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民法に規定する売買は、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによって成り立つ'''双務'''・'''諾成'''・'''有償'''の契約である([[b:民法第555条|555条]])。
 
売買は[[贈与]]や[[交換]]と同じく権利移転型契約(譲渡契約)に分類される<ref>川井健著 『民法概論4 債権各論 補訂版』 有斐閣、2010年12月、109頁</ref><ref>柚木馨・高木多喜男編著 『新版 注釈民法〈14〉債権5』 有斐閣〈有斐閣コンメンタール〉、1993年3月、2頁</ref>。贈与が無償契約・片務契約の典型であるのに対し、売買は有償契約・双務契約の典型である<ref>内田貴著 『民法Ⅱ 第3版 債権各論』 東京大学出版会、2011年2月、111頁</ref><ref>我妻栄・有泉亨・川井健著 『民法2 債権法 第2版』 勁草書房、2005年4月、268頁</ref>。
 
貨幣経済の発達した今日、売買は物資の配分あるいは商品の流通を担う最も重要契約類型とされる<ref>我妻栄・有泉亨・川井健著 『民法2 債権法 第2版』 勁草書房、2005年4月273頁</ref>。売買と交換の関係であるが、講学上、典型契約としての交換([[b:民法第586条|586条]])を狭義の交換とし、売買契約など広く財産権の移転を内容とする取引一般を指して広義の交換と概念づけることもある<ref>近江幸治著 『民法講義Ⅴ 契約法 第3版』 成文堂、2006年10月、121頁・163頁</ref>。歴史的にみると交換という形態は広く[[商品経済]]の発達以前から存在したが、[[貨幣経済]]の発達の結果、その中から物に対する[[貨幣]]の交換という取引形態が分化し独立したものが売買であると理解されている<ref>近江幸治著 『民法講義Ⅴ 契約法 第3版』 成文堂、2006年10月、163頁</ref>。
 
=== 売買の性質 ===
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=== 売買契約に関する費用 ===
売買契約に関する費用は当事者双方が等しい割合で負担する([[b:民法第558条|558条]])。通常、契約書・公正証書作成費用、印紙代、目的物鑑定費用などが売買契約に関する費用とされる<ref>川井健著 『民法概論4 債権各論 補訂版』 有斐閣、2010年12月、138頁</ref>。この規定は売買のみならず、契約一般に関しての契約費用の原則を定めるものと位置づけられている<ref>内田貴著 『民法Ⅱ 第3版 債権各論』 東京大学出版会、2011年2月、122頁</ref>。なお、本条と[[b:民法第485条|485条]](弁済の費用については原則として債務者が負担する)との関係に注意を要し、通常、不動産移転登記費用や荷造費運送費などは弁済費用とみられるが、両者の区別はつきにくい場合もある<ref>我妻栄・有泉亨・川井健著 『民法2 債権法 第2版』 勁草書房、2005年4月、278-279頁</ref><ref>内田貴著 『民法Ⅱ 第3版 債権各論』 東京大学出版会、2011年2月、122頁</ref>。
 
== 売買と法規制 ==
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合意が成立したとき、または予約完結権を行使したとき([[b:民法第556条|556条]])に契約の効力が生じる。その効力の具体的内容は以下の通りである。
 
=== 売主の義務・権利 ===
*==== 財産権移転義務([[b:民法第555条|555条]]) ====
売主は財産権移転義務を負う([[b: 民法第555条|555条]])。この財産権移転義務は買主に財産権を完全に移転する義務であり、ここから財産権が所有権のように目的物を支配する権利である場合はその目的物の引渡し義務が生じ、また、買主の対第三者対抗要件([[b:民法第177条|177条]]、[[b:民法第178条|178条]]、[[b:民法第467条|第467条]])の具備に協力すべき義務や、財産権が所有権のように目的物証拠書類等支配する権利である場合はその目的物のし義務す必要生じ<ref>我妻栄・有泉亨・川井健著 『民法2 債権法 第2版』 勁草書房、2005年4月、279頁</ref>。このうち所有権移転登記手続に協力すべき義務を所有権移転登記手続債務といい、所有権移転登記手続債権(いわゆる債権的登記請求権のこと)に対応するものである。
: そして、引渡しの対象が特定物である場合は、保存義務([[b:民法第400条|第400条]])を生じる。保存義務の保存とは、保存行為の保存と同義であり、自然的又は人為的作用により目的物の財産的価値が損なわれないようにすることである。
: 他人物売買の売主は、その他人から財産権を取得する義務を負う([[b:民法第560条|560条]])が、これは上記財産権移転義務に基づくものであり、売主の担保責任とは違う(売主の担保責任の法的性格につき法定責任説に立つことが前提の説明)。
 
: そして、引渡しの対象が特定物である場合は、保存義務([[b:民法第400条|第400条]])を生じる。保存義務の保存とは、保存行為の保存と同義であり、自然的又は人為的作用により目的物の財産的価値が損なわれないようにすることである。
* 果実引渡義務([[b:民法第575条|575条]]1項)
* 売主の[[担保責任]]の法的性格を巡っては、法定責任説と契約責任説の争いがある。
** 目的物が他人の所有物である場合([[b:民法第561条|第561条]]、[[b:民法第562条|第562条]]、[[b:民法第563条|第563条]])
** 他人の権利により制限を受けている場合([[b:民法第566条|第566条]]、[[b:民法第567条|567条]])
** 数量が不足の場合([[b:民法第565条|565条]])
** [[瑕疵担保責任]]([[b:民法第570条|570条]])
 
: 他人物売買の売主は、その他人から財産権を取得する義務を負う([[b:民法第560条|560条]])が、これは上記財産権移転義務に基づくものであり、売主の担保責任とは違う(売主の担保責任の法的性格につき法定責任説に立つことが前提の説明)。
=== 買主の義務・権利 ===
 
* 代金支払義務([[b:民法第555条|555条]])
なお、引き渡されていない売買の目的物が果実を生じたときは、その果実は、売主に帰属する([[b:民法第575条|575条]]1項)。
** 代金の支払時期・場所([[b:民法第574条|574条]])
 
** 果実の帰属([[b:民法第575条|575条]]1項)
==== 売主の担保責任 ====
** 利息支払義務(575条2項)
** 売主は[[瑕疵担保責任]]を負う([[b:民法第570561条|570第561条]]以下
{{main|担保責任}}
 
=== 買主の義務・権利 ===
==== 代金支払義務 ====
* 果実引渡買主は代金支払義務を負う([[b:民法第575555条|575555条]]1項
* 代金の支払期限
: 売買の目的物の引渡しについて期限があるときは、代金の支払についても同一の期限を付したものと推定される([[b:民法第573条|573条]])。
* 代金の支払場所
: 売買の目的物の引渡しと同時に代金を支払うべきときは、その引渡しの場所において支払わなければならない([[b:民法第574条|574条]])。
** 利息支払義務(575条2項)
: 買主は目的物引渡しの日から利息支払義務も負うことになる。ただし、代金の支払について期限があるときは、その期限が到来するまでは、利息を支払うことを要しない([[b:民法第575条|575条]]2項)。
* 代金支払拒絶権
**: 売買の目的について権利を主張する者があるために買主がその買受けた権利の全部又は一部を失うおそれがある場合とき([[b:民法第576条|576条]])、または、買い受けた不動産について抵当権・先取特権・質権の登記がある場合については、原則として代金の全部又は一部の支払を拒むことができる([[b:民法第577条|577条]])。
 
** 抵当権、先取特権又は質権等の登記がある場合([[b:民法第577条|577条]]1項2項)
==== 受領義務の問題 ====
諸外国には買主の目的物受領義務について定める立法例もあるが日本の民法に明文の規定はない<ref>我妻栄・有泉亨・川井健著 『民法2 債権法 第2版』 勁草書房、2005年4月、292頁</ref>。この点は[[受領遅滞]]の本質論において対立点となる<ref>我妻栄・有泉亨・川井健著 『民法2 債権法 第2版』 勁草書房、2005年4月、85頁</ref>。
 
=== 訴訟物・要件事実 ===