「天元術」の版間の差分

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'''天元術'''(てんげんじゅつ)は、[[中国]]で生まれた[[代数学|代数]]問題の解法である。
 
==歴史==
天元という言葉の初出は、[[金 (王朝)|金]]の[[蒋周]]の『益古集』([[1080年]])である。
 
天元術は[[宋 (王朝)|宋]]末の[[13世紀]]に発展した。重要なテキスト[[教科書]][[朱世傑]]の『算学啓蒙』([[1299年]])である。日本では[[1658年]]([[万治]]元年)に出版され、これを通して天元術は[[和算]]の発展の元となった。
 
==内容==
天元術は代数学の問題の解法であり、[[算木]][[算盤]]とを使う。
 
問題の答えとして求める数を仮に<math> 0+''x</math>'' の形で設け、これを「天元一」(てんげんのいち)とう。天元術は「天元の一を立て、何々とす」という言い回しから始まり、これがすなわち[[西洋]][[数学]]でいう「何々を ''x'' と置く」にあたる。それから論を進めて算盤上に1元[[代数方程式]]を求め、その[[根]]を導いて答えを得る。
 
天元の一を立てて、論を進めることで算盤上に一元方程式を求め、その根を導くことで答えを得るのが天元術である。天元術は1元代数方程式のみを扱うが、多元代数[[線型方程式系|連立方程式]]を扱う二元術三元術四元術も生まれた。ただしこれらはほとんど広まらず、四元術の書である朱世傑の『四元玉鑑』は19世紀に再発見された。この中でには二元術・三元術の書についても言及されているが、これらは現存しない。
 
[[沢口一之]]は日本で初めて天元術を正しく理解して扱ったその著書「古今算法記』を著し、その中に天元術では解けない問題を遺した。その問題を解くために[[関孝和]]は天元術を発展させた。[[筆算]]表記法の傍書法で多[[変数 (数学)|変数]]の方程式を表し、さらにそれを解く[[点竄術]]を編み出して、和算を大いに進展させた。
[[関孝和]]は、その問題を解くために天元術を発展させて、筆算表記「傍書法」を用いた文字の多変数によって問題を解く「[[点竄術]]」を編み出し、日本数学を大いに進展させた。
 
==用例==
まず、#天元の一を立てて仮に求める値(未知数)とする。次に、
#題の条件によって[[算術#四則演算|加減乗除]]を施して既知数と等しい式をつくり、それと既知数とを相消することで開方式(方程式)を得る。そして、
#それを[[冪根|開方(方程式の根を得る計算)]]して答えを得る。
相消とは等しい数を減じて0の値を得ることで、つまり西洋で、数学の[[等号]]で結ぶこと、また[[等式]]の右辺を0にすることにあたる。
 
えば、今して「いま[[長方形]]がある。その長方形の[[面]]は15で、長辺と短辺の[[加法|]]が8であるとき、長辺と短辺の長さはそれぞれいくらかという問題を天元術で解けば、こう。

求める数を長辺とし、まず天元の一を立てて長辺とすと言って算盤の実級(定数項)を空(0) (0) とし、法級(x(''x''1次項)に係数1の算木をく。すなわち、<math> 0+''x</math>'' の式である。
 
[[File:Tengenjutsu1.PNG]]
 
 
次に長短辺の和8より長辺(つまり求める未知x) ''x'')を減じ、短辺とすると言って実級に8の算木をしいて法級に-1の算木をく。すなわち<math>これが 8-''x''=</math>短辺 の式であ を意味する。
 
[[File:Tengenjutsu2.PNG]]
 
 
この式(つまり短辺)を長辺(つまり求める数x)すなわち ''x'')と、[[乗法|あい乗じて]]積とする。''x'' かって次数が一つあ1上がるので、法級に8をしき、廉級(''x''<mathsup>x^2</mathsup> の項)に-1をく。すなわち<math>つまり 0+8x8''x''-''x^''<sup>2=</mathsup>= の式 である。「これを左に寄す」と言ってこの式をひとまずこの式をおいておく。
 
[[File:Tengenjutsu3.PNG]]
 
 
この式が積に等しいので積15を列しこれを左に寄すと相消すと言い、左に寄せた式より積15を引き、長辺(x) ''x'' を得る開方式(方程式)を得る。すなわち<math>方程式 -15+8x8''x''-''x^''<sup>2=0</mathsup>の方程式=0 である。
 
[[File:Tengenjutsu4.PNG]]
 
 
これを開方(方程式の根を求める方に[[ホーナー|増乗開方法]]を適用していわゆるホーナー法が用いられた)することで商(根)に長辺の値5を得る。また長辺短辺の和8よりこれを引いて短辺3を得る。
 
以上が天元術の一例である。
 
== 関連項目 ==
*[[和算]]
*[[朱世傑]]
*[[関孝和]]
 
 
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