「幼年期の終り」の版間の差分

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『'''幼年期の終り'''』(ようねんきのおわり、''Childhood's End'') は[[イギリス]]の[[SF作家]]、[[アーサー・C・クラーク]]の長編小説。[[1953年]](昭和28年)に発表され、クラークの代表作としてのみならず、SF史上の傑作として広く愛読されている。
 
==来歴 概要 ==
母体となったのはアーサー・C・クラークが[[1946年]](昭和21年)77月に執筆した短編小説「守護天使」 (Guardian Angel) である。「[[アスタウンディング]]」誌に投稿したが不採用となり、改稿の上「[[フェイマス・ファンタスティック・ミステリーズ]]」誌[[1950年]](昭和25年)44月号に掲載された。今日の『幼年期の終り』第1部とほぼ同様のストーリーであるが、ディテール、結末などが異なっている。この短編小説をもととしつつ、敬愛する[[オラフ・ステープルドン]]風の「予見可能な[[ユートピア]]」「人類の[[進化]]と[[終末もの|終末]]」といったヴィジョンを取り入れて大きく膨らませた長編小説として完成したのが1953年。同年、クラークとしては5作目の長編小説として刊行された。
 
==概要 内容 ==
{{ネタバレ|スキップ=作動}}
『幼年期の終り』はプロローグおよび三つの部で構成されている。
=== プロローグ ===
米ソの[[宇宙開発競争]]が熾烈さを増す[[20世紀]]後半のある日、巨大な円盤状の宇宙船多数が世界各国の首都上空に出現する<ref>冒頭部分は[[1990年]]の新版において、クラーク自身によって書き直され、二十一[[21世紀]]のある日、多国籍の火星探査隊出発目前という設定に変更された上で、第1部第1章に編入されている</ref>。
=== 第1部「地球とオーバーロードたちと」===
宇宙船に搭乗する宇宙人の代表は、自分はカレルレンという名であること<ref>カレルレンの名は、創元推理文庫版および新潮文庫『太陽系オデッセイ』収録の短編小説「守護天使」 では”カレレン”、また光文社古典新訳文庫版では”カレラン”と表記されている。原著の[[スペル]]は''Karellen''である。</ref>、今後地球は自分達の管理下に置かれること、などを電波を通じて宣言する。カレルレンは[[国際連合]]事務総長ストルムグレンを通じて地球を実質的に支配し、その指導の下、国家機構は解体してゆく。地球人はこの宇宙人を「オーバーロード(上帝)」と呼んだ。ストルムグレンは地球人としてはただ一人、オーバーロードの宇宙船に立入りを許されたが、オーバーロードは決して生身の姿を見せようとしない。ストルムグレンの定年退官直前、カレルレンは「50年後に生身の姿を公開する」ことを約束する。ストルムグレンはカレルレンの姿を見ようと一計を案じ、退官の日に実行するが、その結果については黙して語らなかった。
 
=== 第2部「黄金時代」 ===
第1部より50年後。それまで長きにわたって各地の大都市上空にあったオーバーロードの宇宙船は、[[ニューヨーク]]上空のものを除いて忽然と姿を消す。ニューヨークの郊外に降り立ったオーバーロードは、約束通り全世界の前に生身の姿を見せる。その姿形は衝撃的なものであったが、人類はその姿を受け入れ、オーバーロードと共存しつつ平和で豊かな生活を享受する。しかし中には反抗的な人々もいた。[[天文学]]者ジャン・ロドリックスはオーバーロードの出現によって人類の宇宙進出が挫折したことを遺憾とし、クジラの剥製標本に潜り込んでオーバーロードの母星に密航する。
 
=== 第3部「最後の世代」 ===
また一部の芸術家達は、地球人固有の心性を守ろうと[[太平洋]]の火山島に独自の[[コミュニティ]]を作る。ある時、このコミュニティに住む子供達に異変が起こり始めた。その報告を受けたカレルレンは、自分達の地球来訪の目的達成の日が近づいたことを知り、人類へ向けて最後の演説を行なう。
 
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== 評価 ==
発表から2ヶ月の間に21万部の売上を記録し、また批評家たちからも好意的な評価を得た。また、クラークのファンの多くは「幼年期の終り」を彼の最高傑作だと考えているという<ref name="McAleer">McAleer, Neil. "Arthur C. Clarke: The Authorized Biography", Contemporary Books, Chicago, 1992. ISBN 0-8092-3720-2</ref>。
 
== 影響 ==
「人類の進化」というテーマ、「宇宙人による人類の飼育」というアイデアなどは、この作品において総括された。また、「種としての未来の記憶=予感」という斬新な着想は驚嘆に値する。その影響力は、SF内部に留まらず[[純文学]]やサブカルチャーの世界にも及んでいる。
 
== 書誌情報 ==
* {{Cite book|和書|author=アーサー・C・クラーク|authorlink=アーサー・C・クラーク|others=[[福島正実]]訳|year=1964|title=幼年期の終り|series=ハヤカワ・SF・シリーズ|publisher=早川書房}}
* {{Cite book|和書|author=クラーク|authorlink=アーサー・C・クラーク|others=[[福島正実]]・[[高橋泰邦]]訳|year=1969|title=世界SF全集 15 クラーク|series=[[世界SF全集]]|publisher=早川書房|isbn=4-15-200015-5}} - 『幼年期の終り』([[福島正実]]訳)と『海底牧場』([[高橋泰邦]]訳)を収録。
* {{Cite book|和書|author=アーサ・C・クラーク|authorlink=アーサー・C・クラーク|others=[[沼沢洽治]]訳|year=1969|month=4|title=地球幼年期の終わり|series=創元推理文庫|publisher=東京創元新社|isbn=4-488-61102-8|url=http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488611026}}
* {{Cite book|和書|author=アーサー・C・クラーク|authorlink=アーサー・C・クラーク|others=[[福島正実]]訳|year=1979|month=4|title=幼年期の終り|series=ハヤカワ文庫 SF 341|publisher=早川書房|isbn=4-15-010341-0|url=http://www.hayakawa-online.co.jp/product/books/10341.html}}
* {{Cite book|author=Arthur C. Clarke|authorlink=アーサー・C・クラーク|year=2000|month=October|title=幼年期の終り / アーサー・C・クラーク = Childhood's end /|series=講談社ルビー・ブックス 241|publisher=講談社インターナショナル|isbn=4-7700-2711-7}}
* {{Cite book|和書|author=クラーク|authorlink=アーサー・C・クラーク|others=[[池田真紀子]]訳|year=2007|month=11|title=幼年期の終わり|series=光文社古典新訳文庫|publisher=光文社|isbn=978-4-334-75144-9|url=http://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334751449}} - 脚注1の変更を反映したもの。
 
== 脚注 ==
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