「コミュニケーション能力」の版間の差分

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'''コミュニケーション能力'''(コミュニケーションのうりょく、{{Lang|en|communication ability}})とは、一般的に「他者と[[コミュニケーション]]を上手に図ることができる能力」を意味する。
 
これに対して'''コミュニケーションスキル'''({{Lang|en|communication skill}})とは人と人の間で[[コミュニケーション]]をとる方法・手法・テクニックを理論付けし、検証を行い技術または[[知識]]としてまとめたもの。コミュニケーション能力とコミュニケーションスキルを同義に扱う企業も多い。なお、「相手の目を見てはきはきと話す」「アフターファイブは同僚と酒を酌み交わして親睦を深める」といった、人と直接会うことに伴う能力のみをコミュニケーション能力とするのは誤用であり、[[電子メール]]や[[手紙]]による、顔を一切合わせない付き合いでもコミュニケーション能力は問われる
なお、「相手の目を見てはきはきと話す」「アフターファイブは同僚と酒を酌み交わして親睦を深める」といった、人と直接会うことに伴う能力のみをコミュニケーション能力とするのは誤用であり、電子メールや手紙による、顔を一切合わせない付き合いでもコミュニケーション能力は問われる。
 
== 定義 ==
コミュニケーションは{{lang-la|communicatio}}に由来しており、「分かち合うこと」を意味している。「コミュニケーション能力」という表現は様々な用いられ方をしており、以下のような意味で使われることが多い。
 
* [[言語]]による意志疎通能力([[#言語学用語の「Communicative competence」]]を参照)。「コミュニケーション能力」という言葉は、元々は[[言語学]]の分野で用いられた学術的な用語であった。
* 感情を互いに理解しあい、意味を互いに理解しあう能力。感情面に気を配って、意味をわかちあい、信頼関係を築いてゆく能力。<ref>齋藤孝『コミュニケーション力』岩波新書 2004年</ref>
* 非言語的な要素(相手の表情、眼の動き、沈黙、[[場の空気]]など)に十分に注意を払うことで、相手の気持ちを推察する能力([[非言語コミュニケーション]])
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=== 言語学用語の「Communicative competence」 ===
[[言語学]]の分野での「コミュニケーション能力 ({{Lang|en|communicative competence}})」 という用語は、[[デル・ハイムズ]]が1972年に初めて提示した。<ref>Hymes, D. (1972). On Communicative Competence. In J. B. Pride and J. Holmes (Eds) ,Sociolinguisitcs: Selected Readings. Harmondsworth: Penguin Books.</ref>
ハイムズは、[[ノーム・チョムスキー]]が提示した''言語能力'' (linguistic competence) と''言語運用'' (linguistic performance) の定義だけでは第二言語([[母語]]の次に学習する言語)教育に不十分であるとして、新たに「文法的能力だけでなく、ある特定の文脈においてメッセージの伝達や解釈、意味の交渉ができる能力」をコミュニケーション能力と定義づけた。
 
CanaleとSweinは、コミュニケーション能力の要素として、以下の4つを挙げた。<ref>Canale, M. and M. Swain (1980). Theoretical Bases of Communicative Approaches to Second Language Teaching and Testing. Applied Linguistics 1: 1-47.</ref>
 
# 文法的能力 (Grammatical competence)…文法的に正しい文を用いる能力。
{| class="wikitable"
# 談話能力 (Discourse competence)…単なる文の羅列ではない、意味のある談話や文脈を理解し、作り出す能力。
!文法的能力 (Grammatical competence)
# 社会言語能力 (Sociolinguistic competence)…社会的な文脈を判断して、状況に応じて適切な表現を行う能力。
# 文法的能力 (Grammatical competence)…|文法的に正しい文を用いる能力。
# 方略的言語能力 (Strategic competence)…コミュニケーションの目的達成のための対処能力。
|-
!談話能力 (Discourse competence)
# 談話能力 (Discourse competence)…|単なる文の羅列ではない、意味のある談話や文脈を理解し、作り出す能力。
|-
!社会言語能力 (Sociolinguistic competence)
# 社会言語能力 (Sociolinguistic competence)…|社会的な文脈を判断して、状況に応じて適切な表現を行う能力。
|-
!方略的言語能力 (Strategic competence)
# 方略的言語能力 (Strategic competence)…|コミュニケーションの目的達成のための対処能力。
|}
<!--=== 心理学との関係 ===
[[心理学]]から見た場合、発信者の行動変化に応じて受信者の行動変化が生じた場合、両者の間にコミュニケーションが成立していることになる東京大学出版会「心理学」。この立場からは、コミュニケーション能力とは、コミュニケーションを進展させるように発信行動の適切な調整をなしうる能力を意味する。-->
 
== 論理的コミュニケーション能力 ==
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研修課題の一例は、次のとおりである。
{| class="wikitable"
*相手に質問する練習
:!相手に質問する練習
|質問にも法則があり、そのテクニックを練習する
|-
*相手に反論せず、肯定で答える練習
:!相手に反論せず、肯定で答える練習
|自分の意図と反することを相手が言ったときでも直ぐに反論せず、yes,butで肯定してから反対意見を言う練習
|-
*相手が何を言い出しても、肯定的に応答し会話を続ける練習
:!相手が何を言い出しても、肯定的に応答し会話を続ける練習
|自分が知らないことを言い出しても質問するなどして、とにかく、持ち時間を会話でつなぐ練習
|-
*相手と適度な頻度で[[アイコンタクト]]する練習
:!相手と適度な頻度で[[アイコンタクト]]する練習
|アイコンタクトが全く無いと相手は不安になり、アイコンタクトしたままでは睨まれているように思う
|-
*うなづいてメモを取るなどの[[ボディーランゲージ]]の練習
:口で分かったと言うだけでなく、!うなづいてメモを取ると相手は安心するなどの[[ボディーランゲージ]]の練習
|口で分かったと言うだけでなく、うなづいてメモを取ると相手は安心する
|}
 
== コミュニケーション能力をめぐる議論 ==
=== 齋藤孝の指摘 ===
コミュニケーションを単なる情報や知識のやりとりだと思ったりすると、コミュニケーションには失敗してしまう。仕事の相手ですら、情報と同時に感情のわかちあいは行われており、それを意識している人とそうでない人では、結果に大きな違いがでる。仕事で初顔合わせする相手とまず食事を共にしたりすることが行われているのは、感情を共有するためである。
 
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本当に求められている能力は、相手の言いたいことを的確つかみとる能力であり、さらには、相手が言葉が足らずうまく表現しきれていないことまでも洞察し「おっしゃりたいのは...ということですね」と(肯定的に)相手に提案する能力もあると良い。自分の言いたいことがしっかりと受け取られている、と感じることで、人は信頼感を持ち次の段階へと前進してゆくことができるようになる。<ref>齋藤孝『コミュニケーション力』岩波新書 2004年 p.3-12 ISBN 4004309158 </ref>
 
=== [[パオロ・マッツァリーノ]]の指摘 ===
パオロ・マッツァリーノは自著『反社会学講座<ref>108頁-122頁</ref><ref>http://mazzan.at.infoseek.co.jp/lesson9.html</ref>』(イースト・プレス、2004年)収録の「ひきこもりのためのビジネスマナー講座」において、[[浜口恵俊]]の「日本語にはもともとコミュニケーションにあたる言葉がないため訳せない」という意見を取り上げ、近年、企業等においてコミュニケーションが本来の「意味を拡大解釈」してもちいられているようだと指摘し、問題視している。
 
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* [[カルト]]
 
== 参考資料 ==
<references />
 
== 関連書籍 ==
*『ITエンジニアのためのコミュニケーション能力診断 トレーニングで伸ばす9つの力』上村 有子、ソフトバンククリエイティブ、 2006年、 ISBN 4797335866
*『EQ—[[心の知能指数|こころの知能指数]]』ダニエル・ゴールマン、講談社1998年、ISBN 4062562928