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多くの文学賞では受賞者に対して賞金が支払われるだけではなく、授賞する側に属する選考委員を務める著名作家にも選考料などの名目で少なからぬ金額の謝礼が支払われ、概して賞の権威の高さと比例する形で謝礼も高額となる。そのため、著名作家の体のいいアルバイトと言われることもある。選考委員という立場自体、文壇政治におけるポストのひとつと見なされており、特に芥川賞などは無任期制で、一度任命されれば辞任しない限りは亡くなるまでその地位に居続けることも可能で、これも批判の対象となることがある。
 
また、各次選考課程において、各選考委員の專門分野・嗜好・思想・人間関係、出版社・編集部・編集者の事情・思惑、[[メディアミックス]]の企画、候補者・応募者の話題性(低年齢・知名度・家族)や関連業界との人脈などといった様々な[[バイアス]]が加えられることも少なくなく、商業的都合が優先された結果として授賞と作品の出来が必ずしも直結しない場合もある。例えば直木賞では主催者との関連性が強い[[文藝春秋]]のノウハウの多寡などが影響し、[[歴史小説]]・[[時代小説]]・人情小説が有利と言われ実際に多く授賞してきたいる一方で、[[サイエンス・フィクション|SF]]・[[推理小説|ミステリー]]・[[ファンタジー]]などは総じて不利とされており、SF作家である[[筒井康隆]]は自らの直木賞落選の経緯を批判的に風刺した小説『[[大いなる助走]]』を執筆しているまた、著名文学賞の場合、受賞を渇望する作家が自身の作品の落選に対して強い不満を示す場合もあり、たとえば[[中原昌也]]は『点滅……』が[[芥川龍之介賞|芥川賞]]の候補になりながらも1票も入らず落選した際、選考委員に対して雑誌連載『SPA』の誌面で痛烈な批判を繰り広げた。他にも様々な文学賞や公募新人賞において、最終選考に残ったある作品が、特定の選考委員の熱烈な推薦で授賞が決まった、逆に特定の選考委員の個人的な猛反対の批判により落選となった、落選を巡ってトラブルが起きた、などという話は枚挙に暇が無い。また、選考結果のみが公開される文学賞では、著名作家の選考委員としての「名義貸し」や、出版社・選考委員の都合を優先させた縁故授賞などと言った不明朗な選考などの噂も散見される。
 
そもそも、文学賞を主催・後援し各種費用を実質的に拠出する出版社にとっては、文学賞は新人作家の発掘作家・作品を効率的に宣伝・販売するを効率的に行うための箔付けや話題作りの手段である。それゆえ、文学賞には授賞はもとより賞イベント自体についても出版社自体や文芸部門の経営状態や予算の問題、自社レーベルの契約作家数、レーベルの販売戦略や改廃・リニューアルなどといった出版社の都合に大きく左右される一面が付きまとう。そのため、特に公募新人賞ではレーベルの刊行終了と共に文学賞が終了となることも多く、それ以外にもある日突然に文学賞の打ち切り・休止が発表されたり、作品の掲載や刊行が保証される上位入賞について「該当作なし」という結果が複数回続くことや、受賞作が刊行されない、あるいは刊行されるにしても年単位の長期間を要するなどということも見られ、応募者や応募を目指していた者たちなどから批判を集めることがある。ジャンルや景気にもよるが現代の出版業界では商業作家としての経歴や[[コネ]]の無い新人が原稿を出版社に直接持ち込むことが困難であることも多く、たとえばある特定のジャンルにおいて立て続けに公募新人賞が休止・終了した結果、そのジャンルでのプロデビューを目指していた作家志望者にとっては投稿する場が無くなってしまうなどといった副次的な問題が起きることもある。たとえば、SF小説では1980年代に公募新人賞の休止・中断が相次ぎ、結果として行き場を失ったSF小説の新人が当時勃興しつつあった[[ライトノベル]]の公募新人賞へと流入し、以降はSF小説を手掛ける作家がまずライトノベル作家としてデビューすることが多くなっている。
 
過去には特に[[自費出版]]やライトノベルなどの出版社の関わる公募新人賞で、7桁(百万円台)の新人にとっては十分に高額な賞金と作品刊行を最優の賞の副賞として掲げ応募作品を集めながら、その最優秀の賞をほとんど出さずに低額賞金や無賞金の「佳作入選」ばかり出し、費用を掛けずに人材と作品の確保だけを安易に行い批判を集めたものも存在する。
 
== 参考文献 ==