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'''正孔'''(せいこう)は、'''ホール'''(Electron hole または単に'''hole''')ともいい、[[物性物理学]]の用語。[[半導体]](または[[絶縁体]])において、(本来は[[電子]]で満たされているべき)[[価電子帯]]の電子が不足した状態を表す。たとえば[[光]]や[[熱]]などで[[価電子]]が[[伝導帯]]側に[[遷移]]することによって、[[価電子帯]]の電子が不足した状態ができる。この[[電子]]の不足によってできた孔(相対的に正の[[電荷]]を持っているように見える)が'''正孔'''(ホール)である。
 
[[半導体]]結晶中においては、周囲の[[価電子]]が次々と正孔に落ち込み別の場所に新たな正孔が生じる、という過程を順次繰り返すことで結晶内を動き回ることができ、あたかも「正の電荷をもった電子」のように振舞うとともに[[電気伝導性]]に寄与する。なお、周囲の[[価電子]]ではなく、[[伝導電子]]([[自由電子]])が正孔に落ち込む場合には、伝導電子と価電子の間のエネルギー準位の差に相当するエネルギーを熱や光として放出し、電流の担体(通常[[半導体#キャリア|キャリア]]と呼ぶ)としての存在は消滅する。このことをキャリアの再結合と呼ぶ。
 
正孔は、[[自由伝導電子]]と同様に、[[電荷を運ぶ担体]]として振舞うことができる。正孔による[[電気伝導性]]をp型と言う。[[半導体]]に[[アクセプター]]を[[ドープ|ドーピング]]すると、[[価電子]]が熱エネルギーによって[[アクセプタ準位]]に[[遷移]]し、正孔の濃度が大きくなる。また伝導電子の濃度に対して正孔の濃度が優越する半導体を[[p型半導体]]と呼ぶ。
 
一般に正孔の[[ドリフト移動度]](あるいは単に[[電子移動度|移動度]])は自由電子のそれより小さく、[[シリコン]]結晶中では電子のおよそ1/3になる。なお、これによって決まる[[ドリフト速度]]は個々の電子や正孔の持つ速度ではなく、平均の速度であることに注意が必要である。
 
[[価電子帯]]の頂上では[[エネルギー|E]]-[[波数|k]]空間上で形状の異なる複数のバンドが[[縮退]]しており、それに対応して正孔のバンドも[[有効質量]]の異なる'''重い正孔'''(heavy hole)と'''軽い正孔'''(light hole)のバンドに分かれる。またシリコンなど[[スピン軌道相互作用]]が小さい元素においてはスピン軌道スプリットオフバンド(スピン分裂バンド)もエネルギー的に近く(Δ=44meV)、独立に議論するのがその分難しくなる。[[電子移動度|移動度]]を特に重視する用途の[[半導体素子]]においては、結晶に歪みを導入することで、[[価電子帯]]頂上の縮退を解くと共に、量子準位を入れ換えて軽い正孔を主に用い、[[フォノン]]散乱やキャリアの実効有効質量の削減を図ることがある。
 
なお、正孔の意味で言う「ホール」とは「穴(hole)」の意味であり、[[ホール効果]](Hall effect)の「ホール」(人名に由来)とは異なる。
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* [[キャリアの再結合]]-[[光電効果#内部光電効果|光電効果]]
* [[歪み超格子]]-[[歪みシリコン]]
* [[励起子]]
 
== 参考書籍 ==