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[[File:At The Earths Core 1 Digging Machine.png|thumb|映画「[[地底王国]]」に登場する鉄モグラ]]
地底戦車(ちていせんしゃ:作品によっては地中戦車、地下戦車、またドリル戦車(タンク)とも呼称)とは、[[サイエンス・フィクション|SF]]作品に登場する架空の[[兵器]]である。
 
==概要==
先端部に[[ドリル (工具)|ドリル]](工作用の円柱状のものでなく、円錐に螺旋状の刃がついたもの)または放射状に直線の刃が付いた[[リーマ]]を備え、前方の土砂を掘削しながら前進するもので、不整地走行用に[[キャタピラ]]やオフロードタイヤで駆動する。
 
キャタピラや装甲からの連想で「[[戦車]]」と呼ばれることがあるが、敵陣に地底から突入する軍用車両ばかりでなく、地底探検・探索用車輌、地底に取り残された人々を救出する為のレスキュー車輛も総称して呼ばれる場合がある。
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なお、艦船や航空機の先端にドリルが付いているものもあるが、便宜上それらの一部についても言及する。
==歴史==
地底世界探検の憧れは19世紀末からあり、[[ジュール・ヴェルヌ|ヴェルヌ]]の「[[地底旅行]]」では[[洞窟]]をたどって地底探検を行っている。能動的に掘削を行うためのメカの登場は、小説では「[[ペルシダー・シリーズ|地底世界ペルシダー]]」([[1922年]]、[[エドガー・ライス・バロウズ|バロウズ]])に鉄モグラ(Iron Mole)が登場するなど、20世紀初頭には既に登場している。
 
ビジュアル面においては、昭和8年([[1933年]])に[[少年倶楽部]]の付録「画集 未来戦」に描かれたもの(画:鈴木御水)があり、国産ではこれが最初のイラストレーションとなる。
 
第2次世界大[[日中争]]が始まると、ドイツ軍が実車の研究を行った(詳細は後述昭和12年([[1937年]]ほか、日本で空想国防科学雑誌「機械化」が創刊され、[[小松崎茂]]などにより局面打開のための新兵器として地底戦車が描かれている。なお、このラストツ軍は[[小松崎茂1934年]]などに実際にドリルを装備した連結戦車「[[ミドガルドシュランゲ]]」の研究を行った担当、翌年には実用化を断念している。
 
昭和16年([[1941年]])に[[海野十三]]が発表した少年向けSF作品「未来の地下戦車長」は地底戦車(作中では地下戦車)の開発を目指す少年技師が数々の困難を乗り越えていくもので、地底戦車の持つ問題点([[#実用性|後述]])が既に指摘されている。
 
戦後になると自由なSF作品が日本でも発表されるようになり、前述の小松崎茂は「[[地球SOS]]」を発表し、その中で地底戦車をイラストとともに登場させている。また、本格的な特撮を使用したSF映画も製作されるようになり、[[東宝]]は小松崎をコンセプトデザインに迎え、「[[地球防衛軍]]」「[[海底軍艦]]」を製作する。これらに登場した地底戦車型ロボット怪獣「[[モゲラ]]」や地海空併用潜水艦「[[轟天号]]」はリメイク作品にも登場するほか、[[氷河戦士ガイスラッガー|ソロン号]]や[[恐竜大戦争アイゼンボーグ|アイゼンボーグ号]]等、ドリル付航空機などの亜種をも産み出している。
 
1960年代まではあまり外国の作品には登場してこなかったが、1966年に放送された[[イギリス]]の「[[サンダーバード (テレビ番組)|サンダーバード]]」では「モグラー」(Mole)が登場し、[[今井科学]]から「ジェットモグラ」の商品名で発売された[[プラモデル]]とともに人気を博した。なお、1976年に「地底世界ペルシダー」が「[[地底王国]]」として映画化された際には、サンダーバードの旧スタッフによって製作されたためジェットモグラに酷似した鉄モグラが登場している(写真については下記ウィキメディアコモンズ参照)
 
同時期、[[緑商会]]が発売した「地中戦車モグラスシリーズ」はオリジナルデザインの地底戦車で、前述のジェットモグラとともにプラモデルの中で地底戦車ブームを担うこととなる。
 
その後、[[円谷プロ]]の[[ウルトラシリーズ]]では[[ウルトラマン]]のペルシダーや[[ウルトラセブン]]のマグマライザーなど魅力的な車両が登場するが、[[1971年]]の[[帰ってきたウルトラマン]]以後の作品では単発の出演しか用意されない状態が続く。
 
また、1970年代中盤以降の巨大ロボットアニメブームでは「[[ゲッターロボ]]」のゲッター2が片腕にドリルを装備して自由に地中を進む描写がされており、これ以後も「[[超電磁ロボ コン・バトラーV|コンバトラーV]]」や「[[超人戦隊バラタック|バラタック]]」など、ロボットがそれまでの戦車に代わる役割を果たしている。
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*第2の問題として、いくつかのメカは見た目のバランス上から車体よりもドリルのほうが小さくデザインされているものがあり、掘削した穴を通過できない。これは「轟天号」をデザインした小松崎や演出の[[円谷英二]]も承知しており、あくまでも映像表現の一部と割り切っている。
*第3の問題は掘削した土を後方に排出する方法として車体側面にキャタピラや後方向けの噴射装置を設ける、等の案が用いられているが、掘り進んだ部分が前から送られた土砂で再び埋まってしまう危険性がある。
*第4の問題として、地盤の圧力のため、土砂をそのまま掘り進んで行っただけではトンネルの強度は不十分であり、落盤事故が発生する危険がある。現実のトンネル工事では上下の圧力方向に強い縦の卵形に穴をり、その中削後速やかコンクリルドなどのトや鉄骨による補強材を敷設すが行われる。
*以上に示した通り、実際のトンネル工事などの作業は「掘削」「排出」「補強」の工程を並列で行っており、映像作品に見られるような、時速数10km以上の高速での進行は物理的に不可能であるといえる。なお、ロードヘッダー(後述)の最大の掘削作業実績は1時間あたり200立方メートルである。
なお、ドイツ軍は実際にドリルを装備した連結戦車「[[ミドガルドシュランゲ]]」を[[1934年]]に研究しているが、翌年には実用化を断念している。
 
==実在のドリル型機械==
===[[シールドマシン]][[トンネルボーリングマシン]]===
現在トンネル工事の主流となっているのはボーリングビットを備えた円盤が回転しながら前進し、同時にトンネルの躯体工事を進める[[シールドマシン]]や[[トンネルボーリングマシン]]である。(詳細は当該の項目を参照)
===ロードヘッダブームヘッダー===
[[三井三池製作所]]や[[カヤバシステムマシナリー]]等の土木機械メーカーは、坑道掘削用に[[自由断面掘削機]](それぞれの商品名はロードヘッダブームヘッダー)を開発している(詳細はリンク先参照。)。正面からの外観は螺旋型ボーリングビットやキャタピラのためにまさに地底戦車然としているが、側面の外観はブームの長さから地底戦車よりも[[メーサー殺獣光線車]]を思わせるものである。
===ロックドリル===
[[古河ロックドリル]]のドリルジャンボ、ワークステーションは幾つもの可動式のアームを持った掘削機械で、掘削やシールドの設営など作業に応じてアームを使い分けている。3ブームシャフトジャンボは[[機動警察パトレイバー]]に登場する「ぴっけるくん」を思わせる外観であったり、[[樋口真嗣]]がワークステーションの作業の様子を特撮映画風に構成したPVを監修しているなど、巨大ロボ然とした外観が特徴である。
 
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* [http://www.kyb-ksm.co.jp/kenki/index.htm カヤバシステムマシナリー ブームヘッダ]
* [http://www.furukawarockdrill.co.jp/products/drilljumbo/jumbo-index.htm 古河ドリルジャンボ]
 
* [http://commons.wikimedia.org/wiki/File:At_The_Earths_Core_1_Digging_Machine.png 映画版鉄モグラ]
[[category:SF兵器|ちていせんしや]]