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'''摩擦'''(まさつ、[[ドイツ語|独]]:Friktion in Kriege)とは[[軍事学]]において[[計画]]・命令を実際に実行する上で直面する障害を意味している。
 
==概要==
初めて摩擦の概念を軍事学の概念として初めて使用に導入したのは[[カール・フォン・クラウゼヴィッツ]]である。彼は著作[[戦争論]]』の中で天候、敵の応急的・非合理的な反応、偶発的な問題、予測不能な事件などのような偶発的な事件を挙げながら、これらが机上の計画を現実に実行に移す際には障害のみるだけでなくらず脅威にもなりうる論じた。その意味において摩擦は理論上の戦争と実践上の戦争を全般的に区分する概念である。核兵器が開発された現代における摩擦の概念には新しい意味合いが含まれるようになり、偶発的なエスカレーションや軍事的な誘因などの危険を指すようになる。この新しい摩擦の概念に対しては、国際連合や国際法による伝統的な開戦法規の規制、偵察や通信の技術革新による情報環境の改善によって対処されている。しかし一般に計画が大規模になるほど摩擦の問題が重要な意味を持つ傾向にあることには変わりなく、摩擦による不測事態に対処することは指揮官の中心的な課題であり続けている。
 
[[核兵器]]が開発された現代では、摩擦の概念に新しい意味合いが含まれ、偶発的なエスカレーションや軍事的な誘因などの危険を指すようになる。この新しい概念としての摩擦に対しては、[[国際連合]]や[[国際法]]による伝統的な開戦法規の規制、[[偵察]]・[[通信]]の[[イノベーション]]による情報環境の改善によって対処されている。それでも一般に計画が大規模になるほど摩擦が重要な意味を持つ傾向に変わりはなく、摩擦による不測事態への対処は[[指揮官]]の中心課題であり続けている。
摩擦が生じる原因を大別すると、対内的なもの、対外的なもの、環境的なものに分けられ、それらの組合せによって発生していると言える。第一に対内的な摩擦とは[[軍隊]]や[[政府]]という自己の組織の性質に起因するものであり、情報伝達の齟齬や意図の誤解による混乱が作戦の実行を妨げる。第二に対外的な摩擦とは敵の行動により発生するものであり、開戦前においても戦時中においても自己がどのように行動するかは敵がどのように行動するかによって左右されてしまう。第三に環境的な摩擦は気候や地形、植生、降水などの自然環境に関するものや、直接的な当事国ではない諸国との国際政治的な関係が含まれている。ただし、概念としての摩擦は彼我に関係なく影響するものであり、戦略や戦術によってはこれを意図的に活用することも可能である。
 
摩擦の原因は大別すると以下の3種類があり、それらの組合せによって摩擦が発生する。
;対内的な摩擦
:[[軍隊]]・[[政府]]という自己の組織の性質に起因する。情報伝達の齟齬や意図の誤解による混乱が作戦の実行を妨げる。
;対外的な摩擦
:敵の行動により発生する。開戦前にせよ戦時中にせよ、自己の行動は敵の行動に左右されてしまう。
;環境的な摩擦
:[[気候]]・[[地形]]・[[植生]]・[[降水]]などの自然環境や、直接的な当事国ではない諸国との[[国際政治学|国際政治]]的な関係などがある。
ただし概念としての摩擦は彼我に関係なく影響し、[[戦略]]・[[戦術]]によってはこれを意図的に活用できる。
 
== 参考文献 ==
*[[カール・フォン・クラウゼヴィッツ]]、[[清水多吉]]訳 『[[戦争論]]』 [[中公文庫]](上・下)、2001年。
*Simpkin, R. E. Race to the swift: Thoughts on twenty first century warfare. London: Brassey's. 1985.
*Lebow, R. N. Clausewitz and crisis stability. Political Science Quarterly 103(spring):81-110.