「コンプレックス」の版間の差分

もっとも、この意味でのコンプレックスは、[[ジークムント・フロイト|フロイト]]派、[[アルフレッド・アドラー|アードラー]]派、[[カール・グスタフ・ユング|ユング]]派など、[[深層心理学]]諸学派の間でだけ流通する概念であり、心理学や精神医学の世界で広く受け入れられているわけではない。

日本では、早くから西洋医学の導入と共に、[[ジークムント・フロイト|フロイト]]の精神分析もまた心理学・精神医学上の学説として入って来ていた。フロイトの精神分析においては、「'''エディプス複合'''（'''エディプス・コンプレックス'''）」が中心的な位置を占めていた。しかし、元々もともと西洋人の意識・無意識の動力学理論でもあった精神分析は、日本人の心理には余あまり適合しなかった。

戦後、アメリカより、[[アルフレッド・アドラー]]の「人格心理学」が日本に流入ってきした。アードラーの理論は、当時「'''劣等複合'''（inferiority complex）」を理論の中心に置いているた。この劣等複合の克服を通じて、人格の発達が成立するとしたアードラーのこの理論は、日本人には親しみのがある内容のっためようで、戦後の日本ではフロイトの理論よりも、アードラーの理論が流通し、また、その理論の中心概念である「劣等複合」が一般になった。

「劣等複合」とは「劣等コンプレックス」の事ことであるが、日本においてはこのアードラーの理論のが一般的なに受容とされた上に、とりわけ、こコンプレックスのうちの劣等コンプレックスが日本特において流布したため、コンプレックスの名で、「劣等複合」を指すような日常の用語法が生まれた。日本では今なお、「コンプレックス」と言えば、暗黙に「'''劣等コンプレックス'''」の事ことを指す傾向がある。更さらに、精神分析の用語から離れて、「コンプレックス」を「'''[[劣等感]]'''」の同義語とするような誤用も生まれ、今に至っている。なお、劣等感とは劣等なものを合理的に認めるものであるため、劣等コンプレックスを克服したものであるとも言える。<!--日本では「コンプレックス」の語は「'''[[劣等感]]'''」の代用語として使われている（コンプレックスの中でも特に有名な「[[劣等コンプレックス]]」に由来）が、本来この言葉は劣等感に限るものではない。-->

さらに[[分析心理学]]上[[フェティシズム]]がコンプレックスとほぼ同義であるため、フェティシズムの分野にもコンプレックスという用語が使われる事こともある。心理学用語ではなく俗語であるが、概念的には間違っているとは言い切れない。この場合、正確には「あるフェティシズムから想起されるコンプレックス」の事ことを意味する。