭30
* 高崎直道「究竟一東宝性諭の構造と原型」宗教研究  155号、昭33
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