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|h=vong<sup>11</sup> sa<sup>24</sup>
|kanji=黄砂
|kana=こうさ、おうさ
|revhep=kōsa, Ōsa
|nihon=kôsa, Ôsa
|kunrei=kôsa, Ôsa
|hangul=황사
|hanja=黃[[wikt:沙|沙]] {{lang|ja|または}}<br />黃砂
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[[ファイル:Asian Dust in Aizuwakamatsu.PNG|thumb|240px|right|黄砂が空を覆った風景。山は霞んで見える。]]
[[ファイル:Aizuwakamatsu On A Clear Day.PNG|thumb|240px|right|すっきりと晴れた風景。山は澄んで見える。(比較用)]]
'''黄砂'''(黄沙<small>とも表記</small>、こうさ、おうさ<ref>小学館国語辞典編集部『[[日本国語大辞典]]』第2版([[小学館]]、2001年)の第2巻851頁には「おうさ(黄砂)」の項目も置かれており、「こうさ(黄砂)」の項目への参照項目となっている。</ref>、{{ピン音|huángshā|ホンシャー}}<ref>後述の通り、中国では「黄沙」という呼び方は主に学術分野で使われる用語であり、一般的には「{{zh|沙尘暴}}(さじんぼう、{{ピン音|shāchénbào|シャーチェンオ}})」と呼ばれることが多い。</ref>)とは、特に[[中華人民共和国|中国]]を中心とした[[東アジア]]内陸部の[[砂漠]]または[[乾燥帯|乾燥地域]]の[[砂塵]]が、[[風|強風]]を伴う[[砂嵐]]([[砂じんあらし|砂塵嵐]]<ref>「砂嵐」は一般的な呼称であるが、砂嵐の粒子には大きな[[砂]]だけではなく、細かい[[塵]]のようなものも多数含まれることから、気象用語としては「砂塵嵐」([[砂じんあらし]])という呼称を用いる。英語のDust stormに相当するが、用語の混乱を防ぐ目的などから「ダストストーム」と呼ぶこともある。</ref>)などによって[[空|上空]]に巻き上げられ、[[春]]を中心に東アジアなどの広範囲に飛来し、地上に降り注ぐ[[気象]]現象。あるいは、この現象を起こす[[砂]]自体のことである。
 
== 概要 ==
気象現象としての黄砂は、砂塵(砂ぼこり)の元になる[[土壌]]の状態、砂嵐とともに砂塵を運ぶ気流など、[[地|大地]]や[[大気]]の条件が整うと発生すると考えられている。発生の頻度には[[季節]]性があり、春はそういった条件が整いやすいことから頻繁に発生し、比較的遠くまで運ばれる傾向にある。ただ、春に頻度が極端に多いだけであり、それ以外の季節でも発生している<ref name="海外環境協力センター" /><ref name="h" /><ref name="nagoya" />。
 
黄砂は[[国家|国]]をまたぐ範囲で被害を発生させ、しかもその程度や時期に地域差がある。発生地に近づくほど被害は大きくなり、田畑や人家が砂に覆われたり、周囲の見通し([[視程]])や[[日照]]を悪化させたり、[[交通]]に障害を与えたり、[[人間]]や[[家畜]]などが砂ぼこりを吸い込んで[[健康]]に悪影響を与えたりするなど、多数の被害が発生する。海を隔てた日本でも、黄砂の季節になると建物や野外の洗濯物・車などが汚れるといった被害が報告されている。東アジア全体での経済的損失は、日本円に換算して毎年7000億円を超えるとされる<ref name="h" /><ref>[http://www.jafta.or.jp/02_monthly/00_s-gijyutsu/02_keyword/key778.html 黄砂] 森林技術 No.778(「中国の黄砂と日本の黄砂」,沙漠研究,13-1,2003年 および「2004年日中林業生態研修及び協力シンポジューム報告書別冊」,日中林業生態研修センター,2004年12月 の間接引用)</ref>。
 
発生地に近いほど、砂塵の濃度は濃く、大きな粒が多く、飛来する頻度も高い傾向にある。[[モンゴル国|モンゴル]]、中国、[[大韓民国|韓国]]などでは住民の[[生活]]や[[経済|経済活動]]に多大な支障が出る場合があり、黄砂への対策や黄砂の防止が社会的に重要となっている。近年は東アジア各国で、黄砂による被害が顕著になってきているとされており、一部の観測データもこれを裏付けている<ref name="data1" /><ref name="data2" /><ref name="data3" /><ref name="data4" /><ref name="data5" />。これに加えて、[[環境問題]]への関心が高まっていることなどもあり、黄砂に対する社会的な関心も高まっている<ref>[http://www.gov-online.go.jp/useful/article/200803/5.html 環境省黄砂飛来情報ページ(リニューアル版)の運用が開始されました] 政府広報、2008年3月。</ref><ref>[http://www.env.go.jp/earth/dss/torikumi/index.html 黄砂対策への環境省の取組] 環境省、2008年12月16日閲覧。</ref>。
 
一方、黄砂が[[自然環境]]の中で重要な役割を果たしていることも指摘されている。飛来する黄砂は、[[洪水]]による氾濫堆積物や[[火山砕屑物|火砕物]]と並ぶ[[堆積物]]の1種であり、土地を肥やす効果がある。また黄砂には[[生物]]の生育に必要な[[ミネラル]]分も含まれており、陸域だけではなく[[海]]域でも[[プランクトン]]の生育などに寄与している<ref name="kan1" /><ref name="kan2" /><ref name="o" /><ref name="h" />。
 
また[[芸術]]の分野では、黄砂のもたらす独特の景観などが[[文化]]表現にも取り入れられており、黄砂のもたらす情景を詠った古代中国の[[漢詩]]が伝えられるなどその歴史は古い。黄砂が生活に深刻な被害を与えている地域もある一方で、影響が軽微であり珍しい自然現象・季節の[[風物詩]]などとされている地域もある。
 
「黄砂」という語でひとくくりにされているが、この語を[[気象学]]的に定義すると複数の現象が含まれている。発生地付近では黄砂の元となる「[[砂嵐]]」(砂塵嵐)、大気中を浮遊する黄砂は「[[大気エアロゾル粒子|エアロゾル粒子]]」であり、風の有無にかかわらず黄砂が空中に大量に浮遊・降下している状態は「[[風塵]]」や「[[煙霧]]」・「[[ちり煙霧]]」である。また、[[視程|視程障害]]現象にも分類される。東アジア各国では、気象機関がそれぞれ「黄砂」の定義や強弱の基準を定めているが、いずれも少しずつ異なっている([[#各国の黄砂|後節]]参照)。
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砂塵が舞い上がる条件として、タクラマカン・ゴビ・黄土高原において上空 [[1 E0 m|10 m]] の平均風速が [[速さの比較|5 m/s]] 以上、という研究結果がある。これらに加えて、上昇気流や発生地の日差しといった短期的な気象条件も挙げられる<ref name="海外環境協力センター">[http://www.env.go.jp/earth/dss/report/01/index.html 黄砂問題検討会中間報告書] 環境省・海外環境協力センター、2011年10月1日。</ref><ref name="l" />。周囲を山脈に囲まれたタクラマカン砂漠などの高低差が大きい発生地では、ほぼ毎日同じ時間帯に[[山谷風]]と呼ばれる強風が吹き、これが砂塵を舞い上げているとの指摘もある。
 
また、さらに強い風によって、[[中国語]]で'''沙塵暴'''([[{{簡体字]]で「{{zh|沙尘暴}}、{{ピン音|shāchénbào|シャーチェンオ}}<ref name="o" />)と呼ばれるような激しい砂塵嵐になる場合がある。沙塵暴の条件として、ゴビで10m/s、タクラマカン・黄土高原で6m/sという研究結果がある。沙塵暴によって砂が巻き上げられる高さは、最大で上空 [[1 E3 m|7 – 8 km]] という観測結果があるが、観測装置が故障することがあるためこれが正確な値かは不明である<ref name="海外環境協力センター" />。
 
[[ファイル:Sandstorm.jpg|thumb|240px|right|参考画像・イラクで発生した砂塵嵐(地域は異なるが黒風暴と同じ現象)]]